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八
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「……え、なにこれ」
送られてきたのは、桜の花に向かってカメラを構えた自分――の写真。
「いつのまに……!」
完全に、盗み撮りだ。撮られていることに気づいていない写真の中の自分が恥ずかしく、頬がぽっと熱を持つのが分かった。
『うまく撮れてるだろ』
『ま、お前の撮る写真には敵わないけどさ』
ピコン、ピコンっと通知音。
『こんなの、いつ!』
思いのままに、問いただす文章を送った。
『ごめんって、真剣なのが可愛かったんで、つい』
「かわ……っ⁉」
ぼんっと、頬が熱くなる。
混乱する頭で考える。
私が彼の写真を撮ってからは、すぐ家路についた。私はあれ以降カメラを構えていないし、彼も写真を撮る素振りなんてなかった。だから彼が私を撮ったのは、それより前のはず……。
「……ああっ!」
そういえば、勝手に彼の写真を撮ったことを怒らないのかと聞いた私に、彼は困った顔をするだけだった。あのとき彼が怒らなかったのは、先に彼が撮っていたからか。
「んんん……っ」
写真の中の無防備な自分に、そして彼の言葉に、とてつもない恥ずかしさが湧いて、私は布団にダイブして枕に顔を埋めた。
彼の写真を無断で撮った私が言うのもなんだが、カメラを意識しないところで撮られる写真なんて、撮られた側からしたらたまったものじゃない。勘弁してほしい。
でも。
もし、私が彼を撮りたいと思うように、彼もそう思ってくれているのだとしたら……。
――そうだと、いいな。
私は起き上がると、デジカメを操作して、彼の写真を呼び出した。桜の下、スマホに目を落とす、その穏やかな表情を見て。もしかしたら彼のスマホに映っていたのは、私の写真だろうか、……なんていうのは考えすぎかもしれないけど。
ピコン。通知が鳴った。
『また明日』
今届いたばかりの、彼の一言。
また明日。
その言葉が、胸をさわさわ揺らす。
送られてきたのは、桜の花に向かってカメラを構えた自分――の写真。
「いつのまに……!」
完全に、盗み撮りだ。撮られていることに気づいていない写真の中の自分が恥ずかしく、頬がぽっと熱を持つのが分かった。
『うまく撮れてるだろ』
『ま、お前の撮る写真には敵わないけどさ』
ピコン、ピコンっと通知音。
『こんなの、いつ!』
思いのままに、問いただす文章を送った。
『ごめんって、真剣なのが可愛かったんで、つい』
「かわ……っ⁉」
ぼんっと、頬が熱くなる。
混乱する頭で考える。
私が彼の写真を撮ってからは、すぐ家路についた。私はあれ以降カメラを構えていないし、彼も写真を撮る素振りなんてなかった。だから彼が私を撮ったのは、それより前のはず……。
「……ああっ!」
そういえば、勝手に彼の写真を撮ったことを怒らないのかと聞いた私に、彼は困った顔をするだけだった。あのとき彼が怒らなかったのは、先に彼が撮っていたからか。
「んんん……っ」
写真の中の無防備な自分に、そして彼の言葉に、とてつもない恥ずかしさが湧いて、私は布団にダイブして枕に顔を埋めた。
彼の写真を無断で撮った私が言うのもなんだが、カメラを意識しないところで撮られる写真なんて、撮られた側からしたらたまったものじゃない。勘弁してほしい。
でも。
もし、私が彼を撮りたいと思うように、彼もそう思ってくれているのだとしたら……。
――そうだと、いいな。
私は起き上がると、デジカメを操作して、彼の写真を呼び出した。桜の下、スマホに目を落とす、その穏やかな表情を見て。もしかしたら彼のスマホに映っていたのは、私の写真だろうか、……なんていうのは考えすぎかもしれないけど。
ピコン。通知が鳴った。
『また明日』
今届いたばかりの、彼の一言。
また明日。
その言葉が、胸をさわさわ揺らす。
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