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24話 未来の素人小説家
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今日も俺は調子が悪い。明日は麻沙美の就職が決まったのでそのお祝いのため、食事に3人で行く予定。調子を良くしないと。せっかくのお祝いだから。それと共に彼女に言おうとしていることがある。それを明日言おうと思っている。
ネットで調べたら冬季うつ、という病名らしい。冬になると日照時間が短くなることが原因と書いてある。医者に言われた訳じゃないから本当のところは分からないが。それにしても、気持ちが沈む。何もしたくない。こんなんじゃ、こんなんじゃだめだ! 気合いだ! 気合。俺は自分の気持ちを奮い立たせて出勤した。
今は16時過ぎ。無理がたたったのか、朝より具合いが悪い……。どうした、俺。病院の受付は15時まで。明日のために今日早退して病院に行けば良かった。失敗した。明日は仕事が休みだからまだ調子悪いようなら受診しよう。
今日は何とか仕事をこなして、18時頃退勤した。副店長の福原さんにも心配された。店長、顔色悪いですよ、大丈夫ですか、と。俺は、大丈夫だと強がった。バレているだろうけれど。
自宅に着いて真っ先にベッドに向かい、横になった。辛い、辛過ぎる。これじゃ、明日の食事会無理……かも……。
気付いた時は夜中の0時きっかりだった。睡眠薬も飲まずに数時間寝た計算になる。相変わらず気分は沈んでいる。
「喉が渇いた……」
ふと、口に出していた。俺は台所に行き、蛇口をひねりコップに水を注いだ。ゴクリゴクリと喉を通る音が聞こえる。コップをシンクの中に置き、床に横になった。体が怠い……。まるで、大きな鉄球を抱えているかのようだ。これは、病院へ行かないと駄目かもしれない。食事会、どうなるんだ。何とか体を起こし、ベッドまで這って歩いた。めくってある布団の上に何とか横になった。もう12月だからストーブを焚いていない家の中はまるで冷蔵庫の中にいるようだ。毛布と布団が裏表になった状態で体にかけた。目をつむって30分くらい経つが今度は目が冴えてしまって眠れない。神経が尖っているように感じる。眠剤のことが頭に浮かんだ。飲まないと。面倒だが、テレビの上に垂れ下がっているお薬カレンダーから寝る前の薬を取って口を開けた。再び台所に行き、勢いよく水を出した。コップに注ぎ薬を口に入れた。口に水を沢山含み、飲み込んだ。だが気管に入ったのかむせた。その拍子に薬ごとシンクの中に吐き出した。俺は自分の失態に情けなくなり、
「畜生!」
と、怒鳴った。独り寂しく俺は床に膝をついて、泣きじゃくった。
(こんなんじゃ、大事な女を守ることなんて出来ない!)
そう思った。
30分程シンクの傍であぐらを掻いていた。少し気持ちが落ち着いてきた。俺は、ふーっと息を吐いた。立ち上がり冷蔵庫に向かった。中から350ミリのビールを二本取り出した。俺はテレビの電源を付けその前にどっかと腰を下ろした。そして、ビールを一本置きもう一本の口を開けた。グビグビと水を飲むような感じで飲んだ。調子が悪いせいか決して美味しいとは言えない。でも、酔いたかった。逃げたかったのだ。一本目は一気に空けて、二本目は苦く感じたのでゆっくり飲んだ。俺はゲフっとゲップをした。ビールの味がした。臭い。テレビもつけてはいるが見てはいない。
何だか笑えてきた。俺は何をやっているんだ。ちょっと調子が悪かっただけじゃないか。
ビールを飲んで気が大きくなったからか自分のやっていることがバカバカしくなってきた。
俺は何てちっぽけな人間なんだ。まるで、地球の外側から自分を見ているような感覚だった。
でも、明日は病院に行って、今日あったことを話して、夜は食事会に出る。そう思うことが出来た。ビールを飲んで頭の中を整理出来るとは意外だった。普通は逆じゃないかと思うが。
小説の執筆のことが気になった。暫く書いていない。書くかな。そう思い、パソコンの電源ボタンを押した。前の話を読み返す。思い出してきた。俺はキーボードを叩き始めた。あっという間に一時間が経過した。時刻はパソコンの時計を見ると1:15と表示されている。
眠剤は今夜はいいや。パソコンのブルーライトのせいで目が冴えてしまった。それでなくても眠くないというのに。寝ない覚悟を決めた。病気に良くないのは百も承知だけれど。
朝5時30分頃になり、自然と眠気がきた。今なら少しは眠れるかな、と思い小説を保存しパソコンの電源を落とした。
その後、ベッドに横になった。すると何故か眠気が覚めた。何でだ? 不思議。疲れもあるからこのまま横になっていよう。なので、俺は目をつむった。
30分くらい横になったがやはり眠れない。明日は仕事だからちゃんと睡眠薬飲んで寝よう。小説を書いたら好きなことをしたお陰か、若干調子が良くなった。俺は眠れないのに横になっているのが嫌になったので起きることにした。
(少しお腹空いたな)
そう思ったので台所の引き出しを開けるとかりんとうが入っていた。いつ買ったか覚えていない。袋を裏返して日付を見ると、まだ大丈夫のようだ。半分ほど入ったそれを持ってパソコンの前に座った。口に含んでかじると、少し湿気っていた。でも、甘くて美味しい。そのお陰か俺の心は落ち着いてきた。
「ふー」
と、深呼吸した。再度、パソコンの画面を見た。続きを書くか。未来の素人作家。
ネットで調べたら冬季うつ、という病名らしい。冬になると日照時間が短くなることが原因と書いてある。医者に言われた訳じゃないから本当のところは分からないが。それにしても、気持ちが沈む。何もしたくない。こんなんじゃ、こんなんじゃだめだ! 気合いだ! 気合。俺は自分の気持ちを奮い立たせて出勤した。
今は16時過ぎ。無理がたたったのか、朝より具合いが悪い……。どうした、俺。病院の受付は15時まで。明日のために今日早退して病院に行けば良かった。失敗した。明日は仕事が休みだからまだ調子悪いようなら受診しよう。
今日は何とか仕事をこなして、18時頃退勤した。副店長の福原さんにも心配された。店長、顔色悪いですよ、大丈夫ですか、と。俺は、大丈夫だと強がった。バレているだろうけれど。
自宅に着いて真っ先にベッドに向かい、横になった。辛い、辛過ぎる。これじゃ、明日の食事会無理……かも……。
気付いた時は夜中の0時きっかりだった。睡眠薬も飲まずに数時間寝た計算になる。相変わらず気分は沈んでいる。
「喉が渇いた……」
ふと、口に出していた。俺は台所に行き、蛇口をひねりコップに水を注いだ。ゴクリゴクリと喉を通る音が聞こえる。コップをシンクの中に置き、床に横になった。体が怠い……。まるで、大きな鉄球を抱えているかのようだ。これは、病院へ行かないと駄目かもしれない。食事会、どうなるんだ。何とか体を起こし、ベッドまで這って歩いた。めくってある布団の上に何とか横になった。もう12月だからストーブを焚いていない家の中はまるで冷蔵庫の中にいるようだ。毛布と布団が裏表になった状態で体にかけた。目をつむって30分くらい経つが今度は目が冴えてしまって眠れない。神経が尖っているように感じる。眠剤のことが頭に浮かんだ。飲まないと。面倒だが、テレビの上に垂れ下がっているお薬カレンダーから寝る前の薬を取って口を開けた。再び台所に行き、勢いよく水を出した。コップに注ぎ薬を口に入れた。口に水を沢山含み、飲み込んだ。だが気管に入ったのかむせた。その拍子に薬ごとシンクの中に吐き出した。俺は自分の失態に情けなくなり、
「畜生!」
と、怒鳴った。独り寂しく俺は床に膝をついて、泣きじゃくった。
(こんなんじゃ、大事な女を守ることなんて出来ない!)
そう思った。
30分程シンクの傍であぐらを掻いていた。少し気持ちが落ち着いてきた。俺は、ふーっと息を吐いた。立ち上がり冷蔵庫に向かった。中から350ミリのビールを二本取り出した。俺はテレビの電源を付けその前にどっかと腰を下ろした。そして、ビールを一本置きもう一本の口を開けた。グビグビと水を飲むような感じで飲んだ。調子が悪いせいか決して美味しいとは言えない。でも、酔いたかった。逃げたかったのだ。一本目は一気に空けて、二本目は苦く感じたのでゆっくり飲んだ。俺はゲフっとゲップをした。ビールの味がした。臭い。テレビもつけてはいるが見てはいない。
何だか笑えてきた。俺は何をやっているんだ。ちょっと調子が悪かっただけじゃないか。
ビールを飲んで気が大きくなったからか自分のやっていることがバカバカしくなってきた。
俺は何てちっぽけな人間なんだ。まるで、地球の外側から自分を見ているような感覚だった。
でも、明日は病院に行って、今日あったことを話して、夜は食事会に出る。そう思うことが出来た。ビールを飲んで頭の中を整理出来るとは意外だった。普通は逆じゃないかと思うが。
小説の執筆のことが気になった。暫く書いていない。書くかな。そう思い、パソコンの電源ボタンを押した。前の話を読み返す。思い出してきた。俺はキーボードを叩き始めた。あっという間に一時間が経過した。時刻はパソコンの時計を見ると1:15と表示されている。
眠剤は今夜はいいや。パソコンのブルーライトのせいで目が冴えてしまった。それでなくても眠くないというのに。寝ない覚悟を決めた。病気に良くないのは百も承知だけれど。
朝5時30分頃になり、自然と眠気がきた。今なら少しは眠れるかな、と思い小説を保存しパソコンの電源を落とした。
その後、ベッドに横になった。すると何故か眠気が覚めた。何でだ? 不思議。疲れもあるからこのまま横になっていよう。なので、俺は目をつむった。
30分くらい横になったがやはり眠れない。明日は仕事だからちゃんと睡眠薬飲んで寝よう。小説を書いたら好きなことをしたお陰か、若干調子が良くなった。俺は眠れないのに横になっているのが嫌になったので起きることにした。
(少しお腹空いたな)
そう思ったので台所の引き出しを開けるとかりんとうが入っていた。いつ買ったか覚えていない。袋を裏返して日付を見ると、まだ大丈夫のようだ。半分ほど入ったそれを持ってパソコンの前に座った。口に含んでかじると、少し湿気っていた。でも、甘くて美味しい。そのお陰か俺の心は落ち着いてきた。
「ふー」
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