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第五章 怪しい態度と宝石づくり

(一)

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「ねえ、レオ」

 レオは扉から離れて屋敷からも出たのに、ずんずんと歩みを止めない。わたしが先を歩いていたのに、いつのまにか、レオに腕を引かれていた。たまりかねたわたしが呼び止めたところで、やっと足を止めてくれる。

「大丈夫?」
「……ああ」

 うそだ。いまもレオの顔はこわばっていた。

「レオって、お父さんとケンカでもしたの?」

 わたしはおそるおそる聞いてみた。

 レオは、部屋に閉じこもるのがつまらないから家出したって言ってた。でも、もしかしたら、ケンカして飛び出してきちゃったのかも。そう思ってしまうくらい、レオはおびえているように見えた。

 でもレオは肩をすくめる。

「家出したうえに、大事な赤輝石せっきせきまでなくしたんだ。怒られるに決まってるだろ。だから見つかりたくないんだって」
「……そうなんだ。それならいいけど」
「もういいから、帰ろうぜ」

 ふいっと、レオは顔をそむける。

「あのふたりが屋敷にいるんじゃ、仕方ない。石を返してもらうのは、また明日にしよう」

(……変なの)

 わたしはもやもやしていたけど、家に戻った。これ以上聞いても、レオは答えてくれそうになかったから。

 レオが見たいというから、宝石たちがしまってある小屋に行く。レオはしげしげと宝石を見つめて、わたしに聞いた。

「ルリも、アクセサリーつくれるのか?」
「いまは修行中。あんまり、うまくできなくて」
「へえ、やってみてよ」
「えええっ! いま⁉」

 突然の頼みに、わたしは冷や汗がぶわっと噴き出した。わたし、まだまだ母さんや父さんみたいに、うまく魔法が使えないんだよね。でもレオは見せろって、せがんでくる。

「……わかった。一個だけね」

 しぶしぶ、練習用の安い石を棚から取り出した。薄い水色の石だ。

 なにをつくろう。そうだなあ、水色だから、しずく型でイヤリングかな。この前、母さんがつくったイヤリングを見たし。真似すれば、うまくいくかも。

(ええっと、たしか、こんな感じだった……)

 想像して、手に力をこめる。指先があたたかくなって、光があふれ、石を包む。

 石がきれいに見えるように角度をつけて削って、磨く。つぎに金色の液体を巻き付けて土台にして、最後にイヤリングの金具部分をつくる。

「ど、どう?」

 そっと差し出した、しずく型のイヤリング、なんだけど。

「なんかなあ……、へた」
「うっ」

 正直なレオの言葉が、わたしの胸に突き刺さった。

(まあ、そうでしょうね。わたしもそう思うもん。でもショック……!)

 毎日練習してるんだけど、母さんたちみたいにできない。お店のアクセサリーは、もっときらきらしてるのに、わたしがつくると、きらきらが半分も出せないんだ。
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