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第7章 二度目の実践授業は大ピンチ!
(13)落とし穴の牢獄、大作戦!
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穴の空きやすい東の森。その地の利をいかして、イエローさんとロゼの魔法でつくった、牢獄。そこに魔犬をとらえようっていう、この作戦は、名づけて!
「「「落とし穴の牢獄、大作戦……!」」」
「どう!? さすがの魔犬も、もう逃げられないでしょ――」
ピシピシッ!
「うん……?」
地面から、嫌な音がした。見れば、あちこちに、亀裂が入ってる。……やばっ! イエローさんの魔法が強すぎたんだ! 地面が崩れてきてる! 地面にいるロゼとイエローさんが危険だ!
「しーさん!」
きゅっ! と鳴いて、しーさんがロゼのもとに急降下する。
「きゃあ!」
「ロゼーっ!」
間一髪、ロゼを引っ張って、しーさんに乗せる。すぐ、ロゼのいた地面が崩れた。ひっ!
しーさんは直後に、イエローさんのもとへも駆ける。
「イエローさんも、早く! 手を!」
「り、リリイさん……!」
イエローさんが伸ばした手を、わたしはつかむ。しーさんが空に駆けあがった。つぎの瞬間、地面が崩れた。ぎ、ギリギリセーフ!
「う、でも、おもいぃ……っ!」
しーさんに乗せる暇はなくて、イエローさんは手だけつかまれた、宙ぶらりん状態。
先生の魔法に邪魔されない限界の高さまで、しーさんは飛んだ。崩れていく地面を見下ろして、イエローさんがさっと顔を青くする。
「リリイさん! ぜ、絶対離さないでくださいな!?」
「わかってる! でも重……あれ、ていうかイエローさん、飛べるんじゃないの!?」
「……あ、それもそうですわね」
ふわっと腕にかかっていた力がなくなった。かと思えば、イエローさんはコウモリのような翼でパタパタと飛んでいた。よ、よかった……、腕が千切れるかと思った。
わたしがほっとしていると、ロゼがくわっと叫んだ。
「もう! 加減を知ったほうがいいわよ、イエローさん! 危なかったじゃない!」
「だ、だって、リリイさんが、全力の魔法を地面にぶつけろって言うから……!」
「ああもう、ふたりとも言い合いはストップ! そんなことより!」
わたしは、ふたりの会話をさえぎる。
「魔犬がどうなったのか確認しなきゃ! いまので牢獄破れてないかな!?」
ふたりは、はっと口をつぐんだ。おそるおそる、地面を見る。森は――、さっきとは打って変わって、しんとしている。魔犬が網を破る気配は――、ない……?
うなり声は、いまはもう「ぐるるるるぅ~……」ってなさけない声に変わっていた。穴から逃げるのは諦めた……のかな? 牢獄は、いまも機能してる。
しーさんは、ゆっくりと、安全な地面に降り立った。
その間も、やっぱり魔犬は、出てこない。これは、もしかして。
「捕獲……、できたっぽい?」
「そうね……」
「ですわ……」
魔犬の様子をうかがうわたしたちは、そっとおたがいの顔を見た。ボロボロのロゼとイエローさん。もちろん、わたしも同じようなものだと思う。ぴぃ、と鳴くしーさんも、土と泥で銀色の毛並みが汚れて、くたくただ。
「みんな、ボロボロだね」
「ええ。でも、魔犬は穴の中」
「もう追いかけられることはないですし、逃げなくてもいい。ということは……」
もう一度、三人と一匹で視線を交わす。ぱああっと、みんなの顔に喜びが浮かんだ。
「「「終わったああああっ!」」」
「「「落とし穴の牢獄、大作戦……!」」」
「どう!? さすがの魔犬も、もう逃げられないでしょ――」
ピシピシッ!
「うん……?」
地面から、嫌な音がした。見れば、あちこちに、亀裂が入ってる。……やばっ! イエローさんの魔法が強すぎたんだ! 地面が崩れてきてる! 地面にいるロゼとイエローさんが危険だ!
「しーさん!」
きゅっ! と鳴いて、しーさんがロゼのもとに急降下する。
「きゃあ!」
「ロゼーっ!」
間一髪、ロゼを引っ張って、しーさんに乗せる。すぐ、ロゼのいた地面が崩れた。ひっ!
しーさんは直後に、イエローさんのもとへも駆ける。
「イエローさんも、早く! 手を!」
「り、リリイさん……!」
イエローさんが伸ばした手を、わたしはつかむ。しーさんが空に駆けあがった。つぎの瞬間、地面が崩れた。ぎ、ギリギリセーフ!
「う、でも、おもいぃ……っ!」
しーさんに乗せる暇はなくて、イエローさんは手だけつかまれた、宙ぶらりん状態。
先生の魔法に邪魔されない限界の高さまで、しーさんは飛んだ。崩れていく地面を見下ろして、イエローさんがさっと顔を青くする。
「リリイさん! ぜ、絶対離さないでくださいな!?」
「わかってる! でも重……あれ、ていうかイエローさん、飛べるんじゃないの!?」
「……あ、それもそうですわね」
ふわっと腕にかかっていた力がなくなった。かと思えば、イエローさんはコウモリのような翼でパタパタと飛んでいた。よ、よかった……、腕が千切れるかと思った。
わたしがほっとしていると、ロゼがくわっと叫んだ。
「もう! 加減を知ったほうがいいわよ、イエローさん! 危なかったじゃない!」
「だ、だって、リリイさんが、全力の魔法を地面にぶつけろって言うから……!」
「ああもう、ふたりとも言い合いはストップ! そんなことより!」
わたしは、ふたりの会話をさえぎる。
「魔犬がどうなったのか確認しなきゃ! いまので牢獄破れてないかな!?」
ふたりは、はっと口をつぐんだ。おそるおそる、地面を見る。森は――、さっきとは打って変わって、しんとしている。魔犬が網を破る気配は――、ない……?
うなり声は、いまはもう「ぐるるるるぅ~……」ってなさけない声に変わっていた。穴から逃げるのは諦めた……のかな? 牢獄は、いまも機能してる。
しーさんは、ゆっくりと、安全な地面に降り立った。
その間も、やっぱり魔犬は、出てこない。これは、もしかして。
「捕獲……、できたっぽい?」
「そうね……」
「ですわ……」
魔犬の様子をうかがうわたしたちは、そっとおたがいの顔を見た。ボロボロのロゼとイエローさん。もちろん、わたしも同じようなものだと思う。ぴぃ、と鳴くしーさんも、土と泥で銀色の毛並みが汚れて、くたくただ。
「みんな、ボロボロだね」
「ええ。でも、魔犬は穴の中」
「もう追いかけられることはないですし、逃げなくてもいい。ということは……」
もう一度、三人と一匹で視線を交わす。ぱああっと、みんなの顔に喜びが浮かんだ。
「「「終わったああああっ!」」」
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