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ー最終部ー 本当の繋がりと想いを共に

ー第18話ー それぞれの思う事

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「修学旅行?。」
僕と彼女の言葉が重なる。時間は昼休み。
もういつものようにと言っていい僕、彼女、彼の三人が集まり、話している。
「ああ、うちは高三で修学旅行があるんだよ。お陰で高三は魔の一年なんて言われてるがな。」
「魔の一年?。」
今度は僕一人の言葉。魔の一年ってなにそれ?だった。
「一学期はまだ良いだよ。体育祭があるとしてもな。
 が、二学期に入ると修学旅行に文化祭、その間の試験にで、止めの大学入試。
 殆どバタバタしぱなっしで、気の休まる事が無いから魔の一年なんて言われるようになった訳だ。」
うっ、確かにそれは大変そうだ。
「それにお前さんらは、一学期からそういう状況になるじゃなかったけか?。」
「あっ、うん、そうだね。」
彼に言われて思い出す。大学入試の受験組と推薦組。本来これは高校二年の時に決めるものだけど。
僕と彼女は状況が状況なだけに特別にこの一学期に決める事になっている。
その為僕と彼女だけ一学期の試験が二回多くなっている。しかも体育祭の後という期末試験も合わせて詰めた形で。
「ま、お前らも俺と同じく受験組になるだろうけど、取り敢えず頑張れや。」
あれ?、なんか断言されたなぁ、まあ、そうなるかもだけど。
ん?、なんか彼女の表情が怖い。何?、何?。
「そうわさせないっ、私達は推薦を勝ち取る。絶対。」
珍しい、と言うより初めてじゃないだろうか。彼女の闘志に燃える?、みたいな表情は。
「断言するな。しかし簡単じゃねぇぞ。そもそも中間の成績、どうだったんだよ。」
彼がそう言うと彼女はタブレットを持って来る。
学校から支給されたやつで授業でも使うし、試験の成績等の記録もされている。
そのタブレットを彼が見て「げぇ。」と口にする。何でかは想像が付いたけど興味本意で僕も見てみる。
相変わらずと言うところかな。全科目ほぼ満点というとんでもハイスコア。
但し保健体育だけ頭一つ点数が低い。その理由は後に知る事になるけど・・・。
「ぐぅっ・・・・。確かにこれなら推薦もそう難しくはねぇな。で、お前はどうなんだよ?。」
えっ?、今度は僕?。まあ良いけど。という訳でタブレットを持って来る。で、それをひったくる様にする彼。
「・・・・マジかよ・・・・・・。」
なんか凝視してるみたいに僕のタブレットを見る彼。彼女程ではないけど僕も良い成績を残している。
「ちょっとまてよ!。このままじゃ俺だけ受験組じゃねぇかよ。
 なぁ、一人にしないでくれよ。お前らも仲間になってくれよぉ。」
ななな!、いきなり何?。訳の解らない彼の言葉に混乱する僕達。
後で知る事になるんだけど受験組は魔の一年が更に慌ただしくなるようで、
更に二学期の文化祭では一部参加出来ないというペナルティもあるとの事。
で、僕達もそうなれと?。それは流石に無責任じゃないかと思う。
「くそぉぉぉぉっ!、俺だけ仲間外れかよぉぉぉっ!。」
色々と考えているうちにどうしてかそう言って走り去って行く彼。
て、あれ?。ちょっとぉ、僕のタブレット持っていかないで、返してよ。

そんなこんなで放課後の帰り道。取り敢えず三人で帰っている。一応タブレットも返してもらった。
「修学旅行・・・行くのは初めてね。」
「うん、僕もだよ。」
「今まで聞いてきた話しで予想はしてたけど、マジか・・・・。」
「うん。」
彼の質問に二人同時に答えていた。
「だったら、今回の修学旅行で今までの分も楽しむつもりでいかなきゃだな。」
「うん、そうだね。」
「ええ、そうね。」
うん、なんか試験の事も忘れてみたいな感じだ。けど、こういうのも良いと思える。
「しかしまぁ、お前さん方、元々仲が良いとは思ってたけど、最近は更にって感じだな。」
「そう?。」
「自覚無しかよ。しかもまた二人揃って答えてよ。全く。」
最後の最後で呆れた感じになる彼。そう言われてもなぁ。

そうしての体育祭。意外?で良いのかな。そんな事実が発覚する。
「お前ら体力ねぇな。」
そう呆れた感じで言う彼。そして僕と彼女は力尽きていた。
「小さい頃、体が弱かったの。その名残よ。」
「・・・・・・。」
多分弁解していると思う彼女とただ倒れているだけの僕。
確かに彼女は体力が無い、それも全く戦力にならないというレベルで。
対して僕は・・・まだマシなんじゃないかなと思うんだけど。
「いいや、はっきり行って五十歩百歩、お前も戦力になってねぇよ。」
・・・マジか・・・。そう言えば体育祭への参加も初めてだった。多分彼女も。
ちなみに僕もだけど。彼女の保健体育の成績がやや低いのはこれが原因だったりする。
そうして体育祭が終わると周りは落ち着くけど、僕と彼女は違った。
僕と彼女だけの試験。しかも期末試験もあるので詰めた状況。
まだ体育祭の疲れが残っていて正直つらい。けど・・・・。
「えっと。ここは?。」
「こう・・・するの。」
例え勉強だとしても彼女と一緒にいられるのは嬉しい。もうすっかりそう思えていた。
で・・・・・・。
「くぅっそおぉぉぉぉぉぉっ。裏切り者っ!人でなしっ!」
もう八つ当たりと言って良い彼の言葉を尻目にする僕と彼女。
彼女の宣言通り僕と彼女は推薦組に入っていた。そして疲れたぁ・・・・・・。
で、彼は意味不明な八つ当たりを僕達にしている。勘弁して・・・・・。
でも、真の修羅場は期末試験だった。
「なんじゃこりゃあぁぁぁぁぁぁっ!。」
どっかで聞いた事のあるような叫び声を上げる彼。
当初、取るはずの無いと決めていた赤点をとってしまったそうだ。しかも三つも・・・・・・。
「お前なぁ、難関大学に行くと決めといてこれはないだろう。追試はもっときつくなるぞ。覚悟しておけ!。」
多分もう死刑宣告と言っていい担任の言葉に・・・うん、顔が死んでる。
で・・・・・・。
「どうしようぉ。」
一人絶望に浸っている彼。どうやら現状の実力で大学進学への道を残したまま追試を突破するのは不可能だという。
「大丈夫。任せて。」
「え?。」
突然の彼女の宣言に今度は僕と彼の言葉が重なる。
「えっとだな。助けてくれるのか?。」
「ええ、だから貴方は死ぬ気で付いてきなさい!。」
えっと。なんだろ彼女の目が座っているのが何故か怖い。そして一瞬殺気を感じたような。き、気のせい?。
「じゃあ僕は?。」
「貴方は先に帰って。多分遅くなると思うから。」
「駄目だよ。それじゃ遅くなるのに一人で帰る事になるよね?。だったら残る。」
「あっ、うん。有り難う。」
気が付けば見詰め合っていた僕と彼女。そこに「いつまでも二人の世界を作ってるな!。」と彼から釘を刺される。
そしてそこから彼と彼女との勉強会が始まった。
それは本当に修羅場だった。彼女は僕と勉強している時とは違って容赦は無く。
その事に彼が悲鳴を上げる事も何度かあった。でも・・・・。
「やったぁぁ・・・・・。」
これもまた宣言通りかな、彼は無事追試を通過していた。勿論大学進学の権利を残したまま。
尤も、それで気力を使い果たしたのか、やけに覇気の無い勝利の雄叫びだった。
それから彼が復活したのはもう一学期の終わりの間近だった。
で、昼休みまた三人でいた。
「あぁぁ、死ぬかと思った。が、助かったぜ。」
「ええ、当然よ。」
なんだろ、やっぱり彼女が何故か怖く感じる。けど取り敢えず良かった。そうしておこう。
「なぁお前らの仲の良さ、恋人同士にしか見えねぇよ。違うか?。」
「そうね。」
唐突言い出した彼の言葉に彼女が反応し、席を立つと僕の目の前まで来る。
「貴方の事が好きです。付き合って下さい。」
思わずえ?ってなった。ええと確か、久し振りに体を重ねた時にそういう告白をされてなかったかな?。
しかし、状況の流れとも言うのか、なんか焦ってしまう。ええいっ!ままよっ!。
「ぼっ、僕も好きです。宜しくお願いします。」
言ってて恥ずかしい。それは周りからの声援でより強く感じる事になる。
彼女もそうなって自分が何をしたのか理解したようで、僕と同じく顔を赤くしていた。
確かに僕達はまだ知らない事が多い。だからこういう風に恥ずかしい思いをする事もある。
けど本当に恥ずかしいのは、それを知らないままにしてしまう事だ。
だから動く、だから思う、そして学び続ける。それが今の僕達だ。
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