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ー第1部ー 出会いと崩壊

ー第4話ー 共犯という関係

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期末試験の追試の一件以来、彼女と言葉を交わす事が多くなっていた。
それは僕が持っていた彼女のイメージを大きく変えるきっかけになっていた。
物静かな雰囲気、口数が少ない事もあってそのイメージは強かった。
雰囲気自体に変化は感じられない。けど思ったより口数が多いというのは正直驚いた。
「ねぇ、もう良いよ。」
たまらずそう止めに入る。そうする事も少なくはないように思える。
その中で知った事。彼女の父親が会社社長で、つまり社長令嬢という事。でも彼女はその事を強く嫌っていた。
「父は私を商品としか見てない。会社の利益の為。自分の利益の為の、ね。」
鋭く、明確に敵意を向けていると判る彼女の表情。そんな彼女は初めて見たと思う。
「だからね、父にとって大事な存在(もの)があるの。」
「大事な、もの?。」
「ええ、私の処女。父にとって大事な商品。」
「えっ!・・・・。」
思わず絶句した。それが時代錯誤な考えだというのは理解出来たし、自身の利益の為なら見境が無いとも言える。
それが事実なら理不尽で、身勝手な現実が彼女の目の前に有る事になる。
「でも父の思った通りに処女を失う気は、商品になる気はない。」
これまでの彼女の表情に憎悪が加わった感じがした。だからこそ怖いと感じてしまった。
「でもそれって簡単じゃないよね。」
一応学校の授業で性交というのは習う。だからこそ出た僕の言葉だった。そしてなにより相手がいない。
「うん、だからお願い。」
完全に言葉を失ったままに彼女のその言葉を聞いていた。
以前彼女は誰にも傷付けられたくないと言いながら僕には傷付けてほしいという矛盾を言ってきた事がある。
あの時は全く意味が解らず、結局聞き流すだけに終わっていた。
けど今、その答えが、その意味が理解出来た。但し僕の望んだものではない答えだけど。
「つまり、僕とセックスしたいって事?。」
僕の質問に静かに頷いて答える彼女。けどその答えを知った僕の感情は嬉しさではなく怒りだった。
冗談じゃない。真っ先に頭の中を埋め尽くした言葉だった。
彼女が望んでいると言った事は、最初から僕に望んでいた事じゃなかったはずだ。
ただ一人になりたい。それが僕の、そして彼女の、二人の共通の望みだったはずだ。
彼女の望みは年頃の男子には確かに魅力的だ。
僕にも性欲は有るし、セックスをしたいという願望も有る。
けどそれ以上に僕は怒っていた。孤独を望んでいたはずなのに。今は僕に逆の事を望んでいる。
多少違いは有れど、同じ事を望む者。それを無自覚がらに嬉しく思っていたのではないか?。
少しばかり正体不明の感情が僕を怒らせている。そんな仲間意識があったのかと驚くものでもあったけど。
その怒りの感情が彼女に伝わったのか、それ以上この話題が続く事はなかった。
それが少し前の事。それからの彼女の話題の中心は父親に対しての愚痴だった。
少しうんざりしたくもあったけど、僕も両親に対して似た感情を持っていた事もあって然程嫌な感じはしなかった。
そして思い返してみて、それが彼女なりの説得だった様にも思えた。僕とセックスをする為の。
そうして時期は夏休み目前。浮き足立った雰囲気が嫌でも伝わって来る。
但しその少し前に一騒動があった。きっかけは期末試験の追試だった。
いきなり難易度が上がり、追試から抜け出せない生徒が続出。
その事に追試組の親達が激怒、学校に乗り込んで来たらしい。
少数とはいえ流石の教師達も困り、仕方無く追試を免除したと彼女が口にしていた。
尤も、いずれも僕にはどうでもいい事だったけど。
そしていつもの放課後の屋上。流石にこの時期になるとこの時間でも暑苦しさが残っている。
「夏休みどうするの?。」
珍しく愚痴以外の話題を口にしてくる彼女。と言ってもどう返して良いやらだった。
毎年の事ではあったけど、夏休みの宿題をまともにやった事は一度もなかった。
尤も、高校生になった今年は少しは真面目にやった方が良いかもと先の期末試験の事も加味して思っている。
そして何処かへ行くのも無理だと答えるしかない。あいにく親から貰っているお金にそんな余裕は無い。
前に高校生になったらバイトでもしようかと考えてみた事があり、
滅多に帰って来ない中での少ないチャンスを利用して聞いてみたものの・・・・・。
「勉強の邪魔にしかならない事はしなくていい。」
あまりにも素っ気なく、冷たい反応。そして親と話す機会は、チャンスは殆ど無い。結局諦めるしかなかった。
つまり、やる事、出来る事も、そして予定すら無いという状態だった。
「私と同じだね。」
彼女に僕の状況を話すとそう返って来ていた。
そこから話しとして続いたのは父親の束縛が強く、夏休み中はあまり自由が無いという事だった。
「ねぇ、夏休みの間も一緒にいたい。」
ある意味予想出来た彼女からの提案。でもここまでの話しだと正直不安を覚える提案だった。
「でもお父さんが、だよね?。」
「今年はだけど。仕事が忙しくて、口喧しいだけになってるから。」
まるでチャンスが来たとばかりに話す彼女。けど、意図が理解出来ているだけに「セックスとかは無しだからね。」
と、一応予防線と言って良いものを張っておく。彼女の提案は未だに何処かで身の危険を感じるものがあったから。
「うん。分かった。」
返事はした。けど納得出来ていないものもある。彼女の言葉の中に溜め息が混じっていた事からも明らかだった。
でもそこから夏休みの宿題の話しへと続いた。どうやら彼女も僕と似た危機感を持っているようだ。
尤も、期末試験の成績を鑑みると元々彼女は宿題等を普段から真面目にやっていると想像でき。
宿題の話しをして来たのは僕を心配してとも見れた。
「宿題。一緒にしない?。」
彼女のその言葉はまだ諦めていないという意識があると感じられたけど。
僕の現状を考えると彼女の提案は魅力的で、断れないものがあった。
「うん。良いよ。」
「なら後は何処で、だね。また図書館とかどうかな?。」
「それは止めた方が良いよ。」
僕の言葉に少し驚く彼女。だから説明する事にした、追試の勉強をした時期なら図書館に殆ど人は居無い。
でも夏休みになると少しばかり騒がしくなる。小さな、幼い子供が姿をみせるようになるからだ。
「どうして知っているの?。」
彼女のその質問にも答えた。一人になれる場所を探して回ったからこそ知っていると。
どちらにしても図書館は一人になれる場所ではないけど。
「どの道勉強には不向きな所になるよ、図書館は。」
「なら何処が良いかな?。」
少し困ったという表情で質問してくる彼女。場所の提案は出来る。けどあまり提案したい場所でもない。
けど、他に候補なんて正直無かったし、多分最もベストな場所なのは間違いない。
「僕の家。」
「えっ!、良いの?。」
家の主の親は年に数回程度しか帰って来ない。お互いに連絡を取り合っていけば大きな問題にはならないと思う。
「なら、じゃあ。」
彼女の言葉と共に僕達は初めて互いの連絡先を交換した。そして・・・・・・。
「お邪魔します。」
夏休みが始まってすぐ彼女を家に招き入れていた。
そして初めて見た彼女の私服。白っぽい水色のワンピース。殆ど無地で飾り気はない。
そして長めのスカートは実に彼女らしいと思えるものだった。
ただ彼女は家に入ってすぐ、挨拶をするだけで黙ってしまう。
無理は無いように思う。僕一人でこの家の管理は不可能だ。
まともな状態なのは自分の部屋と台所、そして風呂くらいだと言える。
そして静かなままに彼女を僕の部屋へと連れて行く。
そして入ってすぐに目にする小さなテーブルを中心に僕と彼女は座った。
「さあ、一気にやってしまいましょ。」
座ってすぐに勉強の準備を始め、そう言う彼女。
正直彼女の正気を疑った。この膨大な量を?。本気で?。でも彼女は。
「まさか夏休み掛けてだらだらと宿題をやる気?。」
そう彼女に言われて思わず「うぐっ!。」てなってしまう。確かにそれも嫌だ。
仕方無いという感じで勉強を始めた僕。けど慣れない事は結構な疲れを呼んでしまう。
実際夕方頃には僕は床に伸びてしまっていた。
「うん、頑張ったと思うよ。」
気付けば彼女の顔が上に来ていた。その表情は少しばかり可笑しいものを見ていると言っているようだった。
その事で僕は少し恥ずかしさを覚えた。そして。
「さあ、起きて。」
そう手を差し伸べて来る彼女。正直だるいのでほっといてほしかったけど、一応その手を取る。
「で、ご褒美だよ。」
彼女の手によって立ち上がり、お互いの顔が合った時。不意に聞こえて来た言葉。
だから彼女が僕に何をしたのか、最初すぐには判らなかった。
気が付くと僕の手は彼女のまだ幼いと見える膨らみに当てられていて。
その事に混乱しているともう片方の手は彼女のスカートの中へと導かれていた。
あまりの驚きに声すら出なかった。服の上からとはいえ柔らかい膨らみの感触。
そしてもう一方は下着の上からとはいえ彼女の秘部に触れていると理解出来る感覚。
あまりの事に固まり、何も出来なくなっている僕に対して「また明日ね。」と。
手早く帰る準備をし、何食わぬ顔をして去っていく彼女。
僕はこの時、考える力を失っていた。だからこそ気付く事さえ出来なかった。
彼女との共犯という関係になって、されてしまっている事に・・・・・・。
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