【連載小説】僕の好きなこと

遠藤良二

文字の大きさ
上 下
1 / 10

1話 本

しおりを挟む
 僕は本が大好きだ。恋愛小説やミステリー小説が特に好き。その他には図鑑も好き。生物のそれが好き。僕が幼少のころ、両親はたくさん買ってくれた。

 僕の名前は石垣哲太いしがきてった、23歳。職業は現場代理人。父のコネでこの会社に入れてもらった。だから辞めたくても辞められない。この仕事は僕には合わない。気性の荒い人たちばかりだし、工事現場の合材ごうざい(アスファルト)の計算が難しい。

 みんなからは、哲太と呼ばれている。大卒だけれど、僕が働けるような仕事がない。自分で言うのもなんだけど、頭はいい。でも、人間関係は苦手。仕事をする上で1番大切なことなんだけれど。

 今日は日曜日。月曜日から土曜日まで仕事。僕は仕事の要領が悪いせいか、いつも残業している。正直、疲れすぎて限界が近い。続けられるだろうか不安。辞めたら父の顔に泥を塗ることになるからそれはまずいと思った。だから、我慢我慢の日々。ストレスも溜まり放題。だから日曜日に大好きな読書をして解消している。

 父も読書は好きみたい。小説や自己啓発本などを読んでいる。僕は思うことがある。自己啓発本って作者の考え方だから、それに自分を合わせる必要はないと思う。それを父に話したら、「あくまでも参考までに読んでるだけだ。無理矢理合わせることはしない」 と言っていた。 なるほどな、そういう考えかたなら読んでみるかな。僕はパソコンを開き、古本屋のサイトを観てみた。検索してみたら様々な啓発本が出てきた。その中に父が読んでいるものと同じ本を見つけた。これなら買うんじゃなく、父のを借りた方がお金がかからない。なので、父に借りれるか訊いてみよう。

「父さん」「何だ?」 父は読書中なので、邪魔されるとイライラするようだ。「父さんの持ってる啓発本貸してくれない? 同じ本がネットにあって」 そう言うと父は眉間にしわを寄せた。「汚すなよ、貸すのはいいが」 僕は笑ってしまった。「大丈夫だって」「ならいいが」 父は書斎に向かった。僕の家は父がやり手の事業主で、新築したくらいだから結構儲けていると思う。

 書斎から戻ってきた父は貸してくれた。「ありがとう! 今、読んでる小説読み終わったら読むわ。それでもいいしょ?」 父は普段からあまり笑わないがこの時は僕と話して嬉しかったのか、笑顔を浮かべていた。「読んだ感想も教えろよ。貸してやったんだから」「うん、わかったよ」 そして、父はまた読書を再開した。

                                           つづく……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

【短編集】月のふたり

蒼崎 旅雨
現代文学
「月の裏側にはね、二人が住んでるの」 月の裏側には何がある? を始めとした短編集。 月の重力くらいのふんわりとした夢想の物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

処理中です...