【連載小説】僕の好きなこと

遠藤良二

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11話 頑張ったご褒美と楽しい執筆

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 目覚めたのは夕食時の母が僕を階下から呼ぶ声だった。「哲太ー! ご飯よー!」 返事はせずに、体を起こした。スマホのランプがピカピカ点滅している。画面が真っ暗なので、点灯させた。画面が見えるようになり、LINEが1件きていた。
<こんにちは! 哲太君。覚えてる? あたしのこと。杉山裕子すぎやまゆうこよ> 
 もちろん、覚えている。僕が高校のころ好きだった同級生の女の子。それにLINEに入っているから、忘れるわけがない。とりあえず、夕ご飯を食べてからゆっくり返信することにした。

 キッチンに行ってみると母は、
「今夜は、鶏の唐揚げよ。がんばったからご褒美にね。だから、明日も頑張りなさいよ」 
 僕は欠伸をしながら椅子に座った。父はキッチンで既に晩酌をしている。
「どうだった? 新しい仕事は」 
 父に話しかけられた。
「うん、疲れたけどがんばろうと思ってる」
「そうか、がんばれよ」 
 僕は頷き、母が茶碗にご飯をよそって持ってきてくれた。
「お腹空いたでしょ? たくさん食べなさい」 
 ありがたい言葉だ。僕は身長は高いけれど、かなり痩せている。だから、体力がないのかもしれない。もう少し太ればいいのだけれど、食べても食べても太らない。なぜなんだ、そういう体質なのかな。両親は割と太めなのに。でも、祖父は僕と同じく、背が高くて細い。祖父の遺伝子を受け継いだのか。

 夕食も美味しくいただいた後、小説を書こうと思い、自分の部屋からUSBメモリーを持ってきて書斎に向かった。一応、父にもパソコンを使うことを言った。すると、「おー、どんどん使え」 言っていたので、パソコンを起動させた。目標は500文字にしよう、それ以上書けたら書こう。そうすることにした。

 約1時間半後、目標に達した。「よし、今日はここまで。また明日にするか」 と呟いた。地道に書いていこうと考えている。完結するまでやめないでがんばる。父にも言ってある、完結するまでやめないと。すると、
「当たり前だ!」
 一蹴されてしまった。そんな言い方しなくてもいいのにと思った。父はいつもこういう強い言い方をしてくる。あまり感じはよくない。母はどう思っているのだろう。今度、父がいない時訊いてみよう。

 疲れてはいるけれど、仕事をしたという達成感はある。父のコネで入れさせてもらった会社はそういう気持ちにはならなかった。なぜだろう。初めてやる仕事だけど、今の方がわかりやすいし面白味がある。続けられそう。 小説が読みたくなってきた。本屋に行くか。そう思い、スマホと財布を持ち母から車の鍵を借りて家を出た。いずれ、自分の車を買おう。いちいち親に言うのも面倒だし、自由にならないから。

                                         つづく……
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