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九月
修学旅行 6:逃げ出したあと
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襖を閉め、靴箱から靴を下ろした。少しでいい、冷静になるだけの時間が欲しかった。
良く磨かれた床を、足音を潜めて歩く。他の宴会場も、それぞれ盛り上がっているようだ。所詮高校生の集まりだ、はしゃいでいいと言われれば、ノンアルコールでどこまででもテンションを上げられる。点在するフロアライトに照らされた廊下は、喧噪を余所にしんとした雰囲気だ。中庭を見下ろせるサンルーム風の展望室で、足を止めた。観葉植物の間にセンス良く配された籐椅子のひとつに、人影があった。通り過ぎるかどうか少し迷ったのは、壁や天井を這う光が美しかったからだろう。床に窓枠の形の影を落として、白い光が差し込んでいる。
「……誰」
足を止めた氷川に、その人物が声をかけた。少し高い、よく知った声だ。
「橘くん、こんなところで何してるの?」
「氷川くんか。ちょっと、こっち座らない?」
穏やかな声に誘われて、氷川はふらふらと展望に足を踏み入れた。夢のように濃い影に足を取られそうになりながら、橘の隣の椅子に座る。窓の外ではよく手入れされた中庭が、人工的な光を浴びて木の葉を凍らせていた。
「ライトアップしてるんだ。綺麗だね」
「桜が咲いてる時期だったらもっと良かったね。今くらいって、ライトアップしてもそんなに特別感ないし」
言うほど残念そうでもなく、橘が身体を揺らす。木の葉がさやさやと揺れて、影が不規則にうごめいた。
「そうかな、これはこれで好きだよ。洋画みたいだ」
「ああ、ホラーっぽいね」
「意識しないようにしてたのに……」
幻想的な光景は、マインドセットによって不気味でおぞましい景色に変化する。橘の何気ない台詞に大打撃を受けて、氷川はそっと視線を空に逃がした。月はなく、星も見えない。夜空には薄雲が広がっている。
「それはごめん。ね、この後って予定ある?」
困ったように謝った橘が、くるりと椅子を回して氷川のほうに身体を向ける。質問の意図を掴み損ねて、氷川は首を捻った。
「お風呂入って寝るだけだよ」
大浴場の使用時間は、クラス毎に割り当てられている。一般客に配慮して、時間は夕食後だ。それが済んだら各部屋に戻り、点呼後は消灯の流れになる。特に誰かの部屋に遊びに行く約束もしてはいない。川口にお礼のアイスでも奢ろうという程度だ。
考えていたら、連鎖的に先程の事を思い出してしまった。咄嗟に出てきてしまったが、文月たちはどう思っただろう。戻るべきなのは分かっているが、それが怖い。橘は目を細めて、観察するように氷川を眺めていた。そして浅く頷く。
「じゃあさ、ちょっと抜け出そう」
囁くように橘が言う。声は軽やかに弾んで、表情も楽しげだ。氷川は頬を引きつらせた。
「夜間外出はまずいよ。それに、そろそろ戻らないと。橘くんだってそうでしょ」
「俺はなんとでもなるし、居づらいから出てきたんじゃないの?」
「まあ……ちょっとね」
事細かに説明はしたくないし、理解を得るのも難しい気がして誤魔化す。橘は生徒会の役員として、人前に立つことに慣れている雰囲気がある。皮肉でも僻みでもなく、彼には分からないだろう。橘は詮索することなく、甘やかに誘惑した。
「なんだったら先生に説明してあげる。しばらく時間置けば落ち着くよ。怖がらせたお詫びって事で、帰りに銭湯奢るからさ」
ね、と重ねて、乞うように下から見上げてくる。上体を傾けて覗き込む仕草は子供っぽくて可愛らしい。氷川は大きく息を吐いた。
「怒られたら橘くんに強引に誘われたって言うからね」
「うん。財布と携帯持ってるよね?」
「ある」
「なら、行こう」
するりと立ち上がった橘が、待ちきれない風に氷川を急かす。椅子から離れ、彼に続いてエレベーターのほうへ歩きながら、氷川はふと不安を覚えた。氷川も橘も制服のままだ。学校側は生徒の夜間外出は止めるように頼んでいるだろうし、場合によっては教師が玄関で待ち構えているかもしれない。そうなったら即座にゲームオーバーだ。
「フロントはどうする?」
「奥の手があるんだ」
答えて、橘は何故かエレベーターの上階行きボタンを押した。
あまり待たされることなく扉が開く。橘は階数のボタンを押して、上を見上げた。階数表示がひとつひとつ、上に切り替わっていく。浮力の気持ち悪さに、氷川は軽く眉を寄せた。
「どこ行くの?」
「ここに泊まるって話したら、知り合いが部屋取ってくれてね。そこで着替えてから出かけるよ」
「どんな知り合い? 俺の分の服なんてなくない?」
「地元の人。着替えは多分大丈夫」
「多分って」
目当ての階に着いた。一般客用のフロアは静かだ。上品な佇まいに、本来学生の群れがいるのが違和感のある場所なのだと思い出す。決して安い宿泊施設ではない。
橘は迷いなく廊下を進み、ひとつの部屋の前で立ち止まるとスマートフォンを操作した。数回コールする分だけ沈黙を挟んで、目を伏せた。
「もしもし、向井さん? 橘ですけど、部屋の前に着きました……はい、友達いるんで……」
言葉の途中で、がちゃりと解錠音がして扉が開かれた。
「祐也、久しぶりだな!」
胸元に挑発的な英字がプリントされたTシャツを着た背の高い人物が、橘の頭をがしがしと撫でる。エクステが絡まりそうだ。橘は丁寧に腕を退けて、軽く会釈した。
「どうも、わざわざありがとうございます」
「いいよ、いいよ。楽しみにしてたからな。そっちがお友達? まあ入って」
「初めまして。いきなりすみません、お邪魔します」
「礼儀正しい良い子だね」
向井というらしい人物は、愉快そうに頬を緩める。彼はドアマンのように扉を押さえ、片腕で室内を示した。
シングルの部屋は、ホテルとは思えないほど雑然としていた。散らかっているのは洋服だ。呆然と立ち尽くす氷川を余所に、橘は洋服を少し避けてスペースを作った。戻ってきた向井に、氷川を示す。
「向井さん、友達の氷川泰弘くん。氷川くん、この人は俺がお世話になった人で、向井辰彦さん」
大学生くらいだろうか。明るい茶色の髪は少し長めで、あまり真面目そうには見えない。
「初めまして、いつも橘くんにはお世話になってます」
「うん、初めまして。まあ挨拶とか積もる話しは後でね。今は服選んじゃって」
「俺も借りていいんですか?」
「祐也が連れてきたってことは、一緒に行くんだろ? だったら着替えいるじゃん。ほらほら、好きなの選んでいいからね」
急かされて、ベッドの上や洋服掛けに溢れかえる衣類に向き直った。橘は既に物色している。
「祐也よりちょっと背丈あるっぽいけど、平気だよね」
「ほとんど一緒ですよ! もう、相変わらずパンクな服ばっかり……氷川くん、好みじゃないだろうけど適当に選んでね」
叫んだ橘がぶちぶちと文句を言いながら、Tシャツをラックに戻す。卑猥なプリントがされていたように見えたが、気のせいだろうか。悩んでいる氷川の視線の先で、橘が次に取ったTシャツには、血飛沫が飛び散っていた。
猟奇的だ。
「橘くん、実は不良だったの?」
派手な人に、派手な服、そして当人の派手な髪。つい訊ねてしまった氷川に、橘が苦笑した。
「どう思う?」
「不良だと思ったことはなかったけど」
しかし、修学旅行の宿泊先を抜け出すのは立派な不良行為だ。
「氷川くんの定義にも依るかな。少なくとも何か盗んだり壊したり、人を殴ったり、改造バイクを乗り回したり、ヤバい薬を使ったり売ったりはしてない。煙草もお酒もしない。ただ、まあ、ライブハウスに入り浸るのが不良だって言われたら、価値観や判断基準は人それぞれだねとしか言えない」
「ライブハウス?」
「お二人さん、ちゃっちゃと着替えてくんないかな? 急がないと遅くなるよ。話は道々でいいっしょ」
完全に手が止まってしまった橘と氷川を、向井がのんびりした口調で急かす。はいはいと答えて、橘がばさりと制服のシャツを脱ぎ捨てた。タンクトップの上に、襟ぐりの大きく開いたTシャツを着る。ボトムスはスキニー。寂しい首回りにアクセサリーを追加する。氷川は髪を掻き回し、白いTシャツを手に取った。髑髏とナイフと羽を使った図案が大きくプリントされている。
「失礼します」
趣味を疑われそうなTシャツの上に、薄手の黒いカーディガンを羽織る。デニムにどんな恨みがあるのかと思うほどダメージ加工されたジーンズに足を入れた。向井がシルバーアクセサリー三つと、ハットを手渡してくれる。橘はキャップを指に引っかけて、ベッドに腰掛けていた。
「変装だね」
「付け焼き刃だけどね。さて、行きますか」
氷川の感想に可笑しそうな笑みを漏らし、橘が勢いよく立ち上がった。先陣を切って進む彼に続いて、ホテルの廊下を静かに歩く。フロントにいってらっしゃいませと送り出され、初秋の夜へと這い出した。昼間の熱気が嘘のようなひんやりとした夜気が頬を撫でる。向井に連れて行かれた駐車場に停まっていたのは、外見に似合わない白のステーションワゴンだった。
「さあ乗って。祐也、着くまでに選んどけよ」
「うん。氷川くんは助手席乗って」
「……お邪魔します」
使い込まれた雰囲気の車の中は、煙草の匂いがした。喫煙者迫害とまで言われるこのご時世に、この車の持ち主は煙草を止めていないらしい。
良く磨かれた床を、足音を潜めて歩く。他の宴会場も、それぞれ盛り上がっているようだ。所詮高校生の集まりだ、はしゃいでいいと言われれば、ノンアルコールでどこまででもテンションを上げられる。点在するフロアライトに照らされた廊下は、喧噪を余所にしんとした雰囲気だ。中庭を見下ろせるサンルーム風の展望室で、足を止めた。観葉植物の間にセンス良く配された籐椅子のひとつに、人影があった。通り過ぎるかどうか少し迷ったのは、壁や天井を這う光が美しかったからだろう。床に窓枠の形の影を落として、白い光が差し込んでいる。
「……誰」
足を止めた氷川に、その人物が声をかけた。少し高い、よく知った声だ。
「橘くん、こんなところで何してるの?」
「氷川くんか。ちょっと、こっち座らない?」
穏やかな声に誘われて、氷川はふらふらと展望に足を踏み入れた。夢のように濃い影に足を取られそうになりながら、橘の隣の椅子に座る。窓の外ではよく手入れされた中庭が、人工的な光を浴びて木の葉を凍らせていた。
「ライトアップしてるんだ。綺麗だね」
「桜が咲いてる時期だったらもっと良かったね。今くらいって、ライトアップしてもそんなに特別感ないし」
言うほど残念そうでもなく、橘が身体を揺らす。木の葉がさやさやと揺れて、影が不規則にうごめいた。
「そうかな、これはこれで好きだよ。洋画みたいだ」
「ああ、ホラーっぽいね」
「意識しないようにしてたのに……」
幻想的な光景は、マインドセットによって不気味でおぞましい景色に変化する。橘の何気ない台詞に大打撃を受けて、氷川はそっと視線を空に逃がした。月はなく、星も見えない。夜空には薄雲が広がっている。
「それはごめん。ね、この後って予定ある?」
困ったように謝った橘が、くるりと椅子を回して氷川のほうに身体を向ける。質問の意図を掴み損ねて、氷川は首を捻った。
「お風呂入って寝るだけだよ」
大浴場の使用時間は、クラス毎に割り当てられている。一般客に配慮して、時間は夕食後だ。それが済んだら各部屋に戻り、点呼後は消灯の流れになる。特に誰かの部屋に遊びに行く約束もしてはいない。川口にお礼のアイスでも奢ろうという程度だ。
考えていたら、連鎖的に先程の事を思い出してしまった。咄嗟に出てきてしまったが、文月たちはどう思っただろう。戻るべきなのは分かっているが、それが怖い。橘は目を細めて、観察するように氷川を眺めていた。そして浅く頷く。
「じゃあさ、ちょっと抜け出そう」
囁くように橘が言う。声は軽やかに弾んで、表情も楽しげだ。氷川は頬を引きつらせた。
「夜間外出はまずいよ。それに、そろそろ戻らないと。橘くんだってそうでしょ」
「俺はなんとでもなるし、居づらいから出てきたんじゃないの?」
「まあ……ちょっとね」
事細かに説明はしたくないし、理解を得るのも難しい気がして誤魔化す。橘は生徒会の役員として、人前に立つことに慣れている雰囲気がある。皮肉でも僻みでもなく、彼には分からないだろう。橘は詮索することなく、甘やかに誘惑した。
「なんだったら先生に説明してあげる。しばらく時間置けば落ち着くよ。怖がらせたお詫びって事で、帰りに銭湯奢るからさ」
ね、と重ねて、乞うように下から見上げてくる。上体を傾けて覗き込む仕草は子供っぽくて可愛らしい。氷川は大きく息を吐いた。
「怒られたら橘くんに強引に誘われたって言うからね」
「うん。財布と携帯持ってるよね?」
「ある」
「なら、行こう」
するりと立ち上がった橘が、待ちきれない風に氷川を急かす。椅子から離れ、彼に続いてエレベーターのほうへ歩きながら、氷川はふと不安を覚えた。氷川も橘も制服のままだ。学校側は生徒の夜間外出は止めるように頼んでいるだろうし、場合によっては教師が玄関で待ち構えているかもしれない。そうなったら即座にゲームオーバーだ。
「フロントはどうする?」
「奥の手があるんだ」
答えて、橘は何故かエレベーターの上階行きボタンを押した。
あまり待たされることなく扉が開く。橘は階数のボタンを押して、上を見上げた。階数表示がひとつひとつ、上に切り替わっていく。浮力の気持ち悪さに、氷川は軽く眉を寄せた。
「どこ行くの?」
「ここに泊まるって話したら、知り合いが部屋取ってくれてね。そこで着替えてから出かけるよ」
「どんな知り合い? 俺の分の服なんてなくない?」
「地元の人。着替えは多分大丈夫」
「多分って」
目当ての階に着いた。一般客用のフロアは静かだ。上品な佇まいに、本来学生の群れがいるのが違和感のある場所なのだと思い出す。決して安い宿泊施設ではない。
橘は迷いなく廊下を進み、ひとつの部屋の前で立ち止まるとスマートフォンを操作した。数回コールする分だけ沈黙を挟んで、目を伏せた。
「もしもし、向井さん? 橘ですけど、部屋の前に着きました……はい、友達いるんで……」
言葉の途中で、がちゃりと解錠音がして扉が開かれた。
「祐也、久しぶりだな!」
胸元に挑発的な英字がプリントされたTシャツを着た背の高い人物が、橘の頭をがしがしと撫でる。エクステが絡まりそうだ。橘は丁寧に腕を退けて、軽く会釈した。
「どうも、わざわざありがとうございます」
「いいよ、いいよ。楽しみにしてたからな。そっちがお友達? まあ入って」
「初めまして。いきなりすみません、お邪魔します」
「礼儀正しい良い子だね」
向井というらしい人物は、愉快そうに頬を緩める。彼はドアマンのように扉を押さえ、片腕で室内を示した。
シングルの部屋は、ホテルとは思えないほど雑然としていた。散らかっているのは洋服だ。呆然と立ち尽くす氷川を余所に、橘は洋服を少し避けてスペースを作った。戻ってきた向井に、氷川を示す。
「向井さん、友達の氷川泰弘くん。氷川くん、この人は俺がお世話になった人で、向井辰彦さん」
大学生くらいだろうか。明るい茶色の髪は少し長めで、あまり真面目そうには見えない。
「初めまして、いつも橘くんにはお世話になってます」
「うん、初めまして。まあ挨拶とか積もる話しは後でね。今は服選んじゃって」
「俺も借りていいんですか?」
「祐也が連れてきたってことは、一緒に行くんだろ? だったら着替えいるじゃん。ほらほら、好きなの選んでいいからね」
急かされて、ベッドの上や洋服掛けに溢れかえる衣類に向き直った。橘は既に物色している。
「祐也よりちょっと背丈あるっぽいけど、平気だよね」
「ほとんど一緒ですよ! もう、相変わらずパンクな服ばっかり……氷川くん、好みじゃないだろうけど適当に選んでね」
叫んだ橘がぶちぶちと文句を言いながら、Tシャツをラックに戻す。卑猥なプリントがされていたように見えたが、気のせいだろうか。悩んでいる氷川の視線の先で、橘が次に取ったTシャツには、血飛沫が飛び散っていた。
猟奇的だ。
「橘くん、実は不良だったの?」
派手な人に、派手な服、そして当人の派手な髪。つい訊ねてしまった氷川に、橘が苦笑した。
「どう思う?」
「不良だと思ったことはなかったけど」
しかし、修学旅行の宿泊先を抜け出すのは立派な不良行為だ。
「氷川くんの定義にも依るかな。少なくとも何か盗んだり壊したり、人を殴ったり、改造バイクを乗り回したり、ヤバい薬を使ったり売ったりはしてない。煙草もお酒もしない。ただ、まあ、ライブハウスに入り浸るのが不良だって言われたら、価値観や判断基準は人それぞれだねとしか言えない」
「ライブハウス?」
「お二人さん、ちゃっちゃと着替えてくんないかな? 急がないと遅くなるよ。話は道々でいいっしょ」
完全に手が止まってしまった橘と氷川を、向井がのんびりした口調で急かす。はいはいと答えて、橘がばさりと制服のシャツを脱ぎ捨てた。タンクトップの上に、襟ぐりの大きく開いたTシャツを着る。ボトムスはスキニー。寂しい首回りにアクセサリーを追加する。氷川は髪を掻き回し、白いTシャツを手に取った。髑髏とナイフと羽を使った図案が大きくプリントされている。
「失礼します」
趣味を疑われそうなTシャツの上に、薄手の黒いカーディガンを羽織る。デニムにどんな恨みがあるのかと思うほどダメージ加工されたジーンズに足を入れた。向井がシルバーアクセサリー三つと、ハットを手渡してくれる。橘はキャップを指に引っかけて、ベッドに腰掛けていた。
「変装だね」
「付け焼き刃だけどね。さて、行きますか」
氷川の感想に可笑しそうな笑みを漏らし、橘が勢いよく立ち上がった。先陣を切って進む彼に続いて、ホテルの廊下を静かに歩く。フロントにいってらっしゃいませと送り出され、初秋の夜へと這い出した。昼間の熱気が嘘のようなひんやりとした夜気が頬を撫でる。向井に連れて行かれた駐車場に停まっていたのは、外見に似合わない白のステーションワゴンだった。
「さあ乗って。祐也、着くまでに選んどけよ」
「うん。氷川くんは助手席乗って」
「……お邪魔します」
使い込まれた雰囲気の車の中は、煙草の匂いがした。喫煙者迫害とまで言われるこのご時世に、この車の持ち主は煙草を止めていないらしい。
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