神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ

文字の大きさ
上 下
13 / 16

エルフの里

しおりを挟む
 新作

『極悪奴隷商の悪役息子に転生したので、奴隷は売らずに大切に育てます』

『転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件』
 を新作連載しました。

 こちらも爽快で、主人公最強の冒険ファンタジーとなっておりまして、テンポよく1話1500字で毎日更新していきます。
 是非読んで見てください。
 




 転移魔法を発動させると浮遊感が身体に襲いかかる。

 発動と同時に視界がぐるりと展開し、移り変わる。
 転移が成功したのか、襲いかかっていた浮遊感は霧散して、いつも通りの地面を足の裏の前面に感じる。

 そして、浮遊感に襲われ、咄嗟に飛びてしまった瞳を開けると、
 
 そこには100メートル超の大木が所狭しと林立していた。

 そんな光景にアオバは

「すっごーーい! ここの木すっごい大きいーー!」

 珍しい光景なのかアオバは楽しそうに巨木に向かって、ぴょんぴょんと跳ねている。

 物攻が0の為、衝撃は全くないので、木の葉一枚も揺れることが無かった。

 そんな光景に少し可哀想だなと思ってしまう。

 100メートル超の巨木が周りを埋め尽くす中、顔をグーっと上に持ち上げると、そこに目の周りにある木を軽ーく凌駕する程の大きさの大木が聳え立っていた。
 
「なんだあれは? でかいっていうレベルじゃないよ?」

 推定1,000メートル程ある木を、まるで田舎から東京に出てきて、初めてスカイツリーを見たように口を開けて見上げていると、

「……ごしゅじん、今見てるのが世界樹様、大きいでしょ……」

 ソフィアが心なしか、自慢げな口調で目の前に見えるのが世界樹である事を教えてくれる。

 そんなソフィアの様子が可愛かったので、俺はソフィアの頭を不意にもよしよしと撫でてしまう。

 頭を撫でるとソフィアは気持ちいいのか、ふにゃりとした笑みをこぼす。

 ソフィアの頭を撫でているとアオバがその光景が気に加わなかったのか、

「ご主人様ぁ、イチャイチャはダメですぅぅー」

 アオバは文句を垂れながら、俺の肩にピョーンと飛び交かり、見事肩にくっつく事に成功する。

 すぐ嫉妬を燃やしてしまうアオバのことも撫でてやる。

 エルフの里への転移に成功し、団欒の済んだところでソフィアが

「……ごしゅじん、世界樹様がなんか少し元気がないみたい……」


 訝しげな目で巨木、世界樹を不安そうに眺める。
 
 ソフィアの発言が気になったので、神眼を発動して、世界樹を見つめる。

 すると、世界樹の状態がわかった。

『マスター、わかりましたか? 原因は邪気にありそうですね?』

 チユキが念話を通して、ソフィアが世界樹に元気が無いと思う理由を伝えてくる。

「(そうみたいだね。って、ところで邪気ってどんなものなのかな?)」

 純粋に邪気がどんなものか気になった俺はチユキに邪気が何なのかを聞く事にする。

『マスターが質問してくれるなんて嬉しいですね。じゃあ、仕方ないので教えてあげましょう。邪気というのは邪な気で、誰か強大な存在のものが悪意を抱いていたり、悪さをしようとした時に出る負のオーラのことです。他にも気であると、瘴気がありますが、瘴気と邪気は少し違います。瘴気が自然発生の負のオーラとすると邪気というのは人為的な負のオーラと言えます』

 チユキが智慧神らしく、丁寧に分かりやすく邪気というものが何かを教えてくれる。

「この邪気というものが世界樹に影響しているっていうことだよね。そして、邪気が蔓延している以上、元凶がいるってことだね」

 人為的に発生する邪気が蔓延している以上、発生源が必ずいるはず。
 そして、ソフィアの話を信じるとすると、おそらく元凶というのはハイエルフの青年で間違いないだろう。

「(はい、そんな感じですね)」

 まぁ、おいおい原因は分かるだろうし、後にしよう。

 それにしても世界樹に元気が無いというものの、その壮大さには流石の俺も驚かされてしまう。

 いつしかまたお登りさんになってしまった俺たちはソフィアの言葉で我に帰る。

「……ごしゅじん、エルフの里に行きましょ……」

 いきなりエルフの里へと転移魔法を発動させることも出来たが、突然里に見知らぬ男が転移してきたら、里のエルフたちも困憊することが安易に予想されたので、俺はエルフの里から少しだけ離れたところへと転移する事にした。

 そして、転移してソフィアがエルフの里へと案内してくれる。

「……ごしゅじん、こっちこっち……」

 ソフィアが小さな体ながら必死に道案内をしてくれる。

 そんな姿に少しだけ保護者のような庇護欲をくすぐられながら、世界樹が聳え立つ方角へと歩くことおよそ5分。


「……ごしゅじん、もう着く……」

 ソフィアの到着の合図から僅か数秒、100メートル超の木々の先に、世界樹を取り囲むような円形の集落が広がっていた。

 周りの巨木を活用した木造りの構造物が立ち並んでいて、この街の村人だろうエルフが何人かいた。

 少し気になったのが、村になんだか不穏な空気が立ち込めているのであった。

 おそらく穏健派と過激派の内部対立によるものだろうが、子供の姿が見受けられない。

 内部対立のせいで、人が少なってしまっま道をソフィアと俺とアオバで抜けていく。

 アオバは終始興味深々の様子でぴょんぴょんと飛び跳ねながら進んでいく。

 村人の1人がソフィアの存在に気づくと、ソフィアが帰還したことが周りに伝播したようで、村がざわめき出す。

 ソフィア様がお帰りになられた
 ソフィア様の隣にいる人族は何者だ?

 という話が耳にかすかに触れる。

「ソフィア、なんだか俺は歓迎はされていないみたいだね?」
 
 疑念が俺に向いていることをソフィアに伝えると

「……ん、だいじょうぶ、なんとかなる……」

 ソフィアが俺に無表情でピースサインを向ける。

 ソフィアは不穏な空気を感じ取り、不安であるのにも関わらず、いつも通りの元気を見せようとしてくれる。

 そんなソフィアが愛おしかったので、俺は何気なくソフィアの頭を撫でてやる。

「……ごしゅじん、今はダメ、みんな見てる、こう見えても私は偉い……」

 ソフィアは少し頬を赤く染めながらも、威厳を保とうとしている。

 村の人に囲まれながらそんな団欒をしていると、ソフィアが帰ってきたことを聞いたのか、初老の男がソフィアの下へと駆けつけてきた。

「ソフィア様、ご無事で御座いましたか。本当によかったです。ソフィア様にもし何かあれば、この村は大変な危機に瀕してしまいます。本当によかったです」

 初老の男は本当にソフィアの身を案じていたようで、ソフィアが戻ったということを聞きつけてすぐ駆けつけたのか、かなり額を汗で濡らしていた。

「大袈裟ですよ、ハラス。私は大丈夫。けれどこんな時に村を空けてしまったのは本当に申し訳ない」

 目の前の初老の男はハラスというらしく、ソフィアがいない中、穏健派のリーダーを務めていた人物であるとのことだった。

「いえいえ、ソフィア様には何か策があって外へ飛び出したのでしょう……して、そちらの隣にいる人族はどちら様でしょうか?」

 ソフィアが無事に帰還した事に安堵したハラスは、ようやく興味を俺に向けてきた。

「紹介する、この人は私の伴侶となるご主人。だから丁重にもてなすように」

 ソフィアの瞳孔が少し揺めきながら、頬を軽く染めて、ハラスにそう告げる。


 一方、告げられたハラスはというと内容の真偽が掴めず、放心状態で

「……………………」

 ハラスの驚いた表情、人間で言ったら10歳くらい若返ったような顔をしている。

 そんな驚いて開いた口が塞がらないハラスの表情は面白かったが、俺はソフィアの伴侶?

 ソフィアの奴、何勝手に決めてるんだ?
 アオバもソフィアの発言が気に食わないのか、ソフィアに対して必死に飛びつき必死に抗議を示していた。

「おい、ソフィア。嘘はついちゃダメだ」

 勝手に進めようとするソフィアのおでこをコツンと小突くと、ソフィアは小突いたところを涙目になって抑えている。

 移り変わる状況に置いていかれていたハラスさんは

「して、そちら様はソフィア様とはどんな関係なのでしょうか?」

 ソフィアとの仲を見て、俺にも敬意を示してくれたのか、ハラスは丁寧な態度で俺にソフィアとの関係性を問う。

「俺とソフィアは別に特別な関係はない。そして、今回この村に来たのはソフィアの送迎と手助けの為かな?」

 俺は初老のハラスに対して、今回ソフィアをエルフの村へと連れてきた事と、この村に起こっている内部対立のヘルプとしてこの村に訪れたことを伝える。

 そう告げると

「……そうですか。あなた様がソフィア様を連れてきてくださったこと、そして手助けをしてくれるというのは有り難いです。ですが、どうにも人族がこの問題を解決できるとは思えません……」

 ハラスは非常に申し訳なさそうに、下を俯きながらそう俺に言う。

 その発言に対して、隣にいたソフィアはというと

「ハラスっ!! 失rr———」

 ハラスの発言に対して叱責を加えようとするが、それを俺は手で制す。

 ハラスの言っていることは別に間違っていない。

 エルフの村の内部対立の解決に、1人の男、しかも素性のわからない人族がどうにかできるようなものではない、と考えるのが普通である。

 つまりハラスは非常に現実的に物事を考えていて、それに対して俺の身を案じてそう告げてくれたのである。

「俺の身を案じてくれてありがとう、ハラス。どれだけ役に立てるかわからないけれど協力しても良いかな?」

 そう俺はハラスに告げる。

 そんな俺にハラスは仕方ないかという表情を浮かべ、

「……仕方ないです。ソフィア様がここまでお怒りになるということは何かあなたにはあるのでしょう。それにあなたの精霊の物凄く愛されているので、信じる事にしましょう」

 最後はハラスは俺に向けて微笑んでいた。




 そして、次の瞬間———


 ハラスの心臓に矢が貫通した。



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。

成長チートと全能神

ハーフ
ファンタジー
居眠り運転の車から20人の命を救った主人公,神代弘樹は実は全能神と魂が一緒だった。人々の命を救った彼は全能神の弟の全智神に成長チートをもらって伯爵の3男として転生する。成長チートと努力と知識と加護で最速で進化し無双する。 戦い、商業、政治、全てで彼は無双する!! ____________________________ 質問、誤字脱字など感想で教えてくださると嬉しいです。

伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました! 佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。 彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった... (...伶奈、ごめん...) 異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。 初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。 誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。 1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

処理中です...