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第十章 空の戦い

(一)

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 さっそく、三人で作戦会議。

 ……といきたいところだったけど、ミナセは「まずい、仕事だ!」と叫んだ。

 あわててわたしの家を出ていってしまう。モーリスさまからの信頼の熱いミナセは、今日も忙しいみたい。

『ルーク殿は、彼のお屋敷を離れて、ブラッド・ムーンは別の場所で過ごすらしいよ。彼がいまどこにいるのか、モーリスさまにそれとなく聞いてみるね』

 心強いミナセは、そう言っていた。

 残ったわたしとレオは、ひとまずわたしの部屋を掃除する。そのあと、小屋に移って、そっちの掃除もはじめた。

 お父さんとお母さんは仕事に追われているみたいで、わたしたちには見向きもしない。昨夜の騒ぎもまったく気づかなかったみたい。都合がいいような、働きすぎじゃないかと心配になるような……。

「あー、疲れた!」

 掃除が終わるころには、すっかり昼になっていた。わたしとレオは作業台に突っ伏する。

「悪かったな、こんなにちらかして」
「ううん。それは大丈夫!」

 本当に申し訳なさそうにしているレオに、わたしはぶんぶんと首をふった。

「いっぱいちらかしてくれたおかげで、いままで見たことない宝石とか出てきて、おもしろかったし!」

 きっと父さんたちが練習でつくったんだろう宝石たちが、わんさか出てきたんだ。あんなの見るのはじめて。どこにしまってあったんだろう。

「大変だったけど、宝さがししてるみたいだった! なんならもう一回ちらかしてほしいくらいだよ!」

 ぐっと親指を立てたわたしに、レオは噴き出した。

「ははっ、なんだよそれ。変なやつ」

(あ、よかった)

 わたしもほっとして、笑う。やっぱりレオは、笑っているときが一番きらきらしている。

「おれ、掃除なんてはじめてしたよ」
「……え! うそ⁉」
「ほんと。だって貴族さまだぞ。こういうのは使用人がやってくれてたからさ。意外と疲れるもんだなあ」

 ぐでんと身体から力を抜いて、レオは大あくびをする。

 ……貴族って、こんなふうに、あくびするものかな?

「レオは、あんまり貴族っぽくないけどね」
「なんだと?」

 笑って言うわたしに、レオも笑いながら言い返す。

 そんなレオの胸ポケットから、魔法写真がのぞいた。レオとルークさんの、あの写真だ。

「レオって飛べるんだよね。いいなあ、わたしも飛行魔法の練習しようかな」

 ほうきに乗って、びゅんってね。

 コツをつかむのが難しくて、わたしはまだ飛べないままだった。でも夜空を散歩していたレオは楽しそうだったから、ちょっとうらやましいかも。

 レオはにっとまぶしく笑うと、立ち上がった。

「じゃあ、いまから飛んでみるか?」
「え? わたし、飛行魔法ほんとにできないよ?」
「大丈夫だって! おれが手を引いてやるよ」
「えええ、でも……」
「いいから、いいから! あ、そうだ」

 とまどうわたしを前に、レオは急に、膝をついた。

 って、えええっ⁉ なになに⁉

 レオはわたしを見上げて、手を差し出す。

「お手をお貸しください、レディ」
「へっ⁉」

 それはまるで、絵本の王子さまみたいな姿だった。
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