様々な性

遠藤良二

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第1章 様々な出会い

7話 病名がついてからの思い

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 まず、『統合失調症』という病名がついたので、不安は軽減された。
 今日は二回目の診察日。三日分、服薬して幻聴は治まらないが気分的に少し違うような気がする。ゲイだけれど、友人の有馬亮にメールを送ってみた。[病院行って来たさ]という内容で。今日は金曜日で今の時刻は、午前九時三十分頃。スマートフォンを見て確認した。亮君は今、きっと仕事中だろう。ちなみに受診の予約は十時。前回、会計の時に次回の受診日と時間を書いた紙を診察券、保険証と一緒にもらった。

 スマートフォンはマナーモードにしてあるのでメールが来ていないかポケットから出して確認した。携帯電話の会社から一件、来ていたくらいであとはどこからも来ていない。友人たちはそんなに暇ではないようだ。仕事をしていれば当然だ。

 病院の壁掛け時計を見ると、十時を過ぎていた。もう、初診ではないから前回ほど待たないと思うけれど、どうだろう。

 それから、十五分くらい待ってから名前を呼ばれた。僕は早く呼ばれて少し気分がいい。中待合でも十分ほど待ったくらいで、すぐに診察室に入れた。診察も約二十分で終わった。薬の調整をすることと、次回は一週間後が受診日ということを医師と看護師は言っていた。あとは、症状などの話しを聞いてもらった。

 調剤薬局では三十分くらい待って薬ができた。待ち時間が病院でも薬局でも前回より短く、驚いた。初診じゃないだけでこんなに違うとは。

 それから、自宅に帰ろうと病院から出ようとした時、ぱらぱらと雨が降ってきた。空を見上げると、どす黒い雲が覆っていた。まるで天から悪魔が舞い下りてくるかのようだ。車の中に入ると雨は更に強くなった。まるで、空の神様がタイミングを見計らったようだと思った。

 自宅に着き、相変わらず土砂降り。そのまま車から降りて結構濡れはしたものの、素早く家の玄関に入った。素早くと言っても、忍者のようには出来ないけれど。

 自室の置時計を見ると正午だった。亮君からメールがきていないか確認した。すると、一件来ていた。早速開いてみると、亮君からだった。
[病院行ったんだね。どうだった?]
[通話していい?]
送信すると、
[いいよー]
と、きたので電話をかけた。
「もしもし、亮君。久しぶり」
彼は嬉しそうな声で、
『久しぶり!剛輝君。病院どうだった?』
亮君はゲイだからなのか、それとも根っから優しい人なのか、僕に対してはいつも優しい口調だ。まるで、恋人に話しかけるように。
「それが、病気だった」
『えっ、そうなの? 何ていう病気?』
亮君は偏見のない人だと思ったので、
「統合失調症っていう心の病だよ」
『あら、そうなの。んで、今の調子は?』
「まあ、こういう言い方は変かもしれないけれど、病名がついて一段落した感じかな。調子は良いとはいえないけど」
彼は感心するように、
『へぇ。そういうこともあるんだねぇ』
と、言った。
「亮君、時間大丈夫?」
『あ、あと十五分しかない。お弁当食べちゃうね』
「うん、ありがとう。悪いね」
言ってから電話を切った。
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