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「ただいまー。」

「おかえり、ってなんでそんなに濡れてるの?」

「友達とか海で遊んだー。」

「そうだったのね。早く着替えておいで。」


 家族みんなで囲んで食べるご飯は美味しい。でも今日は色々ありすぎて、大好物のコロッケもいつもより味が薄く感じた。

「学校はどうだった?」
母が心配そうに聞いてきた。

「んー、同級生1人しか居ないしちょっと変わってる子だけど、仲良くなったよ!海にもう誘ってくれたし!」

(変わってるどころじゃないけど!仲良くなんて絶対なれないけど!)

母に心配をかけないべく嘘をついた。

「そう、お母さん安心したわ。」

「田舎の子は素直で優しいから大丈夫だよ母さん。」

「おばあちゃんの孫なんだから大丈夫だよ。」

 3人そう言って、笑みを浮かべていた。

 
 
 少し熱めのお湯に浸かりながら、僕は今日のことを思い出していた。




「あれは害がないやつ。ただうるさいだけで。祓う?」

「害がない!?祓う?お前何言ってんの!?」

「とりあえず落ち着いてよ。まあ、簡単に言うと化け物!」

「見りゃ分かるよ、。」

「ああいう化け物を封印するのが僕ん家の家業なんだよ。」

「もう何言ってるか分かんねぇし、え、化け物近づいて来てね!?」

「見えるヤツ中々いないよ?教えてあげるから君も封印できるようになって。えっーと、あいつの封印の仕方はねぇ、このノート見て。」

 そう言って恭介はバックの中から古ぼけて、擦り傷だらけのノートを見せてきた。

「何それ?」

「加賀家で500年前から受け継がれてる封印書。色んな化け物の封印の仕方と封印に値する場所が記載されてるんだ。例えば、君に付きまとってるグラウンドの髪の長い化け物。あーゆーやつは、海まで誘導して、呪文を唱えれば封印される。深海にね。」

どうだ!と聞こえるくらい自慢そうに恭介は言った。


「封印しなかったらどうなんの?」

「あー、あれくらいのレベルなら死にはしないけど夜中にお前にちょっかいかけるくらいかな。」

「……。」
(全然大丈夫じゃねーよ。)

「毎日またがって叫ばれるのは勘弁して欲しいよ。封印の仕方教えてくれる?」

「じゃあ放課後行くよ。」

「え、?」

「だから、うーみー!君の行くところに化け物はついていくから。」

「あ、ああ。よろしく。」


(毒舌だし関わりづらいけどそんなに悪いやつではないか。)

 俺はため息をつきながら自分の席に座り、筆箱を出しながらふとグラウンドを見た。

「あれ、化け物なんか遠くね?」

「あいつらは昼間は人間に近づけない。」

「なんで?」

「昔からずっとそうなんだよ、ノートにも書いてる。理由は知らない。」

(え、えぇぇ。)

「てか、中々見えないよって言ってたけど皆が見えるんじゃないの?もしかして、子供だけ見える的な?」

「僕は三兄弟だけど、他の兄弟は見えない。だけど僕の父と祖父は見える。年齢は関係ないんだ。なぜその特定の人が見えるかは分かってない。君は昨日初めて化け物を見たんでしょう?僕は小学1年生の時から見えてたよ。」

「俺たちになんか共通点とかあんのかな。」

「ないと思うよ。ある訳ない。」

「そ、そうだななんかごめん。」
(そんなに否定しなくても。)


「よーし1限目始めるぞ。」
 2人だけの学校生活が始まった。
 授業はとても静かで、ずっと虫の音だけが響いた。東京が恋しい。たまにグラウンドを見ると、やはりそこには化け物がいて僕は夢じゃないかと思うことを諦めた。

「じゃあ初日お疲れ様、気をつけて帰るんだぞ。お、加賀も一緒に帰るのか?2人だけなんだし仲良く帰りなさい。」

 学校の玄関で先生に見送られ、恭介君と2人で学校をあとにした。

「海って山の向こう側のとこだよな?お、俺初めて行くんだよね~」

「そう。」

………………………………。

「恭介君は化け物怖くねーの?」

「恭介でいい。別に君に付きまとってるやつくらいなら怖くない。」

「えっと、俺も光でいいよ。俺に付きまとってるやつくらいならって、あれよりやばいやつがいんの?」

「あいつら化け物を妖魔って呼んでる。妖魔は3段階の強さに別れてる。
 下から三段、二段、一段。
 三段は光についてるようなそうそう害がないやつ。
 二段はつかれると病気になりやすかったり事故にあいやすい。
 一段はついたやつの魂を食い散らし、食われた人は廃人と化す。そして妖魔は強ければ強いほど見た目が美しい。」

「そうなんだ。え、てかなんでそんなやつ存在するの、?数はどれくらいいんの?つかれた人どうすればいいの。見えないやつはつかれないの?」

「妖魔は昔ここの村で雨が降らない時に生贄として差し出された元は人間。数は20体ほど。見えない人にも妖魔はもちろんつくよ。でもここの村から妖魔達は出れないから、ここにいる人間達を守ればいい。それが加賀家の妖魔が視える者の仕事。」

「そう、なんだ。」

「僕の先祖が1度全部の妖魔を封印したんだ。」

「えっ!じゃあなんでまだいるの?」

「でもその10年後に妖魔の中で1番強い白虎の封印が解けたんだ。子供達がイタズラで神社の縄を切ってね。その先祖の名前は宗次郎さんという人で白虎は強い憎しみを抱いて末代まで祟るといって宗次郎さんを殺した。当時近くで共に戦っていた人がこのノートに書いて残してくれたんだ。」

「でも封印が解けたのはその白虎だけじゃなかったの?」

「妖魔は封印しても、5年後には封印が解ける。でも白虎を封印すれば村の妖力が薄まり、全部の妖魔の封印が解けなくなる。要は白虎を封印しなければ永久に完全封印はできない。」

「じゃあ、ずっと後ろをついてきてるあの妖魔も今日封印しても5年後には出てくるってこと?」

「そういうこと。」

「そのノートに封印の仕方書いてるんでしょ?ちゃちゃっと封印すればいいじゃん!」

「はぁ、できたら苦労しないよ。馬鹿か。ほら見て」

(馬鹿って言われた。。)
 
 恭介はそう言って、ノートの最終ページを見せてきた。

「白虎を封印するには視える人が5人必要なの。それ以外にも沢山条件が必要。僕と父さんとじいさん。あ、そして君が今日増えたからあと一人。」

「え、おおおれも!?」

「当たり前でしょ。助けてやるんだしこんな田舎じゃすることないでしょうに。手伝ってよ。あ、もう着くね。」

 暗い竹林の先から波の音が聞こえ始めた。

「ほんとだ。でも封印って俺何かすることある?」

「今日は三段の封印。はい、ここのページに封印の仕方書いてあるから読んで。」

「腰まで海に入り、妖魔のいる方向を向き人形を高く捧げ、「もう大丈夫です」と3回唱える。最後に人形を燃やして海に流す。」

「憑かれてるの光だし、視えてるし1人でできるよね。はい、これ人形。ぼくここで見とくから。」

「え、ええええ!怖いからついてきてよ!」

「いいから行け!」

「はいぃぃぃ。」

 俺は恭介から人形を受け取り、靴と靴下を脱いで海に入った。
(うわぁ。パンツまでびちょびちょお、。
えっと、妖魔の方を向いてっと。)

 妖魔は竹やぶの間からこちらを覗き込んでいた。

 俺はふぅーっと息を吐き、恭介からもらった人形を空高く上げた。そして大声で唱えた。

「もう大丈夫です!もう大丈夫です!もう大丈夫です!」

 すると人形が青く光、遠くにいた妖魔の元へ飛んでいった。

「あっ。」

 妖魔の上に止まった人形は頭から妖魔を吸い込んでぽとっ、と地面に落ちた。
 俺は海の中からじっとその人形を見つめていた。

「成功だー!戻ってこーい!」
恭介の大きな声で我に戻った。

「あぁ、今行くよ。」
(良かった。成功したんだ。)

「はーベッチョベチョだよ。帰ったら怒られそー。」

「おい、人形に移すのは成功したけど、まだ完全に封印した訳じゃないんだから。早く燃やして海に流すぞ。」

「あぁ。そうだったなごめん。」

 人形を広い、浜辺で恭介が人形にライターで火をつけた。足からじわじわと燃え広がっていく人形は何とも不気味だ。

「よしこれで焼き切ったな。じゃあ後は海に流すぞ。」

「あぁ。」

 俺は焼けカスを拾い上げ波が足元に来た時にそっと手から離した。

「これで終了だ。封印できた。5年間だけだが。」

 恭介は焼けカスが波にのって遠くへ運ばれていくのを見ながら今にも泣きそうな顔で言った。

 

 その後、2人で帰路につき、また明日なと別れた。一昨日までは直輝とバカみたいなことを話して帰っていたのに。俺は今何をしてるんだろうと下を向いて考えていた。


「おーい!いつまで風呂入ってんだ!のぼせるぞ。」

 父親の声で僕は指先がふやけているのに気づいた。

「上がろ。」

 

 布団の上で、直輝にメールを送った。

「俺やってけそうにないかも。東京に戻りたい。」

 俺はあまりの疲れに直輝の返信を見る前に、夢の世界へ落ちてしまった。


















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