異世界に行ったけど、早く地球に戻るんだ

電電世界

文字の大きさ
上 下
24 / 150

第24話

しおりを挟む
 朝いつもよりも随分早くに眼を覚まして、二度寝をしようとしたが寝付けず、宿屋の中にある井戸に行き顔を洗おうとした。

 「けどこの宿、いいお値段がしたけど値段にあうだけのベッドとか調度品だったな」

 井戸に近づくと、どうやら先客がいるそうだ

 井戸を見てみると上半身裸のアスカさんの背中が見えた。

 その煽情的な背中から腰にかけてのライン、握手した時にも思ったが、遠くから見ても分かるが凄く白くて綺麗な肌だった。

 思わず、その場でアスカさんを見続けていると肩ごしに振り返り、ガン見していた優人と目があった。

 「おはよう、ユート君」

 「うわっと、えっと、お、おはようございますアスカさん。すいませんジッと見ていてしまって」

 アスカさんに挨拶され、優人は慌てふためき挨拶をしながら後ろを向いた。

 「そんなところで、立ってないでこっちに来なよ。井戸を使いにきたんでしょう?」

 そう言われて、優人は口の中で「いや、でも」と呟いたが、その色香に誘われフラフラと井戸に近づいていった。

 「けれど、今朝はいい天気になりそうだね」

 タオルで胸を隠しながら、アスカさんが話しかけてきた。この見えそうで見えないギリギリのところ

 「あの、何で上半身裸なんですか」

 優人は天気の話題より、現状の確認を行った。

 「いつも、大体今ほどの時間に起きているからね、けれどもする事も無いから、体を清めようとおもってね。ユート君も早いね」

 「いえ、今日は何だか早く目が覚めて」

 優人の視線はアスカさんの胸元にほぼ集約される。

 「ユート君、男性の胸を見ても興奮するの?」

 アスカさんが、そう言って小悪魔的な笑みを見せた。


 「えっ、はい、そうですね・・・えっ男性の胸?」

 「だって、さっきからずっと私の胸をみてるじゃないか。だからそっちの趣味があるのかなと思って、でも私はダメだよ故郷に妻がいるからね」

 優人は、あまりの真実に目を見開き、呼吸が浅く早くなり、言葉が口を出た。

 「男、男性だったんですか」

 「そうだよ、アスカって男性の名前でしょ、勇者だった御先祖様がアスカという名前で、時折勇者様にあやかってその名前をつけるんだ」

 優人の頭の中に某ツンデレキャラがよぎったが、この世界ではアスカとは男性名らしい

 「そうなんですか、ハハハハハ」


 朝から、衝撃の事実に出くわして、目の前の金髪人妻エルフだと思っていた人が、実は男だったなんて、世の中の不条理に心の中で優人は泣いた。


 そして、優人が衝撃を受けている場所にゴーレンさんも現れた。

 「おはようございますユート君、アスカ、おやユート君はどうしたんですか、そんな驚いた表情を浮かべて」

 「おはようございますゴーレンさん、どうやらユート君は私の事を女性だと思っていたそうで」

 「ああ、昨日は皆さん顔馴染みだったから、男性であると分かっていましたからね」

 「そうだね、昔はよく間違われていたけど、この歳になってもまだ間違えられるとは思いませんでした」

 2人が、笑いあっていると。ようやく優人は再起動した。

 「けれど、見た目は完全に女性ですよね、声も女性の中でも少し低いぐらいで喉仏も出てないですし」

 「アスカは元王国の王国騎士団第一師団の師団長だった人物でついた二つ名が[麗しの騎士]でしたからね」

 「改めてそう呼ばれると恥ずかしいですね」

 片頬に手を当てて首を傾げて頬を染める人が男性だなんて、そしてそんな姿が凄く様になっている人が男だなんて

 「さて、顔を洗ったら朝食を食べて、アスカの馬車に乗るために冒険者ギルドに行かないといけませんね」

 「そうですね」

 そう言って、アスカさんの体が光に包まれて昨日のパロンさんのレストランでも見た白いローブを纏った。

 そうして、3人で朝食を食べたあと 

 冒険者ギルドに行って、追加で1人ナダムの町までの乗り合い馬車の乗り合い証を手に入れた。

 「ナダムの町へ向かう馬車は、予定が早まり昼前に出発する事になりました。乗り遅れないようにご注意ください」

 冒険者ギルドの受付嬢にそう言われて、3人は頷いた。

 しかし、優人は目の前の受付嬢を見たが、確かに美人ではあったが、アスカさんに比べたら見劣りした。男性と比べて見劣ると、考えた時点で目の前の受付嬢に失礼だったが。

 「さて、もう後ちょっとで出発の時間だ。もう馬車に向かおうか」

 そして、馬車の乗り合い場所に向かい、馬車に乗り込んだ。

 ここまでの乗り合い馬車には、優人とゴーレンさんの2人だけだったのに、冒険者用の馬車に入ると中には他にも冒険者の人達がいた。

 「混んでますね」

 「そうだね、詰めて座ろうか」

 そうして、アスカさん、優人、ゴーレンさんの順番で馬車の長椅子に並んで座った。

 隣に座るアスカさんの体温とアスカさんの香りが、男だと分かっていても優人の心を惑わした。

 「もう男でも構わないかもしれない」

 優人が口の中でそう呟くと

 「えっ、何か言った?」

 アスカさんが優人の顔を覗き込みながら聞いてきた。

 「いえ、何でもないです」

 優人は目を閉じて、体温と香りを覚えるために、神経を集中させた。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

処理中です...