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第96話

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 エルフの村の中に入るとそこは、常春の楽園だった。

 「すごーい」

 リーンのはしゃぐ声が聞こえるが、全員も同じことを思っていた。

 村の門の外から見た景色と全然違うからだ。ファンタジーの定番である世界樹とも思える巨大な木が村と言うか里の中央にそびえ立ち、周りの家々も木製で様々な果樹や花々に囲まれて、遠巻きに見てくるエルフ達も全員が金髪でスラリとした体型で美形ばかりだった。

 「はー、此処が限られた人しか入れないエルフの村か、確かに誰でも来ることが出来たら王都のアホ貴族共が、こぞってこの場所に押し寄せてくるだろうな」

 サロパスタのセリフが冗談とは思えないほどの景色がそこにはあったのだ。

 
 「先ずは我が家に顔を見せてから、長に挨拶をしに行かないといけませんね」


 アスカさんがリーンと手を繋ぎながら先頭になって里の中を歩いていく。

 ホワイトは昨日の夜にアスカさんに抱っこされて機嫌よく、今日もポーレさんに抱っこされながら周りの様子を見ている。

 「ポーレもこんなにすごい場所で生まれ育っていたのね」

 「生まれてから、此処を飛び出すまで里の周りの森ぐらいしか出たことがなかったから、兄ちゃんが帰ってきたり、他の里から出ているみんなから話を聞いていたりしたぐらいで、他の町や村もこんな感じだと思っていたぐらいだよ」

 
 そんな話を聞きながら、里の中心の大きな世界樹を目指して歩いているように思える。


 「アスカ、あれが精霊王の爺さまが言っていた楔の木なの?」

 「そうですよ。長はあの木の麓にいますから、後で木の近くにまで行きますからね。あそこに見えるのが私とポーレの実家ですよ」

 
 アスカさんが、そう言って指差す方向を見ると大きく立派な白い木造の家があった。大きな庭も付いていてそこで洗濯物を干している人影が見える。


 「ミズキ姉だ。おーい、ただいまー」

 ポーレさんがホワイトを抱いたまま、駆け足で洗濯物を干していた人物に近づいていく。


 「ポーレちゃん。帰ってきたのね、突然家から出て行って驚いたんだから」

 「ごめんね、ミズキ姉、ただいま」

 「おかえりなさい、ポーレちゃん。その抱いている赤ちゃんはポーレちゃんの子?まあどうしましょう。お祝いをしないと」

 「違うよ、この子は今同行しているチームのメンバーなの、私の子供じゃないよ」

 「あらあら、そうだったの」


 そんなやりとりを見ながら、ようやく側にまで近づいた。
アスカさんの奥さんは、アスカさんに負けず劣らずの美貌を誇っていた。そして金髪に蒼い瞳で、綺麗系というよりも可愛い系とも言える容姿で、ニコニコとポーレさんと会話をしている。

 「あら、あなたお帰りなさい」

 「ただいま帰りました」

 アスカさんは久しぶりに奥さんに会ったのに、案外アッサリとしている。

 すると家の中から、子供が2人出てきた。

 「「お父さん、おかえりなさーい」」

 そして叫びながら、アスカさんに飛び込み、アスカさんもリーンと手を放して2人の子供を両手で受け止めた。

 アスカさんに抱きしめられて、嬉しそうに笑う子供達を見て、何も言えずに佇むホワイトとリーンだった。


 「まあ、沢山のお客様が、どうぞ家におあがりください。長旅で疲れましたでしょう」

 そうして、奥さんに誘われるまま一行は、アスカさんの自宅に入っていった。


 


 
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