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第30話 滅龍の剣

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 婚約者であるシーリアとフィリナに一緒に王国建国祭のオークションに行くことを断られた俺は、仕方なく『翼竜の翼』のメンバーを誘ってオークション会場へと向かった。

 昨日貰ったVIP入場券を係の人へと見せて、VIPエリアへと向かう。
 そこには他にも大金を持っているだろう豪華絢爛に身を包んだ人達が居た。

 俺たちはその人達程ではないが、地龍討伐によって国から褒賞金として一人当たり、1億近く貰っており、王国建国祭のオークションへの参加の軍資金は多少は持っている。

 マリンはあまりの光景に初めて都会を訪れた田舎者のように周りをキョロキョロと見渡している。

「す、凄いわね。こんなVIP席、私達が来ちゃって良いのかな?」

「確かにねー。こんな所来る人ってどこかの偉い貴族さんか、豪商のどれかだよねー」

 サリネもマリンと一緒になってはしゃいでいる。

「本当だなぁ、こんなVIP席に招待されるなんて流石は今、大注目の『龍殺しの英雄』さんだな」

 ケインが俺の事を『龍殺しの英雄』と呼んで揶揄ってくる。
 他人からそう呼ばれるのは別に良いのだが、仲間に言われると無性に腹立つし、照れ臭い。

「本当にここは良いぜ。俺達が偉くなったように感じるぜ!」

 マルゴもVIP席にはかなり興奮していた。
 そして、続々とオークションへ入場して来た。
 暫くすると、オークションの会場が満席となった。

 それと同時に、ドーンと銅鑼の音が鳴り響く。
 
 その瞬間、皆の注目は一番高い席へ向けられる。
 その視線の先にはアルトバルト王国の国王デイドルド・アルバ・アルトバルトがいた。

 拡張機のような物によって、デイドルドの声がオークション会場に朗々と響き渡る。

「皆の諸君、よくぞ、王国建国祭一番初めのイベント、オークションへと集まってくれた。今日のオークションは未だ嘗て例に見ない、大規模のオークションとなった。出品する品々も普通では目にかかれない極上の品ばかりである。それに今日のオークションでの大注目は、『龍殺しの英雄』によって、討伐されたSSS級の『地龍』だ。皆の諸君、今日は良くぞ集まってくれた。そして、国王の名の下に、只今より王国建国祭オークションの開催を宣言する!」

 国王デイドルドのオークション開催の宣言により、オークション会場が叫び声で湧き返る。

「王国建国祭オークションの堂々たる一つ目の品を飾るのはこちらぁぁぁぁぁぁ!」

 司会者が品を見せると同時に、会場のヴォルテージが上がっていく。

「最初の商品は貴族紳士からも大好評、夜なら朝まで頑張れる! 何がとは言わないが! 話題の『ヒッチの精力増強剤』だぁぁぁ!」

 俺は司会者が品の名前を言うと同時に、このオークション大丈夫なのかと思った。
 だが俺の予想とは全く違い、会場の盛り上がりは一気に高調まで達した。

「それでは『ヒッチの勢力増強剤』は合計で5本! 金額は、銀10からだぁぁぁ!」

 司会者が最初の始値を告げると同時にオークションの競り合いが始まった。

「255番! 銀15!」
「34番! 銀20!」
「165番! 銀30!」

 銀10というのは銀貨10枚からということらしい。
 銀貨10枚となると日本円だと10万円からか。
 始まりが10万なんてかなりバグったオークションである。
 司会者が叫ぶ番号は座席に振られた番号である。

 だが、競り合いはどんどん加速していく。

「255番! 金1!! オークション開催始めにして金1が出ましたぁぁ! 他には居ませんかぁ?」

 そして、暫く競り合いが止まると

 ドォォォォォォン!
 と始まりと同様、銅鑼の音が響き渡る。

「それでは『ヒッチの精力剤』は255番さんによって金1で落札されましたぁぁぁ!」

 それと同時に隣に座っていた貴族の男が「よっしゃぁぁぁ」と叫んでいた。
 貴族の男の周りには多くの女が居たので、「なるほどな」と俺は勝手に納得するのであった。

 俺はたかが『精力増強剤』で金貨1枚も出すオークションに驚きが隠せなかった。
 というのも精力増強剤なんて現世なら1000円くらいで上等な物が買える。

 そして次々とオークションは続いていき、多数の品が、あり得ない価格で落札されていった。

 オークションが進む中で『虹魔石』と呼ばれる宝石には貴婦人達が血相を変えて、絶対に自分のものにしようと大金を叩いていた。

 
 オークションも中盤に差し替かる。

「それではオークションも中盤に差し掛かってまいりましたぁぁぉ! 次の品に行ってみましょう! 次の品はこちらぁぁぁぁ!」

 司会者によって次の品が姿を表す。
 その商品が姿は表すと、会場のヴォルテージは今までにない盛り上がるを見せる。
 俺もその商品には目を奪われる。

「次の商品はアルトバルト南西の『エルドリドの大迷宮』で発掘されたその名も『滅龍のつるぎ』だぁぁぁ!」

 俺は思わずアイテム鑑定を発動させて、『滅龍のつるぎ』を鑑定することにした。


_________________________________________

【アイテム: 滅龍のつるぎ
<等級> 伝説級

<品質>最高品質

<効果>【龍滅殺】【龍撃半減】【不壊】
_________________________________________
 

【龍滅殺】

 龍と戦闘する時だけ通常の攻撃力を2倍にする

【龍撃半減】

 龍の攻撃に対してダメージを2分の1にする。


 俺はこの剣の効果を見た瞬間に、この【滅龍の剣】を手に入れるべきだと思った。

 そして、【滅龍の剣】の競り合いが始まった。

「それでは【滅龍の剣】は金1枚からぁぁぁぁ!」

 俺の座席番号は256番。

「1078番! 金10!」
「256番! 金11!」

 少しチマチマしているが、まずは相手の様子を見ることから始める。

「1078番! 金15!」
「256番! 金16!」

 様子から察するにまだまだ相手にも余裕があるようだな。

「15番! 金20!」
「1078番! 金25!」
「15番! 金40!」
「1078番! 金45!」

 恐らくだが、1078番は徐々に余裕が無くなりつつある。

「15番! 金50!」
「1078番! 金51!」
「15番! 金55!」

 この瞬間、15番が1078番を撃破したのを見計らう。これだけ金が積もっていけば、恐らくだが戦う相手は15番ただ一人。

「256番! 金100!」

 俺は一気に誰かも分からない15番突き放しに行く。だが、15番も負けじと上乗せをして行く。

「15番! 金150!」

 俺は金150という数値を見て拳を握り締める。
 
 だが、俺もあの効果の【滅龍の剣】が欲しい一心。俺は覚悟を決めて、

「256番! 金200!」

 今のところ俺の全財産である金200を宣言する。
 これでダメならあの【滅龍の剣】は諦める他ない。
 お願いだ! 頼むからもう上乗せしないでくれ!
 
 俺がそう思った矢先、15番は驚くべき額を宣言した.

「15番! 金300!」

 俺はその瞬間、15番にオークションにて敗北した。

 そして他に誰も上乗せする事が無かった為、ドォォォォォォン!と銅鑼の音が響き渡る。

「それでは『滅龍の剣』は15番さんによって300で落札されましたぁぁぁ!」 

 それと同時に、腹に脂肪を溜めまくった小デブの貴族が奇声をあげて叫んでいた。

 こうして【滅龍の剣】は小デブの貴族へと掻っ攫っていった。

 俺は皮肉にもお前にどうやって使うんだよと悪態を吐いておいた。

 だが、俺は鑑定を見てみると不思議な事が起こっていた。


 『固定付与能力』の欄には【龍滅殺】【龍撃半減】が追加されていた。
 この現象は今思えば、『紅魔剣のグレン』を倒した時にも同じような事が起こっていた。

 以前の現象と今起こった現象を推測すると、恐らくだが、アイテム鑑定を使って、剣を鑑定する事でその能力が付与出来るようになるのだろう。

 俺はその効果を知り、『固定付与能力』の強さを改めて実感した。

 俺はこうして戦いに負けて戦に勝つかのような気分になり、俺はどうだと言わんばかりに、すぐに剣の付与項目に【龍滅殺】【龍撃半減】を追加してやった。


_______________________________________

【アイテム:魔鉄の長剣】

『固有能力付与』

 効果

【不壊】【武器破壊】【形態変化】
【身体強化Lv.MAX】【斬撃強化Lv.MAX】
【風纏】【炎纏】【雷纏】
【龍滅殺】【龍撃半減】

_________________________________________




 
 

 
 

 
 


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