【連載小説】僕の好きなこと

遠藤良二

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2話 チャレンジ

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 途中まで父から借りた「自己啓発本」を読んだ。なるほど、と思う部分とそう思わない部分もあった。確かに父の言うように「参考までに」読む本だと実感した。

 途中だけど、父に返した。「もう読んだのか?」 僕は少し気まづかったが、「うん。感想は父さんの言うように、参考までに読む本だと思ったよ」 すると父は目を光らせて、「だろ? やっぱりそう思うよな」 僕はうなずいた。

 今の時刻は16時過ぎ。父は書斎に行ってパソコンを起動させたようだ。何をするんだろう。カチカチとキーボードの音が鳴りだした。仕事をしているのかな? 書斎に行ってみて父に話しかけた。「父さん、何してるの?」 好奇心の強い僕は訊いた。「気になるか?」 何度も頭を振りながら、「なるなる!」 言った。「そうか、じゃあ教えてやる。実はな小説を書いてみようと思ってな」 その話を聞いて、「小説? 父さん書いたことあるの?」 フフン、と鼻を鳴らして笑った。「実はな、若い時書いてたんだ。知らなかっただろ?」「うん、知らなかった。凄いね!」 僕は父を感心した。「凄いだろ。賞はとったことはないが、だいぶ評判は良かったぞ。しかも、原稿用紙で書いているから、今でもそれはあるんだ」 僕は、「読ませてよ」 そう言うと、「駄目だ。新しいのを書くから、それを読んでくれ」 と言った。「何で駄目なの?」 訊くと父は、「途中までしか書いてないからな」 言った。なるほど、と思った。「お前も書いてみないか? 楽しいぞ」 楽しい、に反応した。「それなら書いてみたい。パソコンは交代で使うの?」「そうだな、1台しかないから。俺が書いたら書くといい」「わかった」 言い、質問を続けた。「どんな内容なの?」「そうだな、ヒューマンドラマかな」「ほお、そうなんだ。僕に書けるかな」 父は、「まずは、好きなジャンルの小説を読んだほうがいいぞ。書くのはそれからだ。中古屋に古本もたくさんあるから、行ってみるといい」 そう言うと僕は、「じゃあ、今から古本屋に行こうかな」 父は苦笑いを浮かべ、「行動が早いな」 と言ってもらえた。「だって、早く書いてみたいからね」「そうか、チャレンジ精神があって偉いぞ!」

 褒められて僕は嬉しくなった。父が執筆している間、暇になったので母に話しかけた。「母さん。僕ね、父さんのパソコンで小説書いてみることにした」 母は笑みを浮かべ、「それはいいことね」 と言ってくれた。

                            つづく……
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