臆病宗瑞

もず りょう

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臆病宗瑞 後編

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     三

 その夜、伊豆国内を震撼させる大事件が起きた。
 茶々丸が父政知を斬殺し、堀越御所を乗っ取ったのである。
 彼は病床にあった父を一刀のもとに斬り殺すと、その勢いで奥へ押し入り、そこにいた継母と異母弟の潤童子丸をも殺害した。
 その日のうちに抵抗勢力を一掃し、彼は御所内を制圧した。その手際のよさは、茶々丸の武将としての有能さの何よりの証であると、風聞を伝え聞いた盛時は改めて確信した。
 ――茶々丸め、思っていたよりもずっと手強い男であったわ。
 渋面の盛時は腕組みをして、静かに目を閉じた。
 こうも見事に乗っ取り劇が成し遂げられたということは、御所内にもかなりの数の茶々丸擁立派がいたということであろう。粗暴な一面ばかりが取り沙汰され、一説には、見かねた父政知によって座敷牢へ押し込められようとしたことが今回の騒動の発端ではないかとまで囁かれているけれど、おそらく茶々丸はその程度の男ではあるまい。それどころか、父政知をはるかに凌ぐ器量の持ち主であるかもしれない。かねてより、
 ――堀越公方家はたしかに強力なれど、我等とて武勇では決して引けを取るものでなし。ここは先手を打ち、一気に堀越御所へ攻め込むべきでございましょう。
 と、息巻いていた太郎らに同調せず、慎重な様子見をつづけたのは、やはり正しいやりかたであったと、盛時は改めて確信した。
「かくなる上は、いよいよ腰を据えて取り組まねばなるまいぞ」
 この混乱に乗じて堀越御所を攻めるべしと、いよいよ声高になって主張する太郎らを、盛時は表向きやんわりと、しかしながら、内心には確たる自信を持って制した。
 太郎らは不服そうに口を尖らせてみせたが、それによって盛時の表情がわずかでも動くことはなかった。

 それから数日は、何事もなく推移した。
 大きな混乱を招くことなく、この数日を乗り切ったという一事のみをもってしても、足利茶々丸という武将が只者でないことは、じゅうぶんに証明されたと見てよい。
 ――これは、かなり手強い敵になりそうだ。
 そう思うたび、盛時は深い溜息を吐いて、ひとり考え込むことが多くなった。
 主君氏親から託されている伊豆侵攻の足掛かりは、いっこうに掴めそうにない。
 さらに京では、盛時をせっつくもうひとつの動きが起きていた。管領細川政元がかねて不仲であった将軍足利義材を都から追放し、代わって清晃を次なる将軍候補に擁立したのである。彼はおのが父と弟を手にかけた兄茶々丸を心の奥底から憎悪し、政元を介して盛時のもとへ使者を遣わし、一刻も早くこれを打ち滅ぼすよう申し渡してきた。
 次期将軍からの使者ということもあって、盛時は丁重にこれを迎え、口上に対しても、
「一日も早う逆賊茶々丸を葬り去り、清晃さまの仇を取ってご覧に入れまする」
 と、約束した。
 しかしながら、実際に堀越御所内の様子を探らせてみると、既に茶々丸は当主としての地盤を完全に固めてしまっており、
 ――この様子では、今しばらく手を出すことはかなわぬな。
 そんなふうにしか思えない現状があるのだった。
「秀実和尚のところへまいる」
 そう思い立ったのも、何かすがるような気持ちがあったからであろう。思えば、ここ数日の混乱によってすっかり身辺が慌しくなり、秀実と碁を打つ暇さえなくなってしまっていた。無心になって碁盤に向かい、秀実の温顔と対峙していれば、あるいは今後の妙策が浮かぶかもしれない。最低でも、なんらかの指針ぐらいは見出せるのではないか。
 取るものも取り合えず、盛時は秀実のもとへ向かった。
 
 夕刻になって寺へ着いたとき、中はいやに静かだった。いつも人気は少なく、賑やかなことなどないのだが、それにしても今日は静か過ぎると盛時は訝しんだ。ただ静かなのではなく、寺内の空気そのものが停滞してしまっているような、奇妙な感覚を覚えたのだ。
 ――何か、ある。
 それは、不吉な予感といってよかった。
 怖気づくような寒さを感じながら、盛時はゆっくりと寺に足を踏み入れた。
 刹那――。
 盛時は惨状を目の当たりにして、言葉を失った。
 顔面蒼白となった彼の眼前には、血の海が広がっていた。異臭が鼻を突き、いいようのない現実を盛時に突きつけてくる。
 血の海にたゆたうように横たわっているのは、秀実だった。左の肩から一刀のもとに斬り下げられたらしく、ざっくりと傷口が広がっている。
 これほど見事な切り口というものを、盛時はこれまで一度として見たことがなかった。秀実を襲ったのはよほどの手練であるらしい――そんなことを感じる心の余裕とてなく、盛時は既に物言わぬ亡骸と化した和尚のもとへ駆け寄って、
「誰だ、誰がこのような酷いことを……」
 決して答えが返ってくることのない問いかけを口にしていた。
「殿……」
 遅れて入ってきた太郎も、あまりの驚きに表情を失っている。それでも、彼には盛時に伝えなければならぬことがあった。懸命に心を奮い立たせ、彼はただでさえ平静さを失っている主君に対し、死刑宣告にも等しい残酷なひとことを発した。
「隣の部屋で、楓殿も――」
 その言葉を聞き終えることなく、盛時は勢いよく立ち上がると、太郎に肩をぶつけながら隣の部屋を覗き込んだ。
 そして、彼はその場にへたり込んだ。
 部屋の隅のほうに、血まみれの楓が横たわっている。着衣には乱れがあり、そこで何が行われたかは一見して明らかであった。
「おのれ……」
 臓腑の奥から搾り出したような声で、盛時は呻いた。
 この非道な行いをやってのけた者は、足利茶々丸を措いて他にいまい。楓を譲り受けたいとの要求に秀実が頑として首を縦に振らず、当の楓もまた自分に想いを寄せることがないと知って絶望し、このような挙に出たのであろう。茶々丸は世間の噂に違わぬ――あるいは、それ以上の暴君であったのだ。
「儂が……、儂があのとき楓殿の話をもっと聞いておれば……」
 盛時の頬を、滂沱の涙が流れた。
 あのとき自分が惨めになることを恐れず、楓をわが手に迎えられるよう、なんらかの動きを見せていれば……。おそらく秀実は反対などしなかったに違いない。なぜならば、当の楓自身が誰よりも強くそうなることを望んでいたからだ。今ならば、はっきりとそう信じることができる。
 なのに、なぜあのとき、儂は躊躇ったのか。
 ――その冷静さこそが、そなたさまの碁の腕前の上達を阻んでおるということに、気づいておいでですかな。
 秀実の声が不意に甦ってくる。
 ――和尚よ、儂ははじめておのが弱さを思い知らされましたぞ。
 碁の腕前に限った話ではなかった。
 つねに冷静であろうとする自分。
 それが臆病さにつながり、なかなか前へ進もうとしないおのれの性格を形作った。堀越御所に対して乾坤一擲の大勝負をかけなかったこと、楓をわが手に引き寄せられなかったこと――すべてにおいて、うじうじした女々しさ、弱さがあった。結果としてそれが和尚の命を奪い、楓の人生の幕まで閉ざしてしまった。
 この惨劇を招いた元凶は、紛れもなく自分であった。
 ――許してくだされ、和尚。許してくれ、楓殿。
 盛時は激しい自責の念に駆られた。
 声を押し殺し、ただひたすら嗚咽する主君の様子を、太郎は痛ましげな眼差しで見詰めている。その太郎に向かって、
「頼みがある」
 盛時が震える声で言った。
「儂と碁を打ってくれ」
「はっ」
 意外な申し出に太郎は戸惑う。
 だが、盛時は言葉を重ねた。
「碁盤の在り処なら知っている。頼む。今宵一晩だけ、儂の碁敵になってくれ」
 双眸を真っ赤に充血させ、懇請するような口振りでそう言われては、太郎には拒むことなどとうていできなかった。

 盛時と太郎の対局が始まった。
 わずか数局交えただけであるにもかかわらず、太郎は盛時の豹変ぶりに驚きを隠すことができなかった。
 秀実が指摘していたとおり、盛時の最大の特徴――そして弱点は、慎重過ぎる攻め手にあった。確実と思われる手しか打たぬために好機を失うことが多かったのである。
 しかし、この日の彼は違った。実に果敢に攻め、実力的にはやや上位に立っているはずの太郎を終始圧倒した。
 やがて、夜が白んできた。
「太郎、もうよいぞ」
 さんざん勝ったにもかかわらず、笑顔ひとつ見せずに言うと、盛時は碁盤の上を綺麗に片付け、それから太郎に向かって、
「太郎、儂の頭を剃ってくれ」
 おもむろに言った。
「なんですと」
 驚く太郎に、盛時は有無を言わさぬ口調で告げた。
「儂は今日から生まれ変わる。生まれ変わって鬼となり、憎き暴君足利茶々丸を葬り去ってくれる。そのためには容赦なき戦をし、多くの民草を苦しめることとなろう。儂はこれより出家の身となりて、この後犯すであろう罪悪の数々を、先んじて御仏に詫びておかねばならぬ。これは儂の決意のあらわれでもある。もっとも、御仏がこうした思いを汲み取ってくださらず、罪業深き身として地獄へ突き落とされることとなろうとも、儂は鬼と化すことを厭いはせぬ。和尚のため、そして楓殿のために」
 凛とした声で告げた盛時の表情は、憑き物が取れたような清々しさに満ち溢れていた。

 かくして出家の身となり、法名をみずから「宗瑞」と定めた盛時は事実、鬼になった。
 彼は得意の外交手腕を駆使して、堀越公方家と対立していた名族扇谷上杉家の援助を取り付けた。さらに策謀をめぐらせ、御所内に謀叛の風聞を流させて、茶々丸にみずからの寵臣ふたり――外山豊前守と秋山蔵人を斬殺させた。外山と秋山は茶々丸の器量非凡なることを見抜き、乗っ取り劇の後も一貫して彼を支えつづけてきた。数少ない理解者だったふたりを死に至らしめることは、茶々丸にとって自身の首を絞めるに等しい行為であったが、多血質の彼は盛時の策に乗せられ、みずから墓穴を掘った。
 こうして外堀を埋めておき、もはや勝利を確信できると判断したところで、宗瑞は堀越攻めの兵を挙げた。ときに明応二年(一四九三)秋。この辺りの慎重さは、鬼と化した今もなお失われてはいなかった。
 ただし、ここからが違っていた。
近在を焼き払いながら御所に雪崩れ込んだ兵たちに対して、宗瑞はこう厳命した。
「一兵たりともここから逃すな。女、子どもに至るまで撫で斬りにせよ」
 咽喉を嗄らせて叫ぶ彼の目にはしかし、憎しみの色を見て取ることはできなかった。むしろ傍目には淡々としているようにさえ映った。むろん、秀実や楓の敵討ちという気持ちがないはずはなかったが、今の彼にはもっと大きなもの――いうなれば、使命感のような思いのほうが強かった。
 彼は本物の鬼になろうとしていた。自分が鬼にならなければ、誰かが不幸を背負ってしまう。それが、この乱世に生を受けたおのれの宿命なのだと、彼は理解していた――いや、無理矢理にでも理解しようと努めた。
 結局、戦は数刻で蹴りがついた。御所方の将兵はほとんどが討死し、茶々丸は単身城を捨てて逃れた。残された老人たちや女、子どもなどといった非戦闘員は、盛時の命によってことごとく殺害された。結果、
 ――伊勢盛時は鬼である。
 との風聞が流れ、近隣の諸豪族はみな彼に服属した。大道寺太郎などは、おそらくこの展開こそ盛時の真意だったに違いないと、主君の突然の豹変ぶりを理解したが、当の盛時はなんとも複雑な表情を浮かべたまま、日々を過ごした。

     四

 堀越御所を陥落させ、伊豆国内の韮山城へ本拠を移した宗瑞は、ただちに京へ使者を送り、既に将軍職に就いていた清晃改め義澄から激賞された。駿府の今川氏親からは、ひきつづき関東計略を推し進めるようにとの内命を下された。いわれるまでもなく、宗瑞はそのつもりである。
「茶々丸の命を奪うまで、儂はたとえ地の果てまでも追いつづけてやる」
 彼はそう明言し、実際、飽くなき執念を見せて落魄の茶々丸を追い詰め、明応七年(一四九八)八月、南伊豆は深根城においてついに自害せしめた。

 それから伊勢宗瑞は、小田原城の大森藤頼を謀略によって駆逐し、関東制圧への足掛かりを得る。さらに相模の名族三浦氏を葬り去り、地盤を揺るぎなきものとするが、それはまた後の話である。
 ――堀越攻め以来、宗瑞さまはほんとうに人が変わられたようじゃ。
 家臣たちは苛烈きわまりない戦ぶりを評して、そんなふうに噂し合った。
 たしかに、これまでの彼であれば、落剥の身となってなんの力も残していない茶々丸をあそこまで追い詰め、命をとるようなことはしなかったに違いない。
 彼は意図的にみずからの人格を変えようとした。
 鬼になろうとした。
 その決意を知る者は家中にさえ少なかった。わずかに一部始終を知る大道寺太郎のみが、盛時の覚悟を推察することができたが、その太郎ですらときに空恐ろしくなるほど、盛時の冷徹さは凄まじかった。
 こと戦場においてのみいえば、かつてのような、負けはしないものの決定的な勝ちも得られないなどという物足らなさは、完全に消え失せていた。あくまで根底には怜悧な知性に裏打ちされた緻密な作戦能力があったとはいえ、その振舞いだけを見れば、彼は紛れもなく乱世の猛将そのものであった。
 もっとも、そんな宗瑞にも変わらなかったことがある。
 あの惨劇の後、寺でひとりぼっちになった童を宗瑞は連れ帰り、みずからの身辺の世話をさせた。よく気がつく聡明な少年で、宗瑞は大いにこれを重宝したが、ただひとつ口の悪さだけは天性のものと見えて、いっこうに治らなかった。年を取ってすっかり謹直な老臣となった大道寺太郎などは、たびたび苦言を呈したが、少年は聞き入れる素振りさえ見せなかった。
 その少年が、しばしば唄うのだった。     

  臆病宗瑞 また負けた
  氏綱殿に また負けた
  はて誰なれば 勝てるやら

 秀実和尚の死後、宗瑞の新たな碁敵を務めたのは息子の氏綱であった。後に北条の姓を名乗り、小田原に百年帝国の礎を築いた男である。
 その氏綱、さすがに父譲りの頭脳明晰さを謳われた男だけあって、碁の腕前もめっぽう強かった。宗瑞は息子の前にしばしば苦杯を舐めさせられたが、その原因について、氏綱からつねづね次のように指摘された。
「父上は慎重過ぎるのでござるよ。なぜ、あの一手を躊躇われたのでござるか。あれさえ打っておけば、今ごろは勝敗が逆になっておりましたぞ」
 そんなふうに言われるたび、宗瑞は苦笑交じりにこう返すのがつねであった。
 やれやれ、人の性根とは、そう簡単には変わらぬものらしいわい……。
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