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謎の転校生
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小早川ユウキと桜小路カズサは、クラスも同じだった。一時間目の現代国語が終わると、二時間目はクラス担任の内村朋美先生が教える数学だったが、始まる直前に、クラス中に
ある噂が流れたのだった。
「二時間目から、転校生が入ってくるらしい」
「すごい美人だってさ」
「しかも、どうやら巨乳らしいぞ」
転校生が、一時間目からではなく、二時間目から入って来るというのも、変わった話だったが、ユウキはその噂を聞いて、これはリリアンのことではないかとピンときた。たしか、昨日それらしいことを言っていた。
(ええっ、まさかリリアンが……)
リリアンは、ユウキの家に居候として居ついてしまったが、もともとこちらの出身ではないし、戸籍すらもっていない。高校に編入してくるなんて無理なはずだ。しかし、彼女の能力をもっとすれば、可能かもしれない。
そして、二時間目のチャイムと同時に内村先生が教室に入ってきた。ユウキやカズサの担任の内村朋美先生は、26歳のまだ独身だったが、大学を優秀な成績で卒業した、能力の高い熱血教師で生徒に人気があった。
先生は一人で教室に入ってきたので、例の噂は間違いだったのかという空気が流れた。ユウキも少しホッとしたが、内村先生は
「じゃ、授業を始める前に、あなたたちの新しいクラスメートを紹介します」
と言って、転校生を教室に招き入れたのだ。入ってきた生徒の姿を見て、クラスからは、どよめきが沸いた。スタイル抜群のすごい美少女、しかも噂通りの巨乳の女子生徒が入ってきたのだ。学園アイドルのカズサとそん色ない。ユウキは、アチャーとなった。
(うわあ、やっぱりリリアンだ!)
先生が、リリアンの紹介を始めた。
「今日からアンビシャス学園に編入してきた小早川リリアンさんよ。クラスの小早川クンのいとこで同居しているそうです。最近ヨーロッパの方から日本に来られたということです」
内村先生が、小早川クンのいとこ、と紹介した瞬間、ユウキは、クラス中の視線が自分に集中するのを感じた。
――どうして、隠していたのか
――こんな美少女と同居だなんて羨ましい
嫉妬、羨望、疑惑の目が集まるのを感じて、首筋からタラリと冷や汗が流れた。
「小早川リリアンといいます。よろしくお願いします」
リリアンは、完璧な日本語でごくごく簡単な自己紹介をした。彼女が何か変なことをしゃべるんじゃないかという、ユウキの心配は杞憂に終わった。
二時間目の授業が終わると、ユウキはリリアンの手をとって、彼女を連れて、ダッシュで校舎の外に出た。誰にも聞かれなさそうな物陰に来ると、
「まさか、本当に高校に入ってくるなんて思ってなかったよ。どうやって入ったの?」
と問いただした。
「だって、一人なんてつまらないわ。ユウキと一緒にいたいから来ちゃった。うん、ちょっと魔法を使ったの」
「違う世界から来て、こちらのことあまり知らないのにどうするの?」
「ユウキの家の書斎の本から、魔法でこちらの常識はかなり身につけたの」
「うーん」
「わたしが来たら迷惑?」
リリアンが少し悲しそうな顔になったので、ユウキは取り繕うように、
「いやいや、迷惑じゃないんだけどね」
「じゃあ、いてもいいのね」
リリアンの顔はほころんだが、これから、いろいろと大変になりそうだった。その中でもおそらくカズサが追及してくるだろう。どうやってかわしたらいいのか。
午前の授業が終わって、昼休みの時間帯。リリアンはクラスの男子生徒から取り囲まれその美貌と優雅な立ち振る舞いで、彼らを早くも魅了していた。評判を聞きつけて、他のクラスからも、美少女転校生を一目見ようと、多くの生徒が集まっていた。
その間、ユウキは幼馴染の桜小路カズサから呼び出されていた。
「ユウキ、いったい誰なの彼女? あんな子がいるなんて何も言ってなかったじゃない」
「いやあ、リリアンは突然現れちゃって」
「ごまかさないで! あなたにあんなイトコなんていないの、知ってるわよ」
小早川家と付き合いの古いカズサをごまかすことはできない。舌鋒鋭いカズサにユウキはタジタジとなった。
「昨日、ユウキがデートしたっていうのは、あの子なのね!」
「ま、まあ、そうかな」
「もう、キレイな子が現れたからってデレデレしちゃって!」
カズサは不機嫌だった。ユウキは彼女をなだめるように
「そうだよ。リリアンは僕のイトコじゃないよ。いろいろ複雑な事情があるんだ。後で
リリアンのいるところで話すから」
となんとか話を収めた。その日の放課後、家が同じユウキとリリアンに、同じ方向の
カズサも加わって3人で帰宅した。
「初めましてリリアン。わたしは桜小路カズサというの。あなたと同じクラスよ。ようこそ」
「こちらこそカズサ。とってもお綺麗な方ね。ひょっとしてユウキの彼女?」
いきなりの直球に、カズサは動揺した。
「え、えっ、い、いや。そんなんじゃないわ。ユウキとはただの幼馴染よ」
ユウキが引き取った。
「そうなんだよ、リリアン。僕とカズサは幼馴染で、うちの事はなんでも知ってるんだ。
だから、リリアンが僕のイトコじゃないことももう知ってる」
だが、リリアンは全く動じなかった。
「ユウキの友達なら信頼できる人なんでしょ。だったら本当の事教えたらいいわ。カズサ、わたしは異世界から来たの。ユウキの家にたまたまね。そして、そのまま住み着いちゃったってわけ」
「ええっ!」
学園アイドルの桜小路カズサもこれにはビックリ仰天だった。
ある噂が流れたのだった。
「二時間目から、転校生が入ってくるらしい」
「すごい美人だってさ」
「しかも、どうやら巨乳らしいぞ」
転校生が、一時間目からではなく、二時間目から入って来るというのも、変わった話だったが、ユウキはその噂を聞いて、これはリリアンのことではないかとピンときた。たしか、昨日それらしいことを言っていた。
(ええっ、まさかリリアンが……)
リリアンは、ユウキの家に居候として居ついてしまったが、もともとこちらの出身ではないし、戸籍すらもっていない。高校に編入してくるなんて無理なはずだ。しかし、彼女の能力をもっとすれば、可能かもしれない。
そして、二時間目のチャイムと同時に内村先生が教室に入ってきた。ユウキやカズサの担任の内村朋美先生は、26歳のまだ独身だったが、大学を優秀な成績で卒業した、能力の高い熱血教師で生徒に人気があった。
先生は一人で教室に入ってきたので、例の噂は間違いだったのかという空気が流れた。ユウキも少しホッとしたが、内村先生は
「じゃ、授業を始める前に、あなたたちの新しいクラスメートを紹介します」
と言って、転校生を教室に招き入れたのだ。入ってきた生徒の姿を見て、クラスからは、どよめきが沸いた。スタイル抜群のすごい美少女、しかも噂通りの巨乳の女子生徒が入ってきたのだ。学園アイドルのカズサとそん色ない。ユウキは、アチャーとなった。
(うわあ、やっぱりリリアンだ!)
先生が、リリアンの紹介を始めた。
「今日からアンビシャス学園に編入してきた小早川リリアンさんよ。クラスの小早川クンのいとこで同居しているそうです。最近ヨーロッパの方から日本に来られたということです」
内村先生が、小早川クンのいとこ、と紹介した瞬間、ユウキは、クラス中の視線が自分に集中するのを感じた。
――どうして、隠していたのか
――こんな美少女と同居だなんて羨ましい
嫉妬、羨望、疑惑の目が集まるのを感じて、首筋からタラリと冷や汗が流れた。
「小早川リリアンといいます。よろしくお願いします」
リリアンは、完璧な日本語でごくごく簡単な自己紹介をした。彼女が何か変なことをしゃべるんじゃないかという、ユウキの心配は杞憂に終わった。
二時間目の授業が終わると、ユウキはリリアンの手をとって、彼女を連れて、ダッシュで校舎の外に出た。誰にも聞かれなさそうな物陰に来ると、
「まさか、本当に高校に入ってくるなんて思ってなかったよ。どうやって入ったの?」
と問いただした。
「だって、一人なんてつまらないわ。ユウキと一緒にいたいから来ちゃった。うん、ちょっと魔法を使ったの」
「違う世界から来て、こちらのことあまり知らないのにどうするの?」
「ユウキの家の書斎の本から、魔法でこちらの常識はかなり身につけたの」
「うーん」
「わたしが来たら迷惑?」
リリアンが少し悲しそうな顔になったので、ユウキは取り繕うように、
「いやいや、迷惑じゃないんだけどね」
「じゃあ、いてもいいのね」
リリアンの顔はほころんだが、これから、いろいろと大変になりそうだった。その中でもおそらくカズサが追及してくるだろう。どうやってかわしたらいいのか。
午前の授業が終わって、昼休みの時間帯。リリアンはクラスの男子生徒から取り囲まれその美貌と優雅な立ち振る舞いで、彼らを早くも魅了していた。評判を聞きつけて、他のクラスからも、美少女転校生を一目見ようと、多くの生徒が集まっていた。
その間、ユウキは幼馴染の桜小路カズサから呼び出されていた。
「ユウキ、いったい誰なの彼女? あんな子がいるなんて何も言ってなかったじゃない」
「いやあ、リリアンは突然現れちゃって」
「ごまかさないで! あなたにあんなイトコなんていないの、知ってるわよ」
小早川家と付き合いの古いカズサをごまかすことはできない。舌鋒鋭いカズサにユウキはタジタジとなった。
「昨日、ユウキがデートしたっていうのは、あの子なのね!」
「ま、まあ、そうかな」
「もう、キレイな子が現れたからってデレデレしちゃって!」
カズサは不機嫌だった。ユウキは彼女をなだめるように
「そうだよ。リリアンは僕のイトコじゃないよ。いろいろ複雑な事情があるんだ。後で
リリアンのいるところで話すから」
となんとか話を収めた。その日の放課後、家が同じユウキとリリアンに、同じ方向の
カズサも加わって3人で帰宅した。
「初めましてリリアン。わたしは桜小路カズサというの。あなたと同じクラスよ。ようこそ」
「こちらこそカズサ。とってもお綺麗な方ね。ひょっとしてユウキの彼女?」
いきなりの直球に、カズサは動揺した。
「え、えっ、い、いや。そんなんじゃないわ。ユウキとはただの幼馴染よ」
ユウキが引き取った。
「そうなんだよ、リリアン。僕とカズサは幼馴染で、うちの事はなんでも知ってるんだ。
だから、リリアンが僕のイトコじゃないことももう知ってる」
だが、リリアンは全く動じなかった。
「ユウキの友達なら信頼できる人なんでしょ。だったら本当の事教えたらいいわ。カズサ、わたしは異世界から来たの。ユウキの家にたまたまね。そして、そのまま住み着いちゃったってわけ」
「ええっ!」
学園アイドルの桜小路カズサもこれにはビックリ仰天だった。
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