9 / 36
8話
しおりを挟む蓮の寝室に入ると,蓮はさっきより苦しそう
に唸っている。汗もたくさんかき、死ぬんじゃないかと不安に思い、大丈夫??と声をかけた。すると蓮はふにゃりと笑い、
「花」
と今まで聞いたことのない、甘くて優しい声で俺に話しかけた。俺の心臓は跳ね上がる。久しぶりに笑いかけてもらえたのが嬉しくてか、その笑顔を向けられているのでは俺じゃなくて悲しいのか、俺自身もわからなかった。でも、今心寂しい蓮には花が必要なんだ。俺じゃない、花が。なら、花になろう。それにその方が俺自身も蓮に素直になれる。
「.....そうだよ,花だよ。おじや作ったけど,食べる??」
「……花の手料理…、嬉しい……食べる」
「よかった,はいスプーン」
「…ねぇ,花が食べさせて…」
え
心臓が口から出るかと思った。ずっとドキドキしてんのにそんなことしたら俺が死んじゃう……
流石に断ろうとするが、蓮は子犬のような目でこちらを見ている。
「……ぅん,分かった…」
「…やった」
見るからに嬉しそうな顔。
一口ずつ蓮の口へとスプーンを運ぶ。食べる姿までもがかっこよくて結局食べ終わるまで心臓が鳴り止むことはなかった。
食べ終わると,少し落ち着いたのか蓮は眠ってしまった。
蓮の寝顔を見ながら、もうこんなに幸せな時間はないだろうな……蓮には悪いけど、もうちょっとだけここにいさせて、蓮が起きる頃にはちゃんといつもの俺に戻るから、まだ花でいさせて
と強く蓮の手を握り、そっと蓮の頬にキスをした。すると、インターホンが鳴り誰かと見ると花だった。補習を終えて急いで来たのだろう。すごく息があがっている。
『.....やっぱり,神様は許してくれないか...』
なんて信じてもいない神様を思い、ドアを開ける。
本物の花を迎え、偽物の俺は帰るのだ。
0
お気に入りに追加
132
あなたにおすすめの小説
気にしないで。邪魔はしないから
村人F
BL
健気な可愛い男の子のお話
,
,
,
,
王道学園であんなことやこんなことが!?
王道転校生がみんなから愛される物語〈ストーリー〉
まぁ僕には関係ないんだけどね。
嫌われて
いじめられて
必要ない存在な僕
会長
すきです。
ごめんなさい
好きでいるだけだから
許してください
お願いします。
アルファポリスで書くのめっちゃ緊張します!!!(え)
うぉぉぉぉぉ!!(このようにテンションくそ高作者が送るシリアスストーリー💞)
君が僕を見つけるまで。
いちの瀬
BL
どんな理由があっても、僕はもうここを去るよ。
2人の思い出が詰まったこの家を。
でもこれだけは信じてくれるかな。
僕が愛してたのは君だけだ。ってこと。
浮気攻め×健気受け なのかなぁ?もう作者にも結末、cpわかりませんw
台風の目はどこだ
あこ
BL
とある学園で生徒会会長を務める本多政輝は、数年に一度起きる原因不明の体調不良により入院をする事に。
政輝の恋人が入院先に居座るのもいつものこと。
そんな入院生活中、二人がいない学園では嵐が吹き荒れていた。
✔︎ いわゆる全寮制王道学園が舞台
✔︎ 私の見果てぬ夢である『王道脇』を書こうとしたら、こうなりました(2019/05/11に書きました)
✔︎ 風紀委員会委員長×生徒会会長様
✔︎ 恋人がいないと充電切れする委員長様
✔︎ 時々原因不明の体調不良で入院する会長様
✔︎ 会長様を見守るオカン気味な副会長様
✔︎ アンチくんや他の役員はかけらほども出てきません。
✔︎ ギャクになるといいなと思って書きました(目標にしましたが、叶いませんでした)
【クズ攻寡黙受】なにひとつ残らない
りつ
BL
恋人にもっとあからさまに求めてほしくて浮気を繰り返すクズ攻めと上手に想いを返せなかった受けの薄暗い小話です。「#別れ終わり最後最期バイバイさよならを使わずに別れを表現する」タグで書いたお話でした。少しだけ喘いでいるのでご注意ください。
罰ゲームから始まる不毛な恋とその結末
すもも
BL
学校一のイケメン王子こと向坂秀星は俺のことが好きらしい。なんでそう思うかって、現在進行形で告白されているからだ。
「柿谷のこと好きだから、付き合ってほしいんだけど」
そうか、向坂は俺のことが好きなのか。
なら俺も、向坂のことを好きになってみたいと思った。
外面のいい腹黒?美形×無表情口下手平凡←誠実で一途な年下
罰ゲームの告白を本気にした受けと、自分の気持ちに素直になれない攻めとの長く不毛な恋のお話です。
ハッピーエンドで最終的には溺愛になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる