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私は、初恋を繰り返す。
SFではない。
これは、いたって普通の日常。
私は何度でも、初めての恋をする――。
カメラのフィルム越し、満開の桜。
下校時間になっても、春の空はまだまだ明るい。青空に細い枝を伸ばし、花を咲かせる桜のその一瞬を、カシャっと軽い音とともに切り取った。
本当は一眼レフがかっこよくていいなと思うけれど、学生の身でそんなわがままは言えず、中古で買ったデジカメだ。撮った写真をすぐに確認できるのは便利で、気に入っているけれど。
カチっとモードを切り替えて、桜の写真を呼び出す。
「――違うな」
綺麗だけど、物足りない。
ふっとため息をこぼしたとき、「おーい」と声がした。鞄を肩にかけ、手を上げながら、彼は慌てた様子で私のもとに駆けて来る。
「悪い、待たせた! 部活の片付けが長引いて……、写真撮ってたのか?」
「うん」
「そっか。もうちょっと撮ってく?」
「いい。帰ろう」
バスケ部で動き回ったせいか、私のところに急いで来てくれたせいか、彼は頬が赤く、息も上がっていた。私はカメラを両手に持ったまま、疲れ切った彼の、いつもより遅い歩調にあわせて、家路につく。
「お、熟年夫婦は相変わらずだな」
「うるさいぞー」
校門で、からかいながらすれ違うクラスメイトに、彼は笑って「じゃあな」と手を振った。
熟年でも、夫婦でもない。
私たちは幼なじみだから、物心ついたときから一緒にいたけれど、彼に告白したのは去年。今日みたいに、桜が満開だった頃。フィルム越しの彼を、初めて、とても、好きだと思った。
SFではない。
これは、いたって普通の日常。
私は何度でも、初めての恋をする――。
カメラのフィルム越し、満開の桜。
下校時間になっても、春の空はまだまだ明るい。青空に細い枝を伸ばし、花を咲かせる桜のその一瞬を、カシャっと軽い音とともに切り取った。
本当は一眼レフがかっこよくていいなと思うけれど、学生の身でそんなわがままは言えず、中古で買ったデジカメだ。撮った写真をすぐに確認できるのは便利で、気に入っているけれど。
カチっとモードを切り替えて、桜の写真を呼び出す。
「――違うな」
綺麗だけど、物足りない。
ふっとため息をこぼしたとき、「おーい」と声がした。鞄を肩にかけ、手を上げながら、彼は慌てた様子で私のもとに駆けて来る。
「悪い、待たせた! 部活の片付けが長引いて……、写真撮ってたのか?」
「うん」
「そっか。もうちょっと撮ってく?」
「いい。帰ろう」
バスケ部で動き回ったせいか、私のところに急いで来てくれたせいか、彼は頬が赤く、息も上がっていた。私はカメラを両手に持ったまま、疲れ切った彼の、いつもより遅い歩調にあわせて、家路につく。
「お、熟年夫婦は相変わらずだな」
「うるさいぞー」
校門で、からかいながらすれ違うクラスメイトに、彼は笑って「じゃあな」と手を振った。
熟年でも、夫婦でもない。
私たちは幼なじみだから、物心ついたときから一緒にいたけれど、彼に告白したのは去年。今日みたいに、桜が満開だった頃。フィルム越しの彼を、初めて、とても、好きだと思った。
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