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第3話
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生後1か月しか経っていないマークが掴まり立ちした事はアーカイル辺境伯邸内では大きな話題になっていた。
両親であるダグラス、マリアナはもとより執事や従者などの使用人までもがその話題で持ちきりだった。
また使用人などから話が外に漏れたのか、辺境伯領内全土に噂が流れるのにはそれ程時間は掛からなかった。
そして、マークが掴まり立ちをしてからちょうど1週間が立った頃。
———マークの為に用意された居室にて、
「あぅ!(やったー! ようやく歩けるようになったぞ!)」
掴まり立ちが出来るようになってからというものの、筋肉にかかる負荷が一気に増大したおかげか筋力が付いていくスピードが加速した。
さらに体内の不思議な力を魔力と認識してからか少しばかりか身体が軽くなったように感じる。
それにしてもやはり赤ちゃんの成長というのは早いものがあるな。掴まり立ちに成功してからこんなにすぐに歩けるようになるとは。
マークは掴まり立ちを覚えてから、その3日後には補助なしで立てるようになり、その4日後にはぎこちないものの歩けるようになった。
「あぅ!(これでようやく自力でトイレに行く事が出来る! ヤツが近い、よし早速トイレに向かうぞ!)」
マークはその短い足で一生懸命に屋敷内のトイレを目指すことした。
「あぅ!(ようやくだ! ようやくあの苦痛から解放される時が来た!)」
マークは必死に屋敷内にあるトイレを目指した。
以前にわざとぐずり侍女に抱っこをしてもらい、屋敷内を順番に案内してもらったことがあった。
その時、既に屋敷内にあるトイレの場所は全て把握している。
「あぅ!(そこの角を曲がってすぐ右手に、待望のトイレが!)」
マークはすぐ角を曲がってすぐの楽園に向かって必死に歩みを進めた。もうすぐそこに僕の安息の地が———
だが、現実はそれ程甘くなかった。
マークの進行を阻むものが現れた。
下世話を処理してくれている担当の侍女だ。
「ま、ま、マーク様ぁ! 奥様ッ!?旦那様ッ!?
マーク様がぁぁ!!」
勝手に自室を飛び出して、廊下を歩き回るマークを見るや否や、担当の侍女のサラシャは大声で雇い主であるダリウスとマリアナを呼びつけた。
侍女の大声を聞きつけ、愛する息子にマークに何かあったのではないかと危惧した2人は物凄いスピードで駆け付けてくる。
サラシャが呼びつけてから1秒も経たずにマークの下へと到着した。
「サラシャ! 説明しなさい! マ、マークちゃんにに何があったの———ッて、マークちゃんがどうしてこんな所に居るの?」
「そうだぞ! サラシャ! マークに何かあったとなれば例えお前でも処罰は免れんぞ———ッて、マークがいない!」
侍女のサラシャ達の不毛なやり取りは放っておいて、マークはこっそりとあと少しのトイレの方へと抜け出す。
その後ろ姿をみたマリアナとダリウスは
「「ま、ま、マーク(ちゃん)が歩いてるぞ(わ)!」
そんな息子の成長に感動している2人のことは気に留めることなく、マークは必死に目指した。
あと少し、あと10歩!
あと9歩!
あと8歩!…………あと3歩!あと2歩!あと……
———捕まった。
安息の地、約束の地へとあと1歩のところでマークは母親のマリアナによって抱き上げられてしまった。
「あぅ!あぅ!(このッ!?やめてくれ! あと少しなんだ! ようやくここまで辿り着いたんだ! はやく放せ!?)」
マークはマリアナに抱き上げられながらも必死に抵抗の意志を示し、腕の中で暴れた。
だがマークの非力さでは母親のマリアナはビクともしないようで、
「マークちゃんはやっぱり天才ね! 流石、わたしの子ね~!」
マリアナはそうマークに語りかけ頬に口付けをする。
その隣で父親のダリウスはボソッと「俺の子でもあるんだぞ?」と口にしたが、どうやらマリアナには何も聞こえていないようであった。
そしてしばらくの間、マリアナに玩具にされたマークは項垂れた様子でマリアナにオムツを変えてもらうことになった。
マークはまたも強く決意した。
———今度こそ捕まらないように次は早く走れるようになろう!それにはこの魔力というエネルギーを上手く使う方法を考えなくては……
そして、掴まり立ちをしてから1週間程で屋敷内を歩き回ったというマークの噂は辺境伯内外、関係者問わずに瞬く間に広がっていった。
両親であるダグラス、マリアナはもとより執事や従者などの使用人までもがその話題で持ちきりだった。
また使用人などから話が外に漏れたのか、辺境伯領内全土に噂が流れるのにはそれ程時間は掛からなかった。
そして、マークが掴まり立ちをしてからちょうど1週間が立った頃。
———マークの為に用意された居室にて、
「あぅ!(やったー! ようやく歩けるようになったぞ!)」
掴まり立ちが出来るようになってからというものの、筋肉にかかる負荷が一気に増大したおかげか筋力が付いていくスピードが加速した。
さらに体内の不思議な力を魔力と認識してからか少しばかりか身体が軽くなったように感じる。
それにしてもやはり赤ちゃんの成長というのは早いものがあるな。掴まり立ちに成功してからこんなにすぐに歩けるようになるとは。
マークは掴まり立ちを覚えてから、その3日後には補助なしで立てるようになり、その4日後にはぎこちないものの歩けるようになった。
「あぅ!(これでようやく自力でトイレに行く事が出来る! ヤツが近い、よし早速トイレに向かうぞ!)」
マークはその短い足で一生懸命に屋敷内のトイレを目指すことした。
「あぅ!(ようやくだ! ようやくあの苦痛から解放される時が来た!)」
マークは必死に屋敷内にあるトイレを目指した。
以前にわざとぐずり侍女に抱っこをしてもらい、屋敷内を順番に案内してもらったことがあった。
その時、既に屋敷内にあるトイレの場所は全て把握している。
「あぅ!(そこの角を曲がってすぐ右手に、待望のトイレが!)」
マークはすぐ角を曲がってすぐの楽園に向かって必死に歩みを進めた。もうすぐそこに僕の安息の地が———
だが、現実はそれ程甘くなかった。
マークの進行を阻むものが現れた。
下世話を処理してくれている担当の侍女だ。
「ま、ま、マーク様ぁ! 奥様ッ!?旦那様ッ!?
マーク様がぁぁ!!」
勝手に自室を飛び出して、廊下を歩き回るマークを見るや否や、担当の侍女のサラシャは大声で雇い主であるダリウスとマリアナを呼びつけた。
侍女の大声を聞きつけ、愛する息子にマークに何かあったのではないかと危惧した2人は物凄いスピードで駆け付けてくる。
サラシャが呼びつけてから1秒も経たずにマークの下へと到着した。
「サラシャ! 説明しなさい! マ、マークちゃんにに何があったの———ッて、マークちゃんがどうしてこんな所に居るの?」
「そうだぞ! サラシャ! マークに何かあったとなれば例えお前でも処罰は免れんぞ———ッて、マークがいない!」
侍女のサラシャ達の不毛なやり取りは放っておいて、マークはこっそりとあと少しのトイレの方へと抜け出す。
その後ろ姿をみたマリアナとダリウスは
「「ま、ま、マーク(ちゃん)が歩いてるぞ(わ)!」
そんな息子の成長に感動している2人のことは気に留めることなく、マークは必死に目指した。
あと少し、あと10歩!
あと9歩!
あと8歩!…………あと3歩!あと2歩!あと……
———捕まった。
安息の地、約束の地へとあと1歩のところでマークは母親のマリアナによって抱き上げられてしまった。
「あぅ!あぅ!(このッ!?やめてくれ! あと少しなんだ! ようやくここまで辿り着いたんだ! はやく放せ!?)」
マークはマリアナに抱き上げられながらも必死に抵抗の意志を示し、腕の中で暴れた。
だがマークの非力さでは母親のマリアナはビクともしないようで、
「マークちゃんはやっぱり天才ね! 流石、わたしの子ね~!」
マリアナはそうマークに語りかけ頬に口付けをする。
その隣で父親のダリウスはボソッと「俺の子でもあるんだぞ?」と口にしたが、どうやらマリアナには何も聞こえていないようであった。
そしてしばらくの間、マリアナに玩具にされたマークは項垂れた様子でマリアナにオムツを変えてもらうことになった。
マークはまたも強く決意した。
———今度こそ捕まらないように次は早く走れるようになろう!それにはこの魔力というエネルギーを上手く使う方法を考えなくては……
そして、掴まり立ちをしてから1週間程で屋敷内を歩き回ったというマークの噂は辺境伯内外、関係者問わずに瞬く間に広がっていった。
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