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第一Q 隻腕の単細胞
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「紗綾先輩とあんたを一緒にするのは違うと思うけど……でも、意外ね。ジョーはもっと明るくて活発そうな子が好きだと思ってた」
「……え、なんで俺の秘蔵フォルダの場所知ってんだ!?」
「別にあんたのオカズの趣味なんて知らないわよ。わたしが言っているのは、ほら、ジョーの初恋相手のミサちゃんのこと」
「なんだよ、そっちかよ驚かせんな。おー、ミサのことは確かに好きだったな。今はどこで何してんのかね?」
ミサ。きっかけは忘れてしまったが、ひょんなことから仲良くなった一つ年上の女の子。
小学校は違ったものの、雪之丞と夏希はミサともう一人の幼馴染である大吾と放課後になれば銀杏公園に集まり、四人で様々な場所へ遊びに出かけた。
ミサは可愛い顔をしていたけれど遊び方に関しては女子らしくなく、一緒に泥まみれになって秘密基地を作ったり、釣りをしたりして遊んだ。ミサといる時間はとても楽しく、雪之丞が幼心に「この子ともっと一緒にいたい」と淡い恋心を抱くのも、自然の摂理と言えた。
しかし、ミサとの別れは突然だった。雪之丞が左手をなくしてからミサは二度と、銀杏公園に姿を見せなかった。ミサの苗字すら知らない雪之丞には、彼女の行き先を知る術はなかった。
ミサと遊んだのは小学校四年生の夏から一年間だけという短い期間だったが、あの一年間は今でも、雪之丞の胸に大切な思い出として刻まれている。
「……ジョーが入院している間にミサちゃんはいなくなって、大吾も引っ越しちゃったもんね。今頃ミサちゃんはすっごい美人になってるんじゃない? 大吾はシャイだけどスポーツ万能でモテモテだったわよね、ジョーと違って」
「俺だってモテてたはずだ!」
「はいはい。……二人して責任感じていたみたいだし、いなくなっちゃったのは仕方のないことかもしれないけど、やっぱり寂しかったよね……」
二人のことを思い、しんみりした空気が流れた。
「気にしてほしくねえんだけどな……もしもう一度会えたら、言いたいことがあるんだ」
「お、告白するってこと?」
暗い雰囲気を払拭するように明るい声を出す夏希を一瞥して、
「いや……つか、お前に言う必要なくね?」
「なによその言い方。可愛くない」
「俺はイケメン枠で生き残るから問題ない」
「あっそ。じゃあわたしも、あんたに隠していることあるけど言わない」
「あ? なんだよ、気になるから言えよ。俺のイチ押しグラビアアイドル教えてやるからさあ」
「安藤智絵里ちゃんでしょ? そんなやっすい情報だったら、最初の一文字くらいしか言えないわよ?」
「……あれ、お前が俺の話を聞きたがってたんじゃなかったっけ?」
いつものようにふざけ合い、からかい合い、笑い合いながら、二人は自宅まで肩を並べて歩いた。
「んでさ、俺と紗綾先輩を引き合わせてくれたのはバスケットボールだから、俺はバスケで日本一になって紗綾先輩に告白するつもりだ!」
そんな日常の中で何気なく一つの決意を口にすると、夏希は足を止めて雪之丞の顔をまじまじと見つめた。
「え……それ、マジで言ってんの?」
夏希は応援してくれるか冷やかしてくるかのどちらかだと思っていた雪之丞にとって、その反応は予想外なものだった。
「なんだよ。俺がバスケじゃ日本一になれねえって思ってんのか?」
「……いや、そっちじゃなくて。……紗綾先輩のこと、マジで好きなの?」
「おー、一目惚れってやつだ。まだ彼女のことはよく知らねえけど、これから猛アタックしていく!」
意気揚々と拳を握った雪之丞に対し、夏希の表情はどこか暗く見えた。
「おいおい夏希、まさか妬いてんのか? ミサのときはからかったくせに、よくわかんねえ奴だな」
「やっ……妬いてるわけないでしょ!? ミサちゃんの場合は現実味がなかったけど、紗綾先輩だとリアルだからビックリしただけ! ……まあ、頑張りなさいよ! 有言実行できない男って、めっちゃダサいから!」
いつもの夏希らしい反応に、雪之丞はニッと笑って親指を立てた。
「おう! よく見とけよ! これから俺は伝説を作っていくぜ!」
「伝説を作るって言い方はやめときなよ! ダサい!」
夏希は雪之丞の背中を叩きながら、声をあげて笑った。
「……え、なんで俺の秘蔵フォルダの場所知ってんだ!?」
「別にあんたのオカズの趣味なんて知らないわよ。わたしが言っているのは、ほら、ジョーの初恋相手のミサちゃんのこと」
「なんだよ、そっちかよ驚かせんな。おー、ミサのことは確かに好きだったな。今はどこで何してんのかね?」
ミサ。きっかけは忘れてしまったが、ひょんなことから仲良くなった一つ年上の女の子。
小学校は違ったものの、雪之丞と夏希はミサともう一人の幼馴染である大吾と放課後になれば銀杏公園に集まり、四人で様々な場所へ遊びに出かけた。
ミサは可愛い顔をしていたけれど遊び方に関しては女子らしくなく、一緒に泥まみれになって秘密基地を作ったり、釣りをしたりして遊んだ。ミサといる時間はとても楽しく、雪之丞が幼心に「この子ともっと一緒にいたい」と淡い恋心を抱くのも、自然の摂理と言えた。
しかし、ミサとの別れは突然だった。雪之丞が左手をなくしてからミサは二度と、銀杏公園に姿を見せなかった。ミサの苗字すら知らない雪之丞には、彼女の行き先を知る術はなかった。
ミサと遊んだのは小学校四年生の夏から一年間だけという短い期間だったが、あの一年間は今でも、雪之丞の胸に大切な思い出として刻まれている。
「……ジョーが入院している間にミサちゃんはいなくなって、大吾も引っ越しちゃったもんね。今頃ミサちゃんはすっごい美人になってるんじゃない? 大吾はシャイだけどスポーツ万能でモテモテだったわよね、ジョーと違って」
「俺だってモテてたはずだ!」
「はいはい。……二人して責任感じていたみたいだし、いなくなっちゃったのは仕方のないことかもしれないけど、やっぱり寂しかったよね……」
二人のことを思い、しんみりした空気が流れた。
「気にしてほしくねえんだけどな……もしもう一度会えたら、言いたいことがあるんだ」
「お、告白するってこと?」
暗い雰囲気を払拭するように明るい声を出す夏希を一瞥して、
「いや……つか、お前に言う必要なくね?」
「なによその言い方。可愛くない」
「俺はイケメン枠で生き残るから問題ない」
「あっそ。じゃあわたしも、あんたに隠していることあるけど言わない」
「あ? なんだよ、気になるから言えよ。俺のイチ押しグラビアアイドル教えてやるからさあ」
「安藤智絵里ちゃんでしょ? そんなやっすい情報だったら、最初の一文字くらいしか言えないわよ?」
「……あれ、お前が俺の話を聞きたがってたんじゃなかったっけ?」
いつものようにふざけ合い、からかい合い、笑い合いながら、二人は自宅まで肩を並べて歩いた。
「んでさ、俺と紗綾先輩を引き合わせてくれたのはバスケットボールだから、俺はバスケで日本一になって紗綾先輩に告白するつもりだ!」
そんな日常の中で何気なく一つの決意を口にすると、夏希は足を止めて雪之丞の顔をまじまじと見つめた。
「え……それ、マジで言ってんの?」
夏希は応援してくれるか冷やかしてくるかのどちらかだと思っていた雪之丞にとって、その反応は予想外なものだった。
「なんだよ。俺がバスケじゃ日本一になれねえって思ってんのか?」
「……いや、そっちじゃなくて。……紗綾先輩のこと、マジで好きなの?」
「おー、一目惚れってやつだ。まだ彼女のことはよく知らねえけど、これから猛アタックしていく!」
意気揚々と拳を握った雪之丞に対し、夏希の表情はどこか暗く見えた。
「おいおい夏希、まさか妬いてんのか? ミサのときはからかったくせに、よくわかんねえ奴だな」
「やっ……妬いてるわけないでしょ!? ミサちゃんの場合は現実味がなかったけど、紗綾先輩だとリアルだからビックリしただけ! ……まあ、頑張りなさいよ! 有言実行できない男って、めっちゃダサいから!」
いつもの夏希らしい反応に、雪之丞はニッと笑って親指を立てた。
「おう! よく見とけよ! これから俺は伝説を作っていくぜ!」
「伝説を作るって言い方はやめときなよ! ダサい!」
夏希は雪之丞の背中を叩きながら、声をあげて笑った。
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