7 / 9
七
しおりを挟む
「じゃ、ちゃんと牛乳飲めよ」
「はいはい」
私たちの家は近い。でも学校に近いのは彼の家の方で、彼の家を通り越して三軒目にあるのが私の家だった。それでも彼は、毎日私を玄関まで送り届けてくれる。
「……牛乳、飲めよ」
「分かってるよ。しつこい」
彼は身長を確かめるように、ぽんぽんっと私の頭に手を置く。やっぱり、そんな彼を見上げるのは、すこし疲れた。
「身長差が戻ったら、さ」
彼は、急にぼそぼそとした声でつぶやいた。
「うん?」
「そんときに……」
後半は、何を言っているのか、よく分からなかった。
だけど多分、抱きしめてもいいか、とか、そういう言葉だったと思う。
――べつに、いいのに、身長なんて。
でも真面目な顔をする彼が面白いから、「うん」とうなずいた。
彼はぱっと笑顔になる。
「よし、じゃあ俺は身長伸びないように頑張るな!」
「私が伸びすぎて、また身長差ずれるかもね」
「えー、そうなったら次は俺が伸ばす」
「頑張って」
「お前も頑張るの」
「はいはい」
目を合わせて、ふっと同じタイミングで吹き出した。
「じゃあな」
彼は、もう一度私の頭を撫でてから、手を振って自分の家に帰って行った。
「牛乳、飲まなきゃなあ」
私は笑いが抑えられなくて、くすくす一人で笑いながら自分の部屋に入り、そうして、引き出しから一枚の写真を取り出した。去年、初めて彼を好きだと思った、その一瞬。それと、今日の写真を見比べた。
彼の表情が柔らかくなっている。
今日の彼の方が、素敵だ。
機嫌のいい私は、夜ご飯を作る母を手伝い、構ってほしそうにする父とソファで語るという、とっておきのサービスをした。そうしてお風呂に入ってから宿題をしていたとき、スマホが鳴った。
画面に彼の名前を確認して、鼓動が打つ。
メッセージを開いてみて、私は目を丸めた。
「はいはい」
私たちの家は近い。でも学校に近いのは彼の家の方で、彼の家を通り越して三軒目にあるのが私の家だった。それでも彼は、毎日私を玄関まで送り届けてくれる。
「……牛乳、飲めよ」
「分かってるよ。しつこい」
彼は身長を確かめるように、ぽんぽんっと私の頭に手を置く。やっぱり、そんな彼を見上げるのは、すこし疲れた。
「身長差が戻ったら、さ」
彼は、急にぼそぼそとした声でつぶやいた。
「うん?」
「そんときに……」
後半は、何を言っているのか、よく分からなかった。
だけど多分、抱きしめてもいいか、とか、そういう言葉だったと思う。
――べつに、いいのに、身長なんて。
でも真面目な顔をする彼が面白いから、「うん」とうなずいた。
彼はぱっと笑顔になる。
「よし、じゃあ俺は身長伸びないように頑張るな!」
「私が伸びすぎて、また身長差ずれるかもね」
「えー、そうなったら次は俺が伸ばす」
「頑張って」
「お前も頑張るの」
「はいはい」
目を合わせて、ふっと同じタイミングで吹き出した。
「じゃあな」
彼は、もう一度私の頭を撫でてから、手を振って自分の家に帰って行った。
「牛乳、飲まなきゃなあ」
私は笑いが抑えられなくて、くすくす一人で笑いながら自分の部屋に入り、そうして、引き出しから一枚の写真を取り出した。去年、初めて彼を好きだと思った、その一瞬。それと、今日の写真を見比べた。
彼の表情が柔らかくなっている。
今日の彼の方が、素敵だ。
機嫌のいい私は、夜ご飯を作る母を手伝い、構ってほしそうにする父とソファで語るという、とっておきのサービスをした。そうしてお風呂に入ってから宿題をしていたとき、スマホが鳴った。
画面に彼の名前を確認して、鼓動が打つ。
メッセージを開いてみて、私は目を丸めた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ゆめまち日記
三ツ木 紘
青春
人それぞれ隠したいこと、知られたくないことがある。
一般的にそれを――秘密という――
ごく普通の一般高校生・時枝翔は少し変わった秘密を持つ彼女らと出会う。
二つの名前に縛られる者。
過去に後悔した者
とある噂の真相を待ち続ける者。
秘密がゆえに苦労しながらも高校生活を楽しむ彼ら彼女らの青春ストーリー。
『日記』シリーズ第一作!
片翼のエール
乃南羽緒
青春
「おまえのテニスに足りないものがある」
高校総体テニス競技個人決勝。
大神謙吾は、一学年上の好敵手に敗北を喫した。
技術、スタミナ、メンタルどれをとっても申し分ないはずの大神のテニスに、ひとつ足りないものがある、と。
それを教えてくれるだろうと好敵手から名指しされたのは、『七浦』という人物。
そいつはまさかの女子で、あまつさえテニス部所属の経験がないヤツだった──。
冬の水葬
束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。
凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。
高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。
美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた――
けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。
ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。
リストカット伝染圧
クナリ
青春
高校一年生の真名月リツは、二学期から東京の高校に転校してきた。
そこで出会ったのは、「その生徒に触れた人は、必ず手首を切ってしまう」と噂される同級生、鈍村鉄子だった。
鉄子は左手首に何本もの傷を持つ自殺念慮の持ち主で、彼女に触れると、その衝動が伝染してリストカットをさせてしまうという。
リツの両親は春に離婚しており、妹は不登校となって、なにかと不安定な状態だったが、不愛想な鉄子と少しずつ打ち解けあい、鉄子に触れないように気をつけながらも関係を深めていく。
表面上は鉄面皮であっても、内面はリツ以上に不安定で苦しみ続けている鉄子のために、内向的過ぎる状態からだんだんと変わっていくリツだったが、ある日とうとう鉄子と接触してしまう。
ハルゲルツ
ささゆき細雪
青春
中学の同級生、彰子(あきこ)と春継(はるつぐ)。
セバスチャン騒動によってはじまってしまったと言っても過言ではないふたりの関係は、卒業して半年たった今も恋人同士と呼ぶには淡く、脆い。
「なんで俺たちつきあってんだろ?」
ある秋の朝。春継が口にした言葉から、微妙なすれ違いが始まった。
折しも見た目だけは美少女である彰子は、他の男子に言い寄られてしまい?
美少女だけど残念な性格のヒロインをめぐって、男子たちが翻弄される? ちょっと風変わりな青春小説。メクるでも公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる