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5章 青に濁る
4dbs-迷宮の入口
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石滝公園内の防犯カメラ、また周辺にあるコンビニや住宅に設置された防犯カメラから映像をダビングさせてもらった。
捜査員12名で午前10時から午後6時までの3週間分の映像を分析した結果、6月24日から7月14日の間に石滝公園に訪れていた学生らしき13歳から26歳の男女は約370名。そのうち、事件に関係しているかもしれない男女を8組選定した。防犯カメラを分析し続けるだけでも肩に重しが乗っている疲労を感じた。
睡眠不足と目の渇きに悩める刑事達は、缶コーヒーを片手に一息ついていた。
「あ~っ! もう仕事したくない」
仮眠室で簡素なベッドに寝転んだまま、貝塚は伸びをする。
「やさぐれてますね」
向かいのベッドに腰かける増古は、缶の口から湯気が立ち昇るコーヒーを口に含む。
「お前だって髭伸び放題じゃねぇか」
増古は喉を通るコーヒーの温かさをしみじみと感じながら息を零す。
「今年もあと2日か。来年もこんな感じなんだろうなぁ。仕事ばかりでプライベートはほとんどなし。かといって休みもらっても酒飲んだり、パチンコするくらいしかやることなし」
「それでいいじゃないですか。平和で」
「平和って……まあプライベートは平和だけど、面白味はないよな」
カレンダーと時計、サイドテーブル、ベッドしかない部屋は特に娯楽というものもない。壁も灰色一色で、つまらない部屋。留置場にある檻の中のような内装というのもあり、この部屋で寝ることを嫌う刑事達もいた。
「この中にいるかもしれないんですね。犯人」
サイドテーブルに置かれた犯人候補男女8組の写真が並べられていた。防犯カメラの映像から切り取ってプリントアウトしたもののため、あまり綺麗な写真ではない。この男女8人がどこに所属しているのかも掴めてない状況だ。
「やることがありすぎて気滅入るわー」
「いつものことじゃないですか」
「お前は冷たいなぁ~」
「貝塚さんほどじゃありませんよ」
「いっちょまえに皮肉かよ」
「貝塚さん、この事件が終わったら一緒に飲みに行きませんか?」
貝塚は驚いた様子で首を振り、視線を増古に向ける。
「お前から飲みに誘われるとはな」
貝塚はニタっと微笑する。
「今回の事件は長丁場になりそうなので、先に予約を」
「ふふっ、ちゃんと空けておくよ」
「ありがとうございます」
加留部山の捜査も捗り、犯人への手がかりが揃い始めていた。鑑識や科捜研の正式な捜査もできるようになり、廃墟の中を徹底的に調べた。
すると、廃墟の床にあった焦げ跡から硫酸の痕跡が確認された。山の中でも硫酸が入っていたと思われる瓶を発見。また、焦げ跡の残ったボウルも見つけ、11月14日に目撃された煙と関係あるかもしれないということで押収された。
残念ながらどちらも指紋はついてなかった。しかし、ボウルの中には肥料の成分が検出され、それが硫黄だったことから、犯人は手作りで硫酸を生成していたとの見解が、刑事達の中で共有された。
加留部山周辺での聞き込みでは、山岳部の学生らしき人達がたまに訪れるらしかった。どの学生も石滝公園の防犯カメラの映像から得た情報から絞った犯人候補者には当てはまらなかった。
とりあえず現状では犯人を断定できるものはないが、捜査本部は容疑者カップルの素性を密かに調べることにした。
そうしている間に年を越して、本格的な冬の訪れを思わせる寒さを感じる季節となった。
休みを満喫してる奴等を見ると胸糞悪くなる。貝塚は陰険にも煙草をその場で吸って、煙を奴等に向けて吐く。
そんな日々を過ごし、犯人候補は3組に絞られた。刑事達はそれぞれのカップルの下へ赴き、探りを入れた。
捜査員12名で午前10時から午後6時までの3週間分の映像を分析した結果、6月24日から7月14日の間に石滝公園に訪れていた学生らしき13歳から26歳の男女は約370名。そのうち、事件に関係しているかもしれない男女を8組選定した。防犯カメラを分析し続けるだけでも肩に重しが乗っている疲労を感じた。
睡眠不足と目の渇きに悩める刑事達は、缶コーヒーを片手に一息ついていた。
「あ~っ! もう仕事したくない」
仮眠室で簡素なベッドに寝転んだまま、貝塚は伸びをする。
「やさぐれてますね」
向かいのベッドに腰かける増古は、缶の口から湯気が立ち昇るコーヒーを口に含む。
「お前だって髭伸び放題じゃねぇか」
増古は喉を通るコーヒーの温かさをしみじみと感じながら息を零す。
「今年もあと2日か。来年もこんな感じなんだろうなぁ。仕事ばかりでプライベートはほとんどなし。かといって休みもらっても酒飲んだり、パチンコするくらいしかやることなし」
「それでいいじゃないですか。平和で」
「平和って……まあプライベートは平和だけど、面白味はないよな」
カレンダーと時計、サイドテーブル、ベッドしかない部屋は特に娯楽というものもない。壁も灰色一色で、つまらない部屋。留置場にある檻の中のような内装というのもあり、この部屋で寝ることを嫌う刑事達もいた。
「この中にいるかもしれないんですね。犯人」
サイドテーブルに置かれた犯人候補男女8組の写真が並べられていた。防犯カメラの映像から切り取ってプリントアウトしたもののため、あまり綺麗な写真ではない。この男女8人がどこに所属しているのかも掴めてない状況だ。
「やることがありすぎて気滅入るわー」
「いつものことじゃないですか」
「お前は冷たいなぁ~」
「貝塚さんほどじゃありませんよ」
「いっちょまえに皮肉かよ」
「貝塚さん、この事件が終わったら一緒に飲みに行きませんか?」
貝塚は驚いた様子で首を振り、視線を増古に向ける。
「お前から飲みに誘われるとはな」
貝塚はニタっと微笑する。
「今回の事件は長丁場になりそうなので、先に予約を」
「ふふっ、ちゃんと空けておくよ」
「ありがとうございます」
加留部山の捜査も捗り、犯人への手がかりが揃い始めていた。鑑識や科捜研の正式な捜査もできるようになり、廃墟の中を徹底的に調べた。
すると、廃墟の床にあった焦げ跡から硫酸の痕跡が確認された。山の中でも硫酸が入っていたと思われる瓶を発見。また、焦げ跡の残ったボウルも見つけ、11月14日に目撃された煙と関係あるかもしれないということで押収された。
残念ながらどちらも指紋はついてなかった。しかし、ボウルの中には肥料の成分が検出され、それが硫黄だったことから、犯人は手作りで硫酸を生成していたとの見解が、刑事達の中で共有された。
加留部山周辺での聞き込みでは、山岳部の学生らしき人達がたまに訪れるらしかった。どの学生も石滝公園の防犯カメラの映像から得た情報から絞った犯人候補者には当てはまらなかった。
とりあえず現状では犯人を断定できるものはないが、捜査本部は容疑者カップルの素性を密かに調べることにした。
そうしている間に年を越して、本格的な冬の訪れを思わせる寒さを感じる季節となった。
休みを満喫してる奴等を見ると胸糞悪くなる。貝塚は陰険にも煙草をその場で吸って、煙を奴等に向けて吐く。
そんな日々を過ごし、犯人候補は3組に絞られた。刑事達はそれぞれのカップルの下へ赴き、探りを入れた。
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