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ー最終部ー 本当の繋がりと想いを共に

ー最終話ー 青の時間の終わり

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「明けましておめでとう。」
新年。僕、彼女、叔母の三人で過ごしている。こたつを出したリビングで。
自由人ばかりとあってか並んでいる料理(もの)は正月らしくない雑多な感じで無秩序。
特にあっという間に散乱する事になったビールの缶は間違いなく正月の雰囲気をぶち壊しているのではないだろうか。
けど、逆に言えば僕達らしいとも言える光景とも言える。
そしてこのタイミングで知ったのは叔母がお酒に強いという事実。ほんと、どこまで飲むのやら・・・・。
元々叔母は僕達の前でアルコールを口にする事は殆どなかった。
もしかしたら今まではそういう事は仕事という関係中だけで済ませていたのかもしれない。
だから今日そんな叔母が目の前でとんでもないペースでお酒を飲むという光景は実に驚くものもだった。
でもこれ、後で片付けなきゃ・・・だよね。なんかだんだん足の踏み場も無くなりそうな感じだけど、大丈夫かな。
それから約二時間後。ようやく叔母が止まった。正確には酔い潰れた、だね。
時刻はそろそろ午前の十一時といった感じ。で、やっぱりビールの缶が凄い事に・・・どうしよう、これ?。
「片付けるしかないよね・・・これ、しかも僕が。」
「私も手伝うよ。」
その声にあれっ?と思った。叔母がビールを飲み尽くす中で寝てしまった彼女だったから。
肝が座っているなって思ってしまったものだけど。起きたみたいだね。
で、お言葉に甘えて二人で缶の片付けに入る。でも凄い量。
しかもアルコールが蒸発しているのか変な感じなのが鼻を突く。
そのせいか、僕も彼女も少し顔が赤くなっていた。お酒に酔うってこんな感じなのかな?。
結構な量の缶。でも十分も掛からず片付いた。うん、良かった。
それで、叔母の方は・・・うん、薮蛇だしほっとこ。部屋も暖房が十分効いているし、大丈夫じゃないかな。
そう思っていると彼女が叔母に毛布を掛けている。
「風邪を引くといけないから・・・。」
「うん、そうだね。」
ちょっと気遣いの足りない自分に少し後悔。と同時に彼女に感謝。うん、ありがと。
「さっ、邪魔者は潰れたし、ねっ・・・・。」
と、顔を赤らめたまま僕に近づく彼女。しがも服を脱ぎながら。
「ちょっ、待って!。確かゴムは使いきったはずだよ。駄目だよ、ゴム無しでするなんて!。」
うん、確かクリスマスの時に箱が空になったはず。
結構な量のセットを買ったはずだけど。それだけしてるんだね。僕達・・・・。
「良いじゃない、たまにはゴム無しでも。私、我慢出来ない・・・。」
もしかしたらアルコールに酔っているのかもしれない。結構ぶっ飛んだ事を言って来る彼女。
いやいやいやいや、今まで一度もゴム無しでした事は無いはずだよ?。それに妊娠なんてまずいからぁ~~~。
それら約一時間、正午も少し過ぎた頃まで彼女への説得は続いた。で、ようやく諦めてくれた。疲れたぁ~~~。
そして二人で昼食。相変わらずなんか危なっかしい彼女。そのせいかその後彼女はずぐに横になって寝ていた。
そして入れ替わるように寝ていた叔母が起きた。
叔母は少しの間状況確認するかの様に周りを見渡す。
「あれ?。何であの子寝てるの?。しかもあんな格好で。」
「あははは・・・・。」
とりあえず笑って誤魔化す訳には・・・・いかないよね。
下着に肌シャツだけ。彼女のその格好は確かに変だろうし。で、一応叔母にこれまでの事を説明する。
「ああ・・・なんか悪かったね。けどあれ、あんたがなんとかするところじゃないの?、一応恋人なんだし。」
「うう・・・御免。でもなんか見るのがって思っちゃって。」
「何それ?。今更な反応だね。もうお互いの裸も見てるんだろう?。なんでそう初心(うぶ)な反応になるんだかねぇ。」
叔母の言いたい事ももっともだけど、でもそれが僕なんだよ・・・・・・。
そう思っていると叔母が彼女に服を着せ、自分に羽織っていた毛布を彼女に掛ける。
「それに、あんたはもう少し気遣いというのを覚えな。
 あんたのその性格。優しさもあるけど。臆病が過ぎる部分も見える事がある。
 それで守りたいと思う存在を傷付ける事もあるんだよ。その事を自覚しないと。
 この子は守りたい存在なんだろ?。違うかい?。」
「うん、そうだね・・・・。」
凄い・・・泣きたくたっていた。後悔したから?、それもあると思う。
ただ好きなだけじゃ嫌だ。僕が彼女に言った言葉。その想いがあれば十分だと思っていた。
けど足りなかった。足りないものがあった。
僕もまだ大切なものを守る為の何かを十分に知らなかったようだ。
それから叔母は少し遅めの昼食を取り、それから僕と二人で話しをした。
その中で知った事。叔母は彼女の精神状態に早くから気付いていたようだ。
誰かに強く依存する。現在それは僕に向けられていると。
「多分あんたと積極的にセックスしたがるのは、そうすればもう捨てられないと考えてるのかもしれない。」
「そんな事、しないよ。」
「うん、あたしもだよ。けど、残念だけどそれは今のあの子には伝わらない。
 それだけ傷付けられて来たし、そして裏切りを経験してる。それは解るね?。」
「うん、けどそれなら僕だって・・・・。」
そう、それは僕も彼女も経験している事。なのに何で彼女だけが今も囚われているの?、苦しめられてるの?。
「あんたには、何か抜けられた切っ掛けってのがあったんだろうね。」
「じゃあ彼女もそれで・・・・。」
「その切っ掛けが有効なのはあんただけかもよ。自分がそれでどうにかなったからって、
 他の誰かにもそれが通用するってのは実はそう無いんだよ。」
「じゃあどうすれば?。」
叔母の言葉はまるで方法が全く無いと言っているようだった。
それは嫌だと思った。間違いだと思いたい。だって僕は・・・・・・。
「今は待つしかないよ。焦らずにね。
 それともう一つ大事な事。あたしとあんたがあの子にとって信頼できる人間で居続ける事。
 そうやって信頼されて、すがるんじゃなくて、一緒に歩いている仲間がいる事を分かってもらう。
 時間は掛かるかもしれない、もしくはあっさりと上手く行くかもしれない。
 でもあたし達が焦っちゃ駄目だ。まずはあの子をあたし達が信頼しなくちゃね、解るだろ?。」
「うん。」
正直叔母の言葉をどこまで理解出来ているか、不安はある。
けど今は待つ事。じれったくも思えるけど、それは理解出来る。なにより彼女を”大切”に想いたいから・・・・・・。
なお、参拝は人混みの中は嫌だと満場一致。後日状況が静かになったのを見計らって行く事となった。
うん、混雑大嫌い万歳だね。

さて、冬休み終了早々騒がしい事態になった。
「なぁ、助けてくれよぉぅ。」
教室で僕達を見付けるなり泣くように擦り寄り、懇願して来る彼。実際には泣いていないけどなんか気持ち悪い。
話しを聞くとどうやらこのままだと大学受験がかなりヤバいとの事。
「なら、どの位のものか見せて。」
と言ったのは彼女。相変わらず冷たい感じ言う。
で、彼女が簡単にテストを作って彼にやってもらう。そして採点・・・・・・。
「これ・・・まずいよね?。」
「ええ、かなり。」
結果はこれが普通の試験なら少しギリギリながも大丈夫な感じ。
だけどこれから受ける大学のってなるとデットラインよりも下の得点。うん、かなりヤバいね。
「なぁ、頼むよう、受かるって親に断言したんだ。もし落ちたら殺される。」
えええっ!。ちょっと待って。なんでそんな無謀な事をするかなぁ。
僕達と同じ大学に行けるから?。だからってそんな無茶なんかしても・・・・。
「当然だろ!、あの大学にしておけば女の子にモテる可能性が高くなるらしいからな。」
何時の間にかどや顔決めてそう言う彼。そして僕は表情を凍らせていた。多分彼女も・・・。
もしかしてだけど、君ってバカなの?、それともアホ?。そんな事で自分の身を危険に晒すかな普通。
「ええ、良いわよ、助けてあげる。」
「うおぉぉぉっ!!助かるぜぇぇっ!。」
彼女の言葉に飛び付く様に喜ぶ彼。
けど僕はもっと事態を冷静に見るべきだと思った。
何故なら見えたから。こっそりとながらも彼女の背後に般若さん。
実は彼女は怒っている。それは状況を見れば解る。だからこそ思う。任せて大丈夫かな?と。
その後、彼女は一応彼に対して真面目に教えていた。但し鬼と言うべき対応で(汗)。
その鬼気迫る対応は周りにも恐怖を撒き散らしていた。うわぁ・・・なんと迷惑な。
そのかいあってか約一ヶ月後・・・・・・。
「うおぉぉぉぉっ!!合格したぜぇぇぇぇっ!!。」
全力で喜ぶ彼。その姿がやつれている事は指摘しない方が良いのかな?。
その後、彼が力尽きて倒れてしまい。僕は自分の判断に後悔する事に・・・。

時期としては普通なら春休みと言ったところ。
あれから彼は直ぐに復活。現在は名門大学を合格した事を餌にナンパ等をしまくってるらしい。
うん、全力でほっとこう。何より関わりたくないところだ。
そして本日、珍しく叔母が帰りが遅くなると伝えてくる。彼女は・・・目を輝かせている。だよね・・・・。
で、その日の夜になる・・・・・・。
「ねぇっ、新しいゴム。買っただよね。」
夕食も終わりいつものリビングでののんびりとした時間が始まるはずだった時に彼女が僕に近づきながら嬉しそうに言う。
あれ?。確かにゴム、買ったけど、まだ言ってなかったよね?。なんで知ってるの?。
「ねっ、ねっ、早くしよっ!。」
そう言いながら僕を僕の部屋へと引っ張る彼女。普段非力なのにどうしてこういう時はこうも力持ちなんだか。
で、あっという間に僕の部屋の中。そしてウキウキとしながら服を脱ぐ彼女。
そうやって繋がりを求めている。確かめようとしている。
だからという訳じゃあないけど僕も服を脱いで互いに裸をみせ合うようにしていた。
「嬉しい。」
そう無邪気な表情を見せる彼女。なんだろう、いけない事をしようとしていると思えてしまう。実際にはそうかもしれない。
僕達の体は高校生にしては幼く見える。実際育った環境を考えればそれは仕方のない事なのかもしれない。
でも僕達はセックスが何かを知っている。そして出来るところまで実際には成長している。
だからしよう、というのは無責任なのかもしれない。
でも今はこうする事でしか彼女の想いを受け止められないのも事実だ・・・・。
主導権は彼女。最近はその傾向がつよい。僕自身があまり積極的になれていない事。
なにより彼女ほどセックスを求めていないというのもあった。
だから彼女にベッドへ押し倒され、彼女が上になる。最近はそういうセックスになっている。
体をの繋がりで人としての繋がりを保とうとしている。そういう不安が彼女の中に未だにある。
僕のものにゴムを付け、濡らし、そして繋がろうとしている彼女を見ながら思う。
どうすれば彼女の中の不安は消えるのだろうか。いや、消せるのだろうか。
結局流されるままに幼く見える膨らみを手に感じてみたり。彼女との繋がりを自分からも感じてみたり。
彼女の事を考えながらも、同時に彼女と繋がる事を望んでいる自分が出て来る。
それが嫌という訳じゃない。でもただそれだけの無責任なものにはなりたくない。
そうして荒くなった互いの吐息が流れる。果てたと理解し、彼女の体を引き離す。
残念ながらまだ考えている事の正解にはたどり着けていない。
だからという訳でもないけど、今はまだ流されるままでいるしかない。無力だ・・・・・・・。

「結構時間掛かったね。」
叔母の焦る声。大学の入学式当日。女性二人が準備に苦戦し、ギリギリの時間で家を出る事になった。
幸い慌てながらも、急いだお陰で大学にはややギリギリで着く事が出来た。
移動は叔母の車だったので疲れるはずもないんだけど。
でもどうしてか僕、彼女、叔母の三人は疲れはてた感じになっていた。
「お~~~~いっ!。」
不意に声が聞こえて来て、そこに顔を向ける。あっ、彼だ。
特に連絡し合っていた訳でないので、偶然合流出来たというところか。
「あれ?、そっちは一人?。」
「ああ、まぁな。こっちも色々とあるんだよ。」
僕の疑問に少し歯切れの悪い感じで答える彼。まあ気にしても仕方無いか。
「ほらぁっ、何時までも話してない、急ぐよっ!。」
と、叔母に注意される。うん、そうだね。
出来れば落ち着いた状況でってのがベストだったと想思うけど。
なんかぱたぱたしぱなっしの状況だ。
けど、それが僕達らしい・・・のかもしれない。
これまれでの時間が終わり、そして新しい時間がまた始まろうとしている。
生きていくというのは、そんな事の繰り返しだと以前どこかで聞いた事がある・・・と思う。
だとしたら今がまさにその”時間”ではないだろうか?。
こん先どうなるかなんて当たり前だけど解らない。当然不安だって出て来る。
でも以前の時間とは違う事。僕は一人じゃない。途中からそうなった感じだけど。
以前僕は一人でいる事。なる事を強く望んでいた。
けど、信頼出来る人が出来て、友達が出来て、そして好きだと想える人が出来た。
そうなって知った。誰かと共に生きるその意味をそして以前の僕はただ状況から逃げていただけだと。
先の解らない不安は絶対に消えない。けど絶望する必要もない。
何故なら仲間がいるから。力になってくれる、共に歩いてくれる。そんな人達がいるから。
それがこんなにも心強いと僕は知ったから。だから歩いていける。これからの、新しい時間を・・・・・・。
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