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外来心療2
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――僕が三年になった年でした。僕たちは恋愛や青春映画をよく撮っていたのですが、今年はホラーを撮りたいという話になりました。その話し合いの場で、雰囲気を出すために有名な心霊スポットで撮ろうとなり、条件を絞って下見に向かったんです。
県境にある山奥に、僕らが目指していた場所はありました。昔、不動産で財を成した男性が住んでいた洋館風の建物でした。
ですが二十三年前、建物内で男性が死体となって発見されたんです。
第一発見者の娘さん夫婦の話では、死体は異様そのものだったようです。
中は荒らされたみたいに物が散乱していたそうです。特に荒れていたリビングに、男性が倒れていました。何か恐ろしいものを見たように見開かれた目。黒く染まった顔。不自然に折れ曲がった腕。死体は、普通の死臭とは違う臭いを放っていたそうです。
死体は明らかに何者かに襲われた形跡がありました。
でも地元の警察は、自殺ということ以外一切の説明をせず、捜査を終了したんです。
規制の解かれた建物は、すぐに取り壊されることになりました。多くの重機が搬入され、解体されるはずだったんです。ですが、解体業者の現場監督が立て続けに自殺。従業員数名が謎の失踪。『呪われた館』と記事なるほど騒がれた場所だったんです。
僕らは当時の記事や掲示板を頼りに、その館のある場所を特定しました。正面に鉄格子の門扉がありました。中には簡単に入れないと思っていたんですが、門扉につけられていたんでしょう。千切れた鎖と南京錠が地面に落ちていました。
下見の資料として、ハンディカメラを回しながら進みました。庭には小さな噴水がありましたが、苔が生え放題で水も出ていませんでした。
門から庭を通り、玄関の扉を開けた時、まず埃とカビの臭いが凄かったのを覚えてます。
広々とした木目調の廊下はくすんでいて、蜘蛛やネズミが走り回っているような有様でした。
壁の所々には落書きがありました。きっと僕たちと同じように、噂を聞いた人たちが残していったものだと思います。
廊下の奥に、男性の死体があったとされるリビングがありました。物はほとんど出されていましたが、床には黒いシミが人の形を作っていました。僕らは臭いに耐えられず、掃き出し窓を開けて探索を続けることにしました。
掃き出し窓から裏庭に出られるようでした。裏には小さな納屋と手作りのブランコがありました。どちらも傷んでいて、使えるようには見えませんでしたが。
他の部屋も探索してみました。どこも同じような感じで、手つかずの物が少しあるだけで、特に印象的な物はありませんでした。ただ気になったのは、建物内の床という床に、泥がついていたことです。黒い泥です。点々と、建物の中を動き回ったかのように。
ただ泥がついていただけなら、気にも留めなかったと思います。
でもその黒い泥は、濡れていたんです。
その黒い泥が、一番多かった場所がありました。近づく前からヤバイ場所だという予感を持っていました。鼻を刺激するドブの臭いです。部屋に入ると、そこは浴室でした。もわっと全身に迫る油のような臭いが充満していて、思わず鼻を押さえました。
その浴室は普通じゃありませんでした。壁や床、天井。何度も塗られたように、黒い泥に覆われていたんです。
浴槽の縁まで黒い水が張ってありました。
気分の悪くなった人が出たため、僕らは撤収することにしました。
県境にある山奥に、僕らが目指していた場所はありました。昔、不動産で財を成した男性が住んでいた洋館風の建物でした。
ですが二十三年前、建物内で男性が死体となって発見されたんです。
第一発見者の娘さん夫婦の話では、死体は異様そのものだったようです。
中は荒らされたみたいに物が散乱していたそうです。特に荒れていたリビングに、男性が倒れていました。何か恐ろしいものを見たように見開かれた目。黒く染まった顔。不自然に折れ曲がった腕。死体は、普通の死臭とは違う臭いを放っていたそうです。
死体は明らかに何者かに襲われた形跡がありました。
でも地元の警察は、自殺ということ以外一切の説明をせず、捜査を終了したんです。
規制の解かれた建物は、すぐに取り壊されることになりました。多くの重機が搬入され、解体されるはずだったんです。ですが、解体業者の現場監督が立て続けに自殺。従業員数名が謎の失踪。『呪われた館』と記事なるほど騒がれた場所だったんです。
僕らは当時の記事や掲示板を頼りに、その館のある場所を特定しました。正面に鉄格子の門扉がありました。中には簡単に入れないと思っていたんですが、門扉につけられていたんでしょう。千切れた鎖と南京錠が地面に落ちていました。
下見の資料として、ハンディカメラを回しながら進みました。庭には小さな噴水がありましたが、苔が生え放題で水も出ていませんでした。
門から庭を通り、玄関の扉を開けた時、まず埃とカビの臭いが凄かったのを覚えてます。
広々とした木目調の廊下はくすんでいて、蜘蛛やネズミが走り回っているような有様でした。
壁の所々には落書きがありました。きっと僕たちと同じように、噂を聞いた人たちが残していったものだと思います。
廊下の奥に、男性の死体があったとされるリビングがありました。物はほとんど出されていましたが、床には黒いシミが人の形を作っていました。僕らは臭いに耐えられず、掃き出し窓を開けて探索を続けることにしました。
掃き出し窓から裏庭に出られるようでした。裏には小さな納屋と手作りのブランコがありました。どちらも傷んでいて、使えるようには見えませんでしたが。
他の部屋も探索してみました。どこも同じような感じで、手つかずの物が少しあるだけで、特に印象的な物はありませんでした。ただ気になったのは、建物内の床という床に、泥がついていたことです。黒い泥です。点々と、建物の中を動き回ったかのように。
ただ泥がついていただけなら、気にも留めなかったと思います。
でもその黒い泥は、濡れていたんです。
その黒い泥が、一番多かった場所がありました。近づく前からヤバイ場所だという予感を持っていました。鼻を刺激するドブの臭いです。部屋に入ると、そこは浴室でした。もわっと全身に迫る油のような臭いが充満していて、思わず鼻を押さえました。
その浴室は普通じゃありませんでした。壁や床、天井。何度も塗られたように、黒い泥に覆われていたんです。
浴槽の縁まで黒い水が張ってありました。
気分の悪くなった人が出たため、僕らは撤収することにしました。
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