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3(完結)

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「それにしても、貴方にあんな一面があるなんて知らなかったわ。いきなり殴り飛ばすなんて」

ジョージはバツが悪そうに頭を掻いた。

「プライベートなことだし、最初は私が出る幕じゃないかもしれないとも思ったんだけどね。あの男が君の腕を掴んで喚いてるのを見て、つい……」

「いいの。心配してくれてありがとう、ジョージ」

目を見てお礼を伝えると、日に焼けた彼の頬がわずかに紅潮したように見えた。

「いや実際、余計なお世話だったみたいだ。君はしっかり者だから自分の力で対処できる。恐れ入ったよ」

「あっ、誤解しないでね! 普段は私、あんなはしたないことしないのよ。人を叩いたのもはじめて」

私が慌てて言うと、ジョージは愉快そうに声を立てた。

「ははっ、もちろん!あのくらいしないと、あの男も諦めそうになかったしね。きっと目が覚めたろう」

「だといいけど……」

私たちはそのまま私の自宅まで歩きつづけた。
はじめて教会の外で会うジョージは、真面目なだけじゃなくて、ユーモアがある。一緒にいるだけで気持ちが明るくなった。

『私は彼女の友人だ。……今はまだな』

そういえば、あれはどういう意味だったのだろう?
冗談まじりに真意を問うこともできなくて、ソワソワしてしまう。

そうこうしているうちに、あっと言う間に家の前まで来てしまった。

「今日は本当にありがとう。また後日、きちんとお礼をするわ」

「いいよお礼なんか。それより、今度から教会の帰りは私に声をかけてくれ。家まで送る」

「でも……そんな心配しないでも大丈夫なのに」

「万が一でも、またあの男が君を困らせたら嫌なんだ」

真剣な面持ちでジョージが言うから、またもや私の心拍数が上がる。

「それなら、お願いしようかしら」

「よかった。じゃあ、また」

「さよなら、今日は本当にありがとう」

そう言って私は家の正門をくぐった。

ローガンに絡まて嫌な思いをしたはずなのに、私の心は今までにないくらい晴れやかだった。

******

それから教会の日は毎回、ジョージと家路につくのが恒例になった。

お互いに奥手で、なかなか気持ちを伝え合うことができずにいたけれど、最後はジョージから言ってくれた。

「メリル・ウォード嬢。私はあなたを愛してる。結婚してほしい」

私の答えはもちろん、『イエス』だ。


【終わり】
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