異能力学園第四校

電電世界

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第1章 学園1年生前期

クラブ活動3(技術欄)

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・4月19日(金曜日)

 「お待たせ、さあ今日は僕の取材に同行だね」
 「そうですね、青葉先輩は技術欄の担当ですよね?」
 「そうだよ第四学園に本拠を構える工場や研究所、学園が運営する研究室に取材に行ったり、技術発表会や学会に行ったりして記事を書いているよう」
 「アカネ、行くぞ」
 「はいほーい」

 青葉先輩の先導で研究区に向かう道すがら、今日行く運動力制御研究所のプログラム表のデータを転送してもらえたので見てみると大きくバトルテクスチャーシステムVer.9と書かれていた。

 「バトルテクスチャーシステム?」
 「仁也は知っているか?」
 「全然だな、検討もつかないな」

 青葉先輩は二人のやりとりを微笑みながら見るだけで詳細は教えてくれないようだ。
 クラブハウスからだいぶ離れた位置にある研究区画の一角、本日成果発表会と大きく書かれた看板が目立つ研究所は年季を感じさせる少し古いコンクリート造りの建物で、青葉先輩の後について中に入ると、そこそこな人数が入っていた。

 「おう青葉、やっぱり来てたな」
 「近藤さん、こんにちは」
 「見知った顔ばかりの発表会だからな、お前も来ると思ったよ。バトテクの最新バージョンは三年ぶりの発表だからな、新顔も増えるかと思ったんだがな」

 近藤さんと呼ばれる男性と立ち話を始めた青葉先輩は暫し談笑し、後ろで棒立ちしている仁也とアカネにようやく近藤さんが気づいた。

 「後ろの二人は青葉の後輩か?」
 「そう今年入学したばかりの和田君とホオズキさんだよ、今日はこの発表会に同行してもらったんだ」
 「初めまして冒険者ギルド第四学園支部付調査員の近藤だ。以後よろしく」
 「和田仁也です。初めまして」
 「ホオズキ・アカネです」
 「ホオズキさんはもしかしてお姉さんがいるのかな?」
 「はい、いますけど」
 「お姉さんは女子校を卒業して冒険者ギルドに就職をしたのかな?」
 「そうですけど」
 「やっぱりホオズキさんの妹さんか、いや目の辺りが姉妹だからかソックリだよ」
 

 アカネにはお姉さんがいて第四学園に入学していると聞いていたけれど、まだ高等部二年生か三年生だと思っていたが、既に卒業していたらしい。
 近藤さんが言うには、アカネのお姉さんは優秀らしく現在は異世界の冒険者ギルドの支部へとアカネが学園に来たタイミングと同じようなタイミングで長期研修に行っているらしく、アカネも学園に来た初日だけ顔を合わせたらしい。

 「じゃあ俺は他にも挨拶しに行くから」
 「また一緒にご飯に行きましょう」
 「ああ、連絡するよ」

 その他にも数人の人と青葉先輩は挨拶を交わし、仁也とアカネを紹介してくれた。
 入部する前に思い描いていた記者の在り方そのままである。挨拶も終わり発表室と書かれた大きめの部屋に入ると人がまだらに埋まっていたので、前の方で三人が並んで座る事が出来る場所へと座った。

 「まあ研究結果発表会では発表の後に質問時間が設けられているんだけど、事前の情報では真新しい追加機能は無いようだから質問も少ないだろう」

 質問事項が多くなりそうな発表会では、記者のランクが高い人が優先して質疑出来るようなので今日は参加者も少ないそうなので一人一回質問をしてみようかと言われた。
 アカネと一緒に慌てふためいていると、発表会は始まってしまい覚悟を決めるしか無くなってしまった。

 「本日は魔法動体操作研究所の定時成果報告発表会を行わせて頂きます。本日発表報告を行いますのは主任研究員の田中です」

 そうして田中と呼ばれた白衣の研究着を着た四十代程の男性が壇上に上がった。

 「ご紹介に預かりました田中です。四月になり定時報告会に来てくれている記者の顔ぶれにも新しい人が増えて若干緊張していますがVer.9のバトルテクスチャーシステムの報告させて頂きます」

・バトルテクスチャーシステムとは腕時計のように両手首と両足首そしてベルトの五点を身に付けるだけで使用可能な技術である。
・ベルト型のマスター機に取り込んだデータ通りの動きを体に強制して取らせる。
・データを組み上げれば格闘ゲームのような大技でも、仁也のような格闘の素人でも決める事が出来る。

 「では今回の改良点についてですが前回までのシステムと比べて相手の攻撃を認識するスピード、処理するスピードと処理能力を当研究所比10パーセントも能力を上げる事が出来ました」
 「また組み込む事が出来るデータの容量も20パーセント増加し更に高レベルな実践に投入できるものだと自負しております」

 田中さんの発表が終わったが、前回から10パーセント程の能力が向上したという報告ばかりであった。

 「それでは質疑応答の時間に移らせて頂きます」

 司会の人の言葉で何人かの人が手を上げて、司会の人が指名して質問を行なっていった。
 数人の記者がより詳細なデータを聞き出す質問や、前回のシステムで生じた不具合の対応策などを質問していき、数人の人が質問を終えたタイミングで青葉先輩に促されて手を上げた。

 「ではそちらの黒髪の男子学生の方質問をお願いします」
 「今回のシステムを用いて体を動かした場合に、体に影響はあるんでしょうか」
 「質問ありがとうございます。システムには安全装置が備えられている為に体に規定以上の負荷が掛かった場合には緊急停止が行われます。しかし自身の能力以上の駆動を行い続けた場合には筋肉痛などが生じる可能性はあります」

 アカネも続いて質問を行い、二人の初めての質疑応答は終わった。


 「二人とも初めての質疑応答はどうだった?」
 「緊張しましたけど無事に終えられて良かったです」
 「まあこれから回数を重ねれば慣れていくよ」

 質疑応答が終わった後は隣接する試験場で、実際の性能を見て体験ができる時間が設けられているので三人で向かった。
 試験場では先程まで会場の人達が殆どいた。近藤さんも顔触れの中にいて此方へと近づいてきた。

 「やあ新人君達は初めてバトテクを見たんだろう。実際に体験をしてみたらどうだ?」
 「近藤さん、二人はまだ一年生で初卒もまだなんですよケガの恐れもあるんですから」
 「そんなケガを怖がってちゃ成長が出来ないぜ、新人君達はどうだ。バトテクやってみたくはないか?」
 「バトテクというのは今日の発表会のシステムの略称ですよね?」
 「そうだよ」
 「私はやってみたいでーす」
 「自分もです」
 「ほらな青葉、新人君達もやる気を見せているんだ。野暮な事は言うなよ」

 青葉先輩も少し考え仁也とアカネを見て頷いた。
 体験会場に着いてバトルテクスチャーシステム体験を申し出ると、仁也とアカネにスタッフの人が器具を装着してくれた。

 「起動方法は手首につけた装置のボタンを押して下さい」

 指示に従いボタンを押すと、痛くはないが体に痺れる様な衝撃が走った。

 「問題なくシステムと同期出来たみたいですね」
 「何だか不思議な感覚ですね」
 「試合をすればバトテクの凄さはより分かるよ」

 近藤さんに促されて試験場の中央にあるスペースで、アカネと向き合う。
 互いに安全面の為に、肘と膝にサポーターを着けて、頭にもフルフェイス式のヘルメットを装着している。

 「じゃあバトテクのテストバトルモードを起動するよ、最初は戸惑うかもしれないけど、体をバトテクに任せるだけだから」

 近藤さんが、仲間の研究者に合図を送ると仁也とアカネの体が勝手に動き出した。

 「おおおおお」
 「わわわわわ」

 そこからは驚きの連続だった。
 仁也がパンチを繰り出すが、アカネがそれを避けてカウンターを放つ。
 アカネの放つカウンターをいなして、仁也が更にカウンターを放つ。
 自分の動きに考えが追いつかないまま、仁也の体は激しい攻防を繰り広げていく。

 「二人とも少しは慣れてきたかな、次は大技をいってみようか」
 「ちょちょちょっと」
 「大技か、楽しみだ~」

 アカネは素直に楽しんでいるが、仁也は若干気持ち悪くなってきた。
 しかし仁也の気持ちとは裏腹に、バトテクに動かされ続ける体は、深くしゃがみ込み、体を捻りこみながらアカネに蹴りを入れようとする。
 そんなアカネも同じように跳び蹴りを放とうとする。
 そして遂に仁也とアカネの蹴りは互いの胸へと擦りながら、地面へと着地した。

 「テスト終了、テスト終了」

 胸元から機械音声が響き、バトテクの体験は終了した。

 「じゃあ良い記事を期待しているよ」
 「ああ、今日はありがとうな」
 「またな」

 青葉先輩は近藤さんと握手した後に、発表会場を後にした。
 
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感想 5

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みんなの感想(5件)

少女ハイジ
2017.09.09 少女ハイジ

四話目、ステータスA~Fの%分け、意味不明です。合計100%超えています。

解除
少女ハイジ
2017.09.09 少女ハイジ
ネタバレ含む
電電世界
2017.09.10 電電世界

感想ありがとうございます。
設定としては正社員であった会社員に限り、学園に入学する前に支払われた一年間の給与明細を提出し直近の給与の基本給のみ入学から卒業(退学も含む)まで学園より支払われます。

解除
よりより
2017.09.08 よりより

和尚が登場してますが、着流しは町人が着る物で、和尚が着るのは衣だと思います。

電電世界
2017.09.08 電電世界

文章を少し修正させてもらいました。

解除

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