【完結】おはよう、僕のクラリス〜祝福という名の呪いと共に〜

おもち。

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本編

過去の事件①

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 この世界の大陸にある大小様々な国には、祝福持ちの為の学園が必ず設立されている。その学園のすぐ隣には寮が併設されており、二年間親元から離れた生徒達は学園で祝福持ちとしての心構えや、使用方法、制御が必要な祝福は、同時にその制御方法などを学ぶ。
 そして国への登録を経て将来の就職先の斡旋などが積極的に行われる場所となっていた。

 そんな神聖なる学舎で、過去に人々の常識を覆す痛ましい事件が相次いだ。
“魅了”の祝福を使い、学園に通う高位貴族の子息限定で近づた挙句籠絡し、最終的には次期国王になる王子にも近づいた結果、王太子妃にまで上り詰めた者が現れた。

 その者は弱い立場にあったのを良い事に、高位の人間が集まり虐げた挙句、学園の中という狭い空間で居場所を失くさせるような行為が日常的に行われた。
 そしてその所業を断罪する為、少女を守る幾人かの立場ある男達は卒業パーティーという晴れやかな舞台で自身の婚約者に対し、婚約破棄という強行に出た。その姿を見た親世代の人間達は一瞬眉を顰めたが、しかしそれもすぐに称賛の声へと変わっていった。
 一人の少女を何人もの子息で守るように側を固め、その姿は傍から見てまるで一国の姫を守る騎士ナイトのように映った。そんな少女を守る子息達の心は皆一丸となっていた。
 可哀想な立場に立たされた少女を守る為、婚約者であった令嬢を、少女を執拗に虐めたとの理由で大々的に断罪した。

 当初は令嬢達がそのような行動を取るとは考えにくく、子息達の言い分が通る事はないと見られていた。
 しかしその輪の中心にいた少女は何者かによって連日執拗に嫌がらせや、時には命に関わる痛ましい内容の事件に巻き込まれていた事が調査をしていくうちに分かった。
 その調査の中で子息達の婚約者であった令嬢の関与が確認された。婚約破棄を言い渡された令嬢達は、子息達の証言通り祝福持ちを虐げていたとして、家門の恥として皆祝福を封印された後、貴族籍を抜かれ、修道院や平民に落とされた。
 この断罪劇を起こした国は、弱い立場であった平民の少女を守り抜いた子息達を、国を挙げて盛大に称賛した。

 しかしすぐ問題に直面した。
 断罪劇で少女を守っていた子息は全部で5人。
 一体誰がその令嬢の伴侶となるのかで少々揉める事となった。
 しかしその問題もすぐに解決する。なんと少女はその子息の中の一人、国の王太子の求婚を受け入れた為だった。

 そしてすぐに盛大な結婚式が開かれた。
 その理由は簡単で件の少女のお腹には王太子の子が宿っていたからだ。
 順番の前後には眉を顰める者も多少はいたものの、殆どの人間が王太子と少女の愛の強さに若さ故の過ちとして目を瞑った。
 幸せそうに微笑む王太子と少女改め王太子妃。
 王太子妃は平民として生活を送っていた事もあり、二人の馴れ初めは世紀のシンデレラストーリーとして恋愛小説やオペラ、劇になり、国に膨大な経済効果をもたらした。


 そんな風に世間が賑わいを見せる中、王太子夫婦に待望のお世継ぎが誕生した。
 しかし生まれた子どもは王太子ではなく彼の側近にとてもよく似ていた。
 それなのに王太子は我が子を大事そうに抱え、妃である王太子妃を労わり変わらぬ愛を囁いた。
 すぐに報告を受けた国王や国の重鎮達は、王太子の言動や行動がおかしい事にここへきてようやく気が付いた。
 すぐに祝福を研究している者に掛け合い、優秀な鑑定スキルの使い手を派遣してもらった。
 到着してすぐに王太子を診断してもらうと、派遣された人物は躊躇う事なく“魅了”の力が働いている事を国王に告げた。
 “魅了”の祝福により強制的に少女を愛するように仕向けられている事、そして“魅了”の術者は王太子の妻である元平民の少女である事を。

 そのあまりの衝撃の事実に、意味を理解していないのはその場にいた王太子だけだった。
 そして急いで魅了の原因を探ると、意外とすぐにその真相に辿り着いた。
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