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5話 父に対する思いと、彼女とのLINE
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彼女の名前は谷山郁(たにやま いく)。大学の頃に知り合って僕が好きになった相手。同級生。谷山郁は背が低い。目が細く鼻が高い。細身。高校で国語教師をしているはず。
どうせカミングアウトしたってフラれるだろうと思って連絡すらとっていなかった。でも電話で母に打ち明けたらアタックしてみたらは? と言われその気になった。
僕はLINEを久しぶりに送った。内容は、
<こんにちは! 谷山さん。久しぶりだね。元気にしてる?>
というもの。
でも、今は夜10時過ぎ。こんな時間に普段連絡しないから驚いちゃったかな。その夜に返信はなかった。
翌日になれば返事がくるだろうと思っていたが、こなかった。何故だろう、もしかして気付いていないのかな? それとも最悪、僕のLINEをブロックされたか。もし、そうなら悲しい。
谷山さんからLINEの返事がきたのは送ってから約1週間後のことだ。
<ごめんなさい! 最近、忙しくてLINE見れなかった。私は元気だよ。山崎君は?>
彼女からLINEがきたのは、僕が仕事中の時だった。なので、それに気付いたのはお昼休みの時間だ。スタッフルームにいた僕は慌てて返事を打った。
<谷山さん、こんにちは! 返事遅れてごめんね。仕事中だったのさ。今、どんな仕事をしているの?>
彼女は今日、休みなのかな。少しして既読になり、返事もきた。
<私ね、事情があって今月だけ夜の仕事もしているの。日中は教師をやってるよ>
事情? どんな事情だろう。気になる。それに教師は副業していいのだろうか。そのことを伝えると、
<ちょっと、友達からお金借りちゃってて。それを返すお金として夜のお仕事もしてるの>
そうなんだ、と思い、僕は更に質問を続けた。
<夜のお仕事ってどんなの?>
この質問はするべきじゃなかったかもしれない。それ以降、LINEがこなくなった。失敗した……。
友達から借金。谷山さん、何やってるのだろう。らしくないなぁ。夜の仕事もしてるみたいだし。心配だな。今月だけ、と言っていたから来月にもう一度、夜の仕事は何か訊いてみよう。果たして教えてくれるかな。まあ、無理に訊き出そうとは思っていない。無理に訊き出しても何にもならないから。嫌な思いをさせるだけだ。訊いても答えないようなら、自分から言ってくれるのを待とう。
僕は谷山さんのことが気になっている。これは恋愛感情というやつなのか。でも、僕の容姿は酷いものだ。自分のことを悪く言うのは悲しいけれど、デブで身長も男性にしては低いほう。約160㎝くらい。ニキビ顔でこの若さで髪が薄い。こんな僕を好きになる女性はいないだろう。いくら気持ちが大事というのはわかるけれど、外見だって気にはなるだろう。もう少し彼女のことは様子をみよう。焦って告白しても、いい結果は出ない。少しでも望みがあると思ったらじっくり時間をかけて接していこう。今まで以上に慎重に。
谷山さんは、喫煙や飲酒はするのかな。僕は喫煙はするけれど、飲酒はしない。父が酔っ払った時の記憶が頭から離れないから。僕が幼少の時、母が健在だった頃、父が酔っ払って何が気に食わないのか暴力をふるうのだった。反面教師というやつ。父のDVのせいで母はうつ病になり、自殺した。だから僕は父を恨んでいる。父のようにならないように、ならないように生きて来た。父は親らしいことは何もしないで昼間から酒を飲んでいる。アル中ってやつだ。こう言っちゃなんだけれど、父の人生は既に終わっている。だから僕は実家を離れた。こんな家にいたくない! と思って。
現在、父は46歳。職業は建設業、辞めていなければ。
はっきり言って父のことはどうでもいい。死んでもいいと思っている。母を直接的ではないにしろ死ぬきっかけになった訳だから。僕は優しい母が好きだった。だから尚更、父のことが許せない。たまに、こういうことを考える。でも、本心だ。嘘偽りのない。他言はしないけれど、打ち明けたくなる時もある。
母の死から約20年が経過する。そんなに年月が流れているというのに、母に対する悲しみはなかなか軽減しない。増幅することはないけれど。それがせめてもの救いだ。
僕は札幌市に就職を機に引っ越して来たけれど、谷山さんは地元の帯広市に今でもいるのだろうか。訊いてみようと思い、そういう文面のLINEを送った。すると、まったりしている時間帯だからかすぐに返信が来た。
<いや、札幌に住んでるよ>
おっ! そうなんだ。じゃあ、会おうと思えば会えるかもしれない。谷山さんがOKなら。
<今も国語教師をしているの?>
<そうだよ。山崎君は今どこに住んでるの?>
<札幌の精神科デイケアでスタッフをしてる>
<へー、そうなんだ。山崎君は優しいからあってるかもね>
それを読んで僕は照れくさくなった。
<ありがとう。今度、時間が合う時遊ばない?>
誘うと、
<いいよ! いつならいいかな?>
おっ! これは脈ありか?
<僕は土日ならいつでもいいよ>
<私は今週の土日なら大丈夫>
よし! と思い、
<今週の土曜日に会おう?>
というLINEを送った。
<OK!>
返信がきた。やったー! 僕は、
<何時にどこで待ち合わせする?>
訊いたが、
<ていうか、何して遊ぶ?>
訊き返された。
うーん、何がいいかな。よし、
<まずは、カラオケに行かない?>
と、誘うと、
<私、歌下手なんだよね>
僕は、そこで引き下がらず、
<僕も下手だよ。楽しめればいいんじゃないかな>
少し間があり、
<そうね、じゃあ、カラオケにいこうか>
賛同してくれたので嬉しかった。
<1時に駅の近くのカラオケボックスでいい?>
<うん、いいよ>
こうして谷山さんとのLINEは一旦終わった。
どうせカミングアウトしたってフラれるだろうと思って連絡すらとっていなかった。でも電話で母に打ち明けたらアタックしてみたらは? と言われその気になった。
僕はLINEを久しぶりに送った。内容は、
<こんにちは! 谷山さん。久しぶりだね。元気にしてる?>
というもの。
でも、今は夜10時過ぎ。こんな時間に普段連絡しないから驚いちゃったかな。その夜に返信はなかった。
翌日になれば返事がくるだろうと思っていたが、こなかった。何故だろう、もしかして気付いていないのかな? それとも最悪、僕のLINEをブロックされたか。もし、そうなら悲しい。
谷山さんからLINEの返事がきたのは送ってから約1週間後のことだ。
<ごめんなさい! 最近、忙しくてLINE見れなかった。私は元気だよ。山崎君は?>
彼女からLINEがきたのは、僕が仕事中の時だった。なので、それに気付いたのはお昼休みの時間だ。スタッフルームにいた僕は慌てて返事を打った。
<谷山さん、こんにちは! 返事遅れてごめんね。仕事中だったのさ。今、どんな仕事をしているの?>
彼女は今日、休みなのかな。少しして既読になり、返事もきた。
<私ね、事情があって今月だけ夜の仕事もしているの。日中は教師をやってるよ>
事情? どんな事情だろう。気になる。それに教師は副業していいのだろうか。そのことを伝えると、
<ちょっと、友達からお金借りちゃってて。それを返すお金として夜のお仕事もしてるの>
そうなんだ、と思い、僕は更に質問を続けた。
<夜のお仕事ってどんなの?>
この質問はするべきじゃなかったかもしれない。それ以降、LINEがこなくなった。失敗した……。
友達から借金。谷山さん、何やってるのだろう。らしくないなぁ。夜の仕事もしてるみたいだし。心配だな。今月だけ、と言っていたから来月にもう一度、夜の仕事は何か訊いてみよう。果たして教えてくれるかな。まあ、無理に訊き出そうとは思っていない。無理に訊き出しても何にもならないから。嫌な思いをさせるだけだ。訊いても答えないようなら、自分から言ってくれるのを待とう。
僕は谷山さんのことが気になっている。これは恋愛感情というやつなのか。でも、僕の容姿は酷いものだ。自分のことを悪く言うのは悲しいけれど、デブで身長も男性にしては低いほう。約160㎝くらい。ニキビ顔でこの若さで髪が薄い。こんな僕を好きになる女性はいないだろう。いくら気持ちが大事というのはわかるけれど、外見だって気にはなるだろう。もう少し彼女のことは様子をみよう。焦って告白しても、いい結果は出ない。少しでも望みがあると思ったらじっくり時間をかけて接していこう。今まで以上に慎重に。
谷山さんは、喫煙や飲酒はするのかな。僕は喫煙はするけれど、飲酒はしない。父が酔っ払った時の記憶が頭から離れないから。僕が幼少の時、母が健在だった頃、父が酔っ払って何が気に食わないのか暴力をふるうのだった。反面教師というやつ。父のDVのせいで母はうつ病になり、自殺した。だから僕は父を恨んでいる。父のようにならないように、ならないように生きて来た。父は親らしいことは何もしないで昼間から酒を飲んでいる。アル中ってやつだ。こう言っちゃなんだけれど、父の人生は既に終わっている。だから僕は実家を離れた。こんな家にいたくない! と思って。
現在、父は46歳。職業は建設業、辞めていなければ。
はっきり言って父のことはどうでもいい。死んでもいいと思っている。母を直接的ではないにしろ死ぬきっかけになった訳だから。僕は優しい母が好きだった。だから尚更、父のことが許せない。たまに、こういうことを考える。でも、本心だ。嘘偽りのない。他言はしないけれど、打ち明けたくなる時もある。
母の死から約20年が経過する。そんなに年月が流れているというのに、母に対する悲しみはなかなか軽減しない。増幅することはないけれど。それがせめてもの救いだ。
僕は札幌市に就職を機に引っ越して来たけれど、谷山さんは地元の帯広市に今でもいるのだろうか。訊いてみようと思い、そういう文面のLINEを送った。すると、まったりしている時間帯だからかすぐに返信が来た。
<いや、札幌に住んでるよ>
おっ! そうなんだ。じゃあ、会おうと思えば会えるかもしれない。谷山さんがOKなら。
<今も国語教師をしているの?>
<そうだよ。山崎君は今どこに住んでるの?>
<札幌の精神科デイケアでスタッフをしてる>
<へー、そうなんだ。山崎君は優しいからあってるかもね>
それを読んで僕は照れくさくなった。
<ありがとう。今度、時間が合う時遊ばない?>
誘うと、
<いいよ! いつならいいかな?>
おっ! これは脈ありか?
<僕は土日ならいつでもいいよ>
<私は今週の土日なら大丈夫>
よし! と思い、
<今週の土曜日に会おう?>
というLINEを送った。
<OK!>
返信がきた。やったー! 僕は、
<何時にどこで待ち合わせする?>
訊いたが、
<ていうか、何して遊ぶ?>
訊き返された。
うーん、何がいいかな。よし、
<まずは、カラオケに行かない?>
と、誘うと、
<私、歌下手なんだよね>
僕は、そこで引き下がらず、
<僕も下手だよ。楽しめればいいんじゃないかな>
少し間があり、
<そうね、じゃあ、カラオケにいこうか>
賛同してくれたので嬉しかった。
<1時に駅の近くのカラオケボックスでいい?>
<うん、いいよ>
こうして谷山さんとのLINEは一旦終わった。
応援ありがとうございます!
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