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第150話 最終話
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「さあこっちだよ優人君」
ゲームのコントローラーを床に置き、神様が手を叩いて仕切り直すかのように立ち上がり優人を見下ろしながら話しかけてくる。
「どこに行くんですか」
神様に促されるように優人もコントローラーを置いて立ち上がる。立ち上がり一瞬視線を神様から外して再び戻すと先程と違い神様の側に厳かな扉が出現していた。
「さあ中へどうぞ」
神様が引戸の扉のノブを回し、空いた左手で中に進むように動かす。
扉をくぐった先は何もなく真っ暗な空間だった。唯一の明かりは扉から差し込む神様の部屋の明かりだけという状況で優人が中に入り、神様も部屋に入り扉を閉めたことにより数十センチ先にいるであろう神様が見えない程の暗さになった。
「じゃあこれからの話をしようか」
姿が見えないが神様の声だけが響き渡る。
「君は数々の試練を果たし私を打ち倒した」
神様の話す声だけが聞こえていたのが暗闇に目が慣れたのか薄ぼんやりと周囲が見え始めるようになった。
「さあ君はこの光景を見てどうする」
神様がそう告げると同時に薄ぼんやりとしていた周囲がハッキリと見えるようになった。
神様が立っているのは崩れた廃墟の上だったのだが廃墟となっている建物は地球の世界の建物のようにコンクリートのようだった。そして優人が立っている場所だけ不自然に何も無いが半径1メートルの先からはボロボロな残骸が散らばっていた。
「あの神様、ここは何処ですか」
「優人君ここは地球だよ」
神様は淡々と衝撃的な事実を伝えてくる。
「いつの間に戻ってきたんですか、それより地球ならどうしてこんな廃墟に来たんですか」
「君が転移する前の場所から近い場所へと来たんだけどね」
神様がそう言って周囲を確認するのにつられて優人も再び周囲を確認すると優人の通っていた大学だと建物の色や微かに残る建物の残骸で判断がついた。
「いや、でも何でこんなことに」
「それは君の後ろにいる存在が理由だよ」
神様が指差す先を見るために振り返ると緑色の肌をしたゴブリンが3体立っていた。ほとんど無意識に魔法を使ってゴブリンを倒したのだが、その現実を理解するのに時間がかかった。
「どうしてゴブリンがいるんですか?」
「そして魔法のなかった地球で、君はどうして魔法が使えるのかな」
「それもですけど、いやだから」
核心的な答えをはぐらかすような返答ばかりの神様に苛立ちの感情が巻き起こるが神様は全く意に返さない。
「無事に帰ってこれたんだからさ、もっと喜ぼうよ」
無言で神様を睨み返すと神様は両手を上げて説明を始めた
「優人君が巻き込まれた召喚陣の影響だね、勇者に付与するチートの代償として地球には魔力が解き放たれたんだ」
「意味が分かりません」
「召喚陣が君達二人をダクトリムに移動させた際に、チートをもった勇者と同等の魔力が地球に解き放たれたんだけど、それが呼び水となり元々土台があった地球は魔力で満ち溢れた。満ち溢れた魔力により人々は魔法を使えるようになったが同時に世界各地で魔物が現れた。人類は健闘したけど現状がこれさ」
そうして神様が手を広げて高らかに宣言する。
「さあ君は無事に地球に帰還できた。しかしこれから始まるのは能力を引き継いでニューゲームだね。今度のゲームは1周目よりも難しいけどね」
膝から崩れ落ちる優人に、神様が話しかける。
「引き継げるのは能力だけじゃないよ」
神様がそう言った後に後ろから肩に手が置かれた。
「お父さんは私が守る」
「ユートの世界か、さっさと救って旨い酒が飲みたいな」
「ここなら教国の呪縛から解放される」
聞き慣れた頼もしい声が背後から聞こえて優人は立ち上がった。
ゲームのコントローラーを床に置き、神様が手を叩いて仕切り直すかのように立ち上がり優人を見下ろしながら話しかけてくる。
「どこに行くんですか」
神様に促されるように優人もコントローラーを置いて立ち上がる。立ち上がり一瞬視線を神様から外して再び戻すと先程と違い神様の側に厳かな扉が出現していた。
「さあ中へどうぞ」
神様が引戸の扉のノブを回し、空いた左手で中に進むように動かす。
扉をくぐった先は何もなく真っ暗な空間だった。唯一の明かりは扉から差し込む神様の部屋の明かりだけという状況で優人が中に入り、神様も部屋に入り扉を閉めたことにより数十センチ先にいるであろう神様が見えない程の暗さになった。
「じゃあこれからの話をしようか」
姿が見えないが神様の声だけが響き渡る。
「君は数々の試練を果たし私を打ち倒した」
神様の話す声だけが聞こえていたのが暗闇に目が慣れたのか薄ぼんやりと周囲が見え始めるようになった。
「さあ君はこの光景を見てどうする」
神様がそう告げると同時に薄ぼんやりとしていた周囲がハッキリと見えるようになった。
神様が立っているのは崩れた廃墟の上だったのだが廃墟となっている建物は地球の世界の建物のようにコンクリートのようだった。そして優人が立っている場所だけ不自然に何も無いが半径1メートルの先からはボロボロな残骸が散らばっていた。
「あの神様、ここは何処ですか」
「優人君ここは地球だよ」
神様は淡々と衝撃的な事実を伝えてくる。
「いつの間に戻ってきたんですか、それより地球ならどうしてこんな廃墟に来たんですか」
「君が転移する前の場所から近い場所へと来たんだけどね」
神様がそう言って周囲を確認するのにつられて優人も再び周囲を確認すると優人の通っていた大学だと建物の色や微かに残る建物の残骸で判断がついた。
「いや、でも何でこんなことに」
「それは君の後ろにいる存在が理由だよ」
神様が指差す先を見るために振り返ると緑色の肌をしたゴブリンが3体立っていた。ほとんど無意識に魔法を使ってゴブリンを倒したのだが、その現実を理解するのに時間がかかった。
「どうしてゴブリンがいるんですか?」
「そして魔法のなかった地球で、君はどうして魔法が使えるのかな」
「それもですけど、いやだから」
核心的な答えをはぐらかすような返答ばかりの神様に苛立ちの感情が巻き起こるが神様は全く意に返さない。
「無事に帰ってこれたんだからさ、もっと喜ぼうよ」
無言で神様を睨み返すと神様は両手を上げて説明を始めた
「優人君が巻き込まれた召喚陣の影響だね、勇者に付与するチートの代償として地球には魔力が解き放たれたんだ」
「意味が分かりません」
「召喚陣が君達二人をダクトリムに移動させた際に、チートをもった勇者と同等の魔力が地球に解き放たれたんだけど、それが呼び水となり元々土台があった地球は魔力で満ち溢れた。満ち溢れた魔力により人々は魔法を使えるようになったが同時に世界各地で魔物が現れた。人類は健闘したけど現状がこれさ」
そうして神様が手を広げて高らかに宣言する。
「さあ君は無事に地球に帰還できた。しかしこれから始まるのは能力を引き継いでニューゲームだね。今度のゲームは1周目よりも難しいけどね」
膝から崩れ落ちる優人に、神様が話しかける。
「引き継げるのは能力だけじゃないよ」
神様がそう言った後に後ろから肩に手が置かれた。
「お父さんは私が守る」
「ユートの世界か、さっさと救って旨い酒が飲みたいな」
「ここなら教国の呪縛から解放される」
聞き慣れた頼もしい声が背後から聞こえて優人は立ち上がった。
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