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第二Q ザ・レコード・オブ・ジョーズ・グロウス ~合宿編~
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毎年恒例の短期合宿の全日程が終了した。赤チームが勝利したことでスクワットを逃れた雪之丞が好物のバニラアイスを頬張っていると、
「お疲れ様。見てたよ、試合」
「さ、紗綾先輩! お疲れ様っす!」
デオドラントのシトラスの香りを漂わせながら、紗綾が雪之丞の隣に座った。
「最後のシュート、綺麗だったね。たくさん練習した成果が出て良かったね」
「あざっす! でもホントいい所なんて最後だけだったんで、もっと練習しなきゃなって思いました。紗綾先輩はめっちゃバスケ上手いっすよね。いつからやってるんですか?」
合宿中はまるで余裕がなく、こんなに近くにいながら紗綾のバスケ姿を一度しかまともに見られなかったのは非常に心残りである。
「中一のとき、友達に誘われて始めたの。……っていうか、ありがと。バスケのことで褒められるのって、素直に嬉しい」
照れ臭そうにはにかんで笑う紗綾はとても可愛かった。思わず頬が緩んだが、久美子をはじめ雪之丞の恋心を知る部員たちの視線を感じて、必死に表情を整えた。
「鳴海くんは合宿、どうだった?」
「……正直、足引っ張ってばっかでした。でも、少しだけ自信はつけることができました。これから人一倍練習して伝説を作っていきますから、俺をバスケの世界に導いた先駆者として是非見ていてください!」
「……わたしが君を、バスケ部に入れたきっかけなの?」
紗綾は驚いた表情で雪之丞を見た。
「そうっすよ? あれ、言ってませんでしたっけ?」
「そうなんだ……」
紗綾はそう呟き、それ以上何も言わなかった。話しかけても上の空だったため、雪之丞も黙って溶け始めたアイスを食べていると、
「鳴海、ちょっと来なさい」
宇佐美から招集がかかった。怒られる心当たりがありすぎて、嫌な予感しかしない。
「俺、行って来るっす。お疲れ様っした!」
「……あ、うん……」
雪之丞は急いでアイスを平らげ、ぼうっとしている紗綾に頭を下げた後、緊張しながら宇佐美の元へ向かった。
「な、なんでしょうか……?」
おそるおそる窺ってみると、予想に反して宇佐美は穏やかな表情をしていた。
「この合宿中、鳴海への指導はほとんど浅香に任せっきりにしてすまなかったな」
「いえ、むしろ久美子先輩に付きっきりでしごいてもらえて、ありがたかったっす」
「そうか、それはよかった。……お前にしてみれば、バスケだけに打ち込む日々は初めての経験だっただろう? どうだった?」
「ウス。なんつうか……俺、こんなに頭使ったり、悩んだりしたの初めてでした。でも、部活ってただ技術を向上させるためだけの場じゃないんだって、わかった気がします」
「そうだな。この経験は鳴海にとって、大切な成長の糧になったと思うぞ」
満足そうに頷く宇佐美を見て、雪之丞は頬を掻いた。
「正直言って、この合宿辛かったっす。熱が出るかと思ったっす。……でも、今ここにいられることを誇りに思うっていうか、頑張って良かったなって思います」
合宿を終えた達成感からだろうか、らしくないことを口にしてしまったかもしれない。だけど、冗談を交えて答えようなんて気にはならなかったのだ。
宇佐美は優しく微笑んで、雪之丞の足元を指差した。
「本格的にバスケをやるなら、バッシュは買っておいた方がいいぞ」
その助言は、雪之丞を一選手として前向きに考えているという意味だろう。
「ウッス!」
雪之丞は大きな喜びを噛み締めながら、溌剌と返事をしたのだった。
合宿からの帰り道、雪之丞は既読無視をしていた夏希からのメッセージに返事を送った。
『念はいらん。今から帰る。バッシュ買いに行くから、付き合ってくれ』
「お疲れ様。見てたよ、試合」
「さ、紗綾先輩! お疲れ様っす!」
デオドラントのシトラスの香りを漂わせながら、紗綾が雪之丞の隣に座った。
「最後のシュート、綺麗だったね。たくさん練習した成果が出て良かったね」
「あざっす! でもホントいい所なんて最後だけだったんで、もっと練習しなきゃなって思いました。紗綾先輩はめっちゃバスケ上手いっすよね。いつからやってるんですか?」
合宿中はまるで余裕がなく、こんなに近くにいながら紗綾のバスケ姿を一度しかまともに見られなかったのは非常に心残りである。
「中一のとき、友達に誘われて始めたの。……っていうか、ありがと。バスケのことで褒められるのって、素直に嬉しい」
照れ臭そうにはにかんで笑う紗綾はとても可愛かった。思わず頬が緩んだが、久美子をはじめ雪之丞の恋心を知る部員たちの視線を感じて、必死に表情を整えた。
「鳴海くんは合宿、どうだった?」
「……正直、足引っ張ってばっかでした。でも、少しだけ自信はつけることができました。これから人一倍練習して伝説を作っていきますから、俺をバスケの世界に導いた先駆者として是非見ていてください!」
「……わたしが君を、バスケ部に入れたきっかけなの?」
紗綾は驚いた表情で雪之丞を見た。
「そうっすよ? あれ、言ってませんでしたっけ?」
「そうなんだ……」
紗綾はそう呟き、それ以上何も言わなかった。話しかけても上の空だったため、雪之丞も黙って溶け始めたアイスを食べていると、
「鳴海、ちょっと来なさい」
宇佐美から招集がかかった。怒られる心当たりがありすぎて、嫌な予感しかしない。
「俺、行って来るっす。お疲れ様っした!」
「……あ、うん……」
雪之丞は急いでアイスを平らげ、ぼうっとしている紗綾に頭を下げた後、緊張しながら宇佐美の元へ向かった。
「な、なんでしょうか……?」
おそるおそる窺ってみると、予想に反して宇佐美は穏やかな表情をしていた。
「この合宿中、鳴海への指導はほとんど浅香に任せっきりにしてすまなかったな」
「いえ、むしろ久美子先輩に付きっきりでしごいてもらえて、ありがたかったっす」
「そうか、それはよかった。……お前にしてみれば、バスケだけに打ち込む日々は初めての経験だっただろう? どうだった?」
「ウス。なんつうか……俺、こんなに頭使ったり、悩んだりしたの初めてでした。でも、部活ってただ技術を向上させるためだけの場じゃないんだって、わかった気がします」
「そうだな。この経験は鳴海にとって、大切な成長の糧になったと思うぞ」
満足そうに頷く宇佐美を見て、雪之丞は頬を掻いた。
「正直言って、この合宿辛かったっす。熱が出るかと思ったっす。……でも、今ここにいられることを誇りに思うっていうか、頑張って良かったなって思います」
合宿を終えた達成感からだろうか、らしくないことを口にしてしまったかもしれない。だけど、冗談を交えて答えようなんて気にはならなかったのだ。
宇佐美は優しく微笑んで、雪之丞の足元を指差した。
「本格的にバスケをやるなら、バッシュは買っておいた方がいいぞ」
その助言は、雪之丞を一選手として前向きに考えているという意味だろう。
「ウッス!」
雪之丞は大きな喜びを噛み締めながら、溌剌と返事をしたのだった。
合宿からの帰り道、雪之丞は既読無視をしていた夏希からのメッセージに返事を送った。
『念はいらん。今から帰る。バッシュ買いに行くから、付き合ってくれ』
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