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第1章 憧れのお嬢さま学校!

(3)悪夢

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「リリイ、リリイってば!」

 う、ん……?

「もう、しっかりしてよ。せっかく買い物に来てるんだから!」

 はっとする。わたしの目の前には、クラスの女の子たち。場所はショッピングモール。あー、えっと……? そうだ、みんなで買い物に来てたんだっけ?

「ほら行くよ、リリイ!」

 腕を引っ張られて、わたしはお店につれていかれた。って、すごい! かわいいアクセが、きれいに並べられてるよ! クラスの子に人気の、アクセサリーショップじゃん! いいなあ、すてき空間だ!

 ……でも、みんながいるから、わたしはアクセに手をのばせない。

「――うん、いいね。それ、エミによく似合ってるよ。かわいい」

 わたしは笑顔をつくって、みんなが手に取るアクセをほめる。でも、ちらっと、自分もアクセを探すのが止められない。

「あれ。リリイ、それ、気になるの? わ、ハートのヘアピン、かわいい~!」

 ……やば! ばれた。

「い、いや、ううん! ちがうちがう! わたしには、こういうの似合わないし!」
「えー、そう? 気になるなら、試してみればいいのに」

 ほら、と友だちの手がのびてきて、わたしの髪にヘアピンをとめた。いいの……?

 胸がどきどきと鳴りはじめる。ハートのアクセなんて、はじめてだ。

「どう、かな?」
「んー……、うん!」

 友だちが、大きくうなずく。

「だめだね、やっぱ! リリイには!」
「……え?」
「かわいいアクセは、リリイのキャラじゃないよ!」

 一気に体から熱が引いていった。そんなわたしの髪から、ヘアピンがむしり取られる。

「リリイはかっこいいままでいて!」
「わたしたちの王子なんだから!」
「かわいいのもファンシーなのも禁止!」

 そ、そんな。みんなの顔を、まともに見られない、どうしよう――。

 ピピピピピ

 ぱちっ、と目が覚めた。目覚まし時計の音が鳴ってる。すこし開いていたカーテンから、朝日が差し込んでいた。ここは、わたしの部屋だ。

「……夢?」

 なんだ、そっか。いまのは夢だったらしい……、嫌な夢だな。みんなの顔や言葉が、頭から離れなくて、胸がずきんと痛んだ。

(女の子っぽいものは禁止、かあ……、ううう、悪夢じゃん!)

 もう一度ベッドに倒れると、濃い花の香りがした。かぎなれない匂いだ。昨日は気づかなかったけど、お母さんがシーツを洗濯したのかな? 慣れない匂いだから、変な夢を見たとか? 最悪だ。

 ぐったりしながら廊下に出ると、ちょうど、お母さんが笑顔で歩いてきた。

「おはよう、リリイ! いま呼びに行こうと思っていたところよ~!」
「……お母さん、相変わらず、朝から元気だね」
「うふふ、そうかしら~?」
「悪夢なんて縁がなさそうで、うらやましいよ。ていうか、呼びに行くって、なんで?」
「あなたにお客さまが来てるの。かわいい女の子!」

 ん? だれかと遊ぶ約束なんて、してたっけ?
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