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第112話

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 「あっさりとダンジョンマスターの間だな」

 優人達は一晩をダンジョン内で過ごし、現在地下60階層のダンジョンマスターの間の扉の前にいる。

 「さっさとダンジョンマスターを倒そう、気持ち悪すぎるよ。小さな虫が無数にいると背筋が震えるな」

 スノウも無言で、コクコクと頷いている。

「そうだな、行くか」

 気合を入れてダンジョンマスターの間の扉を開けて中に入ると

 「「「ヒッ」」」

 ダンジョンマスターの間の中は大中小様々なゴキブリが蠢き、その体を炎の明かりによって鈍く黒光らせているのが、より一層の嫌悪感を引き出している。


 この光景を見ると、全員が息を飲んでしまった。

 スノウが優人のズボンを強く握りしめる。

 「もう無理」

 スノウは目をそむけながら、雷魔法を放った。

 ダンジョンマスターの間全域に雷魔法が放たれた。

ゴキブリ達は、一瞬にして消え去った。

 「これで終わり」

 スノウがそう告げて、目を部屋の中に向けると

 ゴキブリが再び壁の隙間からワラワラと湧き出てきた。

 「どうして」

スノウの白い顔が更に血の気が引いていく。


 「レイア、こういうダンジョンマスターって何か謎解きが必要なのか?」

 「ええ、スノウちゃんが一瞬で全滅させたのに、すぐに復活したところを見るとよくあるタイプだと何処かに仕掛けがあって、それを解除しないとダンジョンマスターが現れないタイプね」


 「ゴキブリを倒しながら、探すか」

 スノウにこの状況は厳しいようなので、大人4人で対処することにした。

 「これだけゴキブリが出てくるってことは、何か壁か床に仕掛けがあって、それを隠すために大量のゴキブリがいるんだと思う」

 「じゃあ、もう一度ゴキブリを全滅させるか、下がってください」

 優人は3人を後ろに下げさせて、ゴキブリに向けて雷魔法を放った。


 再びゴキブリが全滅して、少しの間、壁や床がよく見えるようになった。

 「特に変わった所はないようだけど」

 「こっちもだ」

 「こっちも」

 1人1面ずつ確認をしたが、特に変わった所はなかった。


 「じゃあ、もう一回やりますよ」

 優人が再び、ゴキブリを全滅させた。それを繰り返すこともう10回目

 
 「全然、仕掛けが分かりませんね」

 「これだけゴキブリを見たら、慣れてきたけどね」

 「床に壁に天井は、異常がない」


 4人で悩んでいると、蠢めくゴキブリの中に数匹同じ黒色でも質の違う黒色のゴキブリがいることに気づいた。

 「ちょっと、試してみますね」

 優人は、神経を集中させて該当するゴキブリを1匹ずつ雷魔法で殺していった。

 「これで、目に入るうちではラストだけど」

 雷の針で、漆黒のゴキブリを刺し殺すと

 「どうやら、ユートくんの推理どおりだったね」

 先程まで部屋中に蠢いていたゴキブリが退いた。


 そして空になったダンジョンマスターの間で、次に起きたことは、左右前の壁と天井が崩れていった。

 4人は、スノウの近くに集まり、優人は崩れてきた天井を風の魔法で防ぎ、瓦礫をどかせると


 「ようやくダンジョンマスターのお目見えか」

 目の前には、優人達の体長の10倍程ある巨大なゴキブリが目の前にいた。

 「私がトドメをさす」

 少し怒り気味のスノウがそう言って、ゴキブリに雷魔法を放った。


 しかし、スノウの放った魔法はゴキブリの体に当たると、体の表面を流れ一切のダメージを与えずに終わってしまった。

 「魔法が効かないのか」

 デロックさんが火魔法、ナセルさんが水魔法、レイアが風魔法を放ったが、やはりダメージを与えられなかった。


 「物理的な攻撃しか通じないのか」

 ゴキブリを聖剣で切るのは嫌だったので、ダンジョンの宝物庫で手に入れた業物のミスリルソードを取り出し、巨大なゴキブリに斬りかかった。

 「硬いけど、斬れるな」

 優人とデロックさんとナセルさんとレイアは、自身の高いステータスを生かして無理矢理ゴキブリの脚を斬り落とし優人達は時間がかかったが、ゴキブリを倒しきった。

 「これで終わりだ」

 優人が、最後に頭に剣を突き刺すと、ピクピクと痙攣をしてからゴキブリは絶命した。
 

 

 
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