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1巻
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しおりを挟む序章 異世界に行きませんか
石川良一、二十三歳独身、現在無職。
実家は小さな町の電気工事屋で、従業員は良一と父親の二人だけの零細企業であった。
幼い頃に母親を亡くした良一だったが、男手一つで育ててくれた父親に対して、深い尊敬の念を抱いていた。
そんな彼が、幼い頃から見続けてきた父親と同じ職に就くのも、当然の気持ちと言えよう。
地元の工業高校を卒業した良一は、父の紹介で二年間、隣県の大きな電気工事会社へ修業に行き、仕事のいろはを学んだ後、晴れて実家に戻った。
父親と一緒に行う仕事は大変だったが、ようやく父親に並び立つことができたようにも感じられ、良一にはそれが嬉しく、誇らしかった。
しかしそんな生活に、早くも暗雲が立ち込めることになる。
良一が修業から戻って二年目の冬のある日。
夕方、仕事を終えて帰宅した父親が、車を降りるなり胸を押さえて倒れてしまったのだ。すぐさま病院へと搬送されたが、医者の手当てもむなしく、そのまま息を引き取った。
一人残された良一に悲しみに暮れる間などなく、葬儀の準備や受託済みの仕事の処理など、慌ただしく動き続ける日々をなんとかやり繰りする――そんな状態だった。
そうしてひと月が過ぎ、家業を継ぐことを決意した良一はがむしゃらに仕事に打ち込んだ。
しかし、父親が存命していた時から不景気の煽りを受けて仕事が減っていた時分、最初のうちは馴染みの工場の担当者や、父と仲の良かった同業者が仕事を回してくれたものの、それも長くは続かなかった。
なんとか一年間頑張ってみたものの、二十代の若造ではどうしようもなく、借金は増えるばかり。とうとう、これ以上借金を重ねる前に店を畳んだ方がいいと、会計士に告げられた。
その言葉に怒りを覚えた良一だったが、この一年で自分の力不足も痛感していたので、やむなく受け入れ、今は技術を身につけて将来に繋げる時と判断したのだった。
家業を畳むと決めてからは、得意先や仕入先などへの挨拶回り。良一は行く先々で〝頑張ったな〟と温かい声をかけられた。二年間修業をしていた会社の社長からは〝再就職先を決めていないなら、うちに来ないか〟との誘いもあった。
「お言葉、ありがとうございます。ですが、一年間がむしゃらに頑張ってきた中で、自分がいかに世間知らずか気づかされました。数年かけて、資格の勉強や他業種を経験してみたいと思います」
良一はそう言って、深々と頭を下げたのだった。
一通りの挨拶回りを終えてからは、税務署で手続きしたり、実家兼倉庫を整理したりと、慌ただしくも寂しい日が数日続いた。
そんな作業もやっとのことで一段落した、ある平日の朝。
元会社でもある自宅の部屋で、ジャージ姿の良一はベッドの上でダラけていた。
「特に用事もない一日は久しぶりだな」
良一は身長百八十五センチの恵まれた体格に細身ながらも仕事でついた筋肉を纏った、しっかりした見た目であったが、性格はインドア趣味で、休みの日は部屋でネット小説を見たり無料ゲームアプリをしたりすることが多い。
その上、学校を卒業してからというもの、仕事だけに時間を費やしてきたので、少ない友人達ともすっかり疎遠になっていた。
「あ~、飛んじゃったよ……」
誰もいない部屋に良一の舌打ちが響く。スマートフォンでネット小説を読んでいたところ、誤ってバナー広告をタッチしてしまったのだ。
開いたのは、よくある漫画サイトや通販サイトではなく、何やら幾何学模様がちりばめられた不思議なデザインのサイトだった。
異世界に転移してみませんか、チート支給で君も異世界ライフ――そんな文字が躍る、見るからに胡散臭いページである。
「詐欺サイトも、こんなバレバレの手を使ってくるようになったのか」
けれども、あまり見たことのない文句に興味をそそられ、暇を持て余していた良一は、思い切ってこのサイトを見ていくことにした。
転移する先の世界の概要説明、使用通貨、エルフやドワーフなどのそこに存在するであろう種族の説明が続く。
それらのページを読み進めていくと、転移するための適性検査と書かれたページへと移った。
「設定が細かいな……全然質問が終わらない」
列挙されている質問一つ一つに答えを選択していくが、何せ数が多く、百を超えたのに半分しか終わっていない。しかし一度やり始めたなら最後までと、良一は気を奮い立たせた。
それからおよそ一時間――
「できた」
質問に全部答え、最後に〝OK〟と書かれたボタンにタッチすると……
ただ一言〝ご協力ありがとうございました〟と書かれたページに移動した。
「なんだそりゃ」
達成感が一気に霧散した良一は、表示されたページを閉じて再びネット小説を読みはじめたのだった。
「もう昼すぎか……。ラーメンでも作るかな」
いつも自炊をしている良一だが、今日は少々手を抜いてラーメンを作ることに決め、鍋に水を入れてコンロにかけた。
そこで、ピーンポーンとチャイムが鳴り響いた。
「宅配便かな?」
一旦火を止め、玄関の扉を開ける。
「こんにちは、石川良一さんでしょうか?」
すると玄関の外には、高級そうな白いスーツに身を固めて、細い銀縁フレームの眼鏡をかけた五十代後半の痩せ型のナイスミドルが立っていた。
「はい、そうですけど」
「申し遅れました。神白一と申します」
「神白さんですか……。失礼ですが、セールスか何かですか?」
自己紹介とともに渡された白い無地に名前だけが書かれた名刺を受け取りながら、良一は訝しげに問いかけた。
「いえ、セールスとは少し違います。先ほど、異世界転移ライフのサイトで回答を入力していただきましたよね。つきましては、早速異世界転移の意思の確認をと思いまして、こうしてお伺いした次第です」
目の前の人物の言葉に驚き、それ以上に呆れて、良一はしばしポカンと口を開いていた。
「……あの、本気でそんなことを言っているんですか」
「いやいや、お疑いになるのもごもっともです。では、論より証拠と言いますし、一度転移先の異世界をお見せしましょう」
神白は柔和な微笑みで良一をなだめると、胸の前で手を軽く叩く。
……すると。
周りの景色が一変した。
「こちらが転移していただく予定の異世界です。いかがでしょうか?」
見慣れた部屋は、大自然そのものとしか言いようのない森の中へと変わっていた。
良一が立っている場所は少し開けた広場といった感じだが、前方は先が見通せないほど鬱蒼と茂った木々に覆われている。
さっきまでの生活感溢れる雰囲気はどこへやら、澄んだ空気に木々の青々とした匂いが感じられる。
当然、道路や住宅といった現代日本を感じさせるものは、視界の中に何一つ存在しない。
夢か幻か、自分の頬をつねって確かめようと試みた良一に、神白が穏やかに呼びかけた。
「これは夢ではありません。現実ですよ」
「確かに……本物みたいだ」
少し歩いてみたところ、靴を履いていない素足には柔らかな土の感触があり、そばにあるどっしりとした木に触れると、ゴツゴツした樹皮の冷たさが指先から伝わってきた。
これは確かに現実だと、良一は改めて実感する。
「ちょうどあそこに、この世界の生物であるスライムがいますよ」
周囲を確認する良一に、神白が指差した。
そこには水色で透き通った歪な球体があった。バスケットボールより一回り大きいくらいのサイズだ。生物なのか、風もないのにプルプルと体を揺らしてゆっくり動いていた。
「この異世界には、人間に近い知性を持った異種族が多数存在します。そして、モンスターと呼ばれる、人に害をなすものも存在しています。このスライムもその一種ですね」
「なるほど……。プルプルしていますね」
良一が単純な感想を述べると、スライムはこちらに気づいて体を震わせながら近づいてきた。
「そして、異世界ではこのように……魔法も使えます」
神白はそう言うと、手の平をスライムに向けた。
突き出した手先にうっすらと白い半透明な色の球体が現れ、小さな風切り音を立ててスライムへと飛んでいく。
球体が当たると、軽い破裂音とともにスライムは爆散した。
「へぇ、今のが魔法ですか!」
「ええ。ごく簡単な、魔力を固めてぶつけるマジックボールという魔法です」
神白がさらりと使用してみせた魔法を見て、良一の口調に興奮が籠もった。
「石川さんも魔法を使ってみますか?」
神白の誘いに、良一は一も二もなく頷いた。
「そう緊張せずともいいのですよ。簡単ですから」
神白に言われるがまま、良一は肩幅に足を広げて右腕を前に突き出す。
「はい、こうですか」
良一の肩に神白の手が触れると、体の中に今まで実感していなかった力の存在を感知した。
「今実感してもらっているのが魔力です。魔力を手の平に集めるようにしてください。手に力を込めるようなものです。それができたら、次は先ほど見せたみたいに、魔力を球体にしてみましょう」
神白は簡単に言うが、魔力を扱うこと自体初めての良一には思うようにできない。それでも助言を受けて悪戦苦闘していると、イメージ通りの球体が完成した。
「まずはあの木に向かって放ってみてください」
良一は球体に離れて飛んでいくように念じる。すると、神白が見せた魔法よりは遅いものの、魔法の玉はまっすぐ飛んでいき、木の表面に傷をつけた。
「お見事です。無事にマジックボールが使えましたね」
「おお……! ありがとうございます」
神白に褒められて、良一の顔に笑みが浮かぶ。思えば、人から褒められることなど久しぶりだった。
「では、そろそろ戻りましょうか」
再び神白が手を小さく叩くと、次の瞬間には良一の見慣れた自宅へと戻っていた。
「お疲れ様でした。いかがだったでしょうか」
「いやあ……凄いというか、信じられないというか……。さっきまでのことは現実ですよね?」
いまだ興奮が冷めきらない良一が、呆然と足元を見下ろすと、足と床板は土で汚れていた。
「もちろんです。――あ、気がつかず申し訳ございません。すぐに綺麗にしますね」
汚れに気づいた神白が、またまた手を叩く。すると良一の足を光が包み込み、汚れていた足や床はすっかり元通りになった。
「それでは、色々とお考えになる時間が必要でしょうから、本日はこれにて。また明日参りますので、よろしくお願いいたします」
そう言って、神白は帰っていった。
◆◆◆
翌日、昨日と同じ時間に再び神白はやって来た。
「こんにちは、お邪魔してよろしいですか」
「どうぞ。汚い家ですけど」
昨日とは違って、良一は神白を客間へと通した。
「本日は異世界転移について話をさせていただきたいと思います」
良一がお茶を出してからちゃぶ台を挟んで向かいに座ると、神白は話を切り出した。
「まず先にお断りしておきますが、異世界に転移すると地球にはもう戻れないと考えてください。この前体験していただいたように、行ったり来たりすることはできません」
真剣な顔でそう言われて、良一は重々しく頷きながら考えた。
「この〝異世界転移制度〟は、昨今の事情を鑑みてできたものなのです」
「昨今の事情……ですか?」
「はい。昨今、神による不祥事や偶発的な事故などで多数の人々が人知れず異世界へと転移されています。とはいえ、異世界転移を全面的に禁止してしまうと、本当に必要な人々を救済することができなくなってしまいます。そこで主神は、異世界転移に関するガイドラインを策定したのです」
「はあ……なんだか神様も大変なんですね」
神白は小さく苦笑しながら続けた。
「ええ。それで、実際の施行を前に、異世界転移が及ぼす影響の実態調査にご協力いただく方を募集しておりました。石川良一さん、あなたはその第一号です。もちろん、誰でも転移できるわけではありません。あなたに適性があったからこそ、選ばれたのですよ」
「なんとなく分かりました。ちなみに、断るとどうなるんですか」
「昨日のことや私に関する記憶を消すだけです」
アッサリ〝記憶を消す〟などと言ってのける神白に驚きながらも、良一は昨日の出来事を考えれば不可能ではないと実感して背筋を正した。
「今までは異世界転移する際に様々な神々が独自に転移者に力を与えていたので、その帳尻合わせが大変だったのです。そこで、異世界転移に関するすべてのことを主神の管轄に変更した……というのが、内々の事情です」
神白は苦笑しながら懐から何やら書類を取り出して、良一に手渡した。
「こちらの目録をお読みください。サイトにも簡単に記載しておりますが、転移時に与えられるチート能力が書かれております」
良一は黙って書類に目を落とす。
――異世界転移に関して支給される目録――
一.《神級鑑定》《全言語取得》《取得経験値・成長率十倍》《アイテムボックス》上記、四個のアビリティを付与する。
二.第一項以外に転移者が望むアビリティを三個まで付与する。
三.転移者には永久に水が湧き出る水筒と、蓋をすれば中身が戻る弁当箱を支給する。
四.転移者が望む神の贈り物を三点まで支給する。
五.以上の支給する能力およびアイテムは、神への反逆などを行なった場合には剥奪する。
「随分色々と貰えるんですね」
「まあ、今回はテストケースとして、多めに支給させていただきます」
なるほど、と納得した良一に、今度は辞書のように分厚い書物が手渡された。
「こちらが、支給できるアビリティの事典です。アビリティには五段階の階級があり、下から順に初級、中級、上級、特級、神級と上がっていきます」
「具体的に、どういうものなんですか?」
「そうですね……所持するだけで身体能力が上昇したり、体の構造が変化したりします。向こうの世界では修練を行うことや神から与えられるなどして手に入れます」
良一がパラパラと事典をめくっただけでも、剣術や弓術といった戦闘技術、商売に鍛冶など、種類は多岐にわたっていた。
神白の言葉を聞きながら、良一は食い入るようにアビリティの事典を見ていた。
「アビリティに関してはゆっくりご覧になってください。次はゴッドギフトについてご説明しましょう。これは石川さんが想像した道具を主神が作製するというものです」
「自分の想像したものですか」
「そうです。しかし、何事にも限度がありますので、要望通りの品を作製することはできないかもしれませんが」
「もし前向きに考えていただけるようでしたら、事典は置いていきますから、支給してほしいアビリティなどを決めておいてください。今度は三日後に参りますので、よろしくお願いいたします。お茶、ご馳走様でした」
「お粗末様です。少し考えてみます」
良一はそう言いながら、どこか上の空で玄関まで神白を見送る。この時すでに、彼の心は異世界に行くことにかなり傾いていた。
良一とて、日本での生活や、知人友人に未練がないわけではない。それでも、家族と仕事を失い、人生を再スタートしようというこのタイミングで転がり込んできた異世界転移の話に、大きな魅力を感じたのだ。
◆◆◆
それから三日後。やってきた神白を家に上げると、良一は紙を差し出した。
「ほう……拝見させていただきます」
神白は一度頷いてから紙を手に取り、読みはじめた。
「支給するアビリティ三個は《神級再生体》《神級分身術》《神級適応術》ですか。戦闘系や生産系のアビリティがありませんが、大丈夫ですか?」
「戦闘系は想像ばかり膨らんで何が良いのか分からないので、転移先で模索します。生産系も習得方法はなんとなく分かるから、どうにかなるかと。それで、特異系のアビリティにしました。これは習得方法が分かりませんしね」
「なるほど、よくご覧になっている。選ばれた三つのアビリティがあれば、大抵のことでは死なないでしょう。せっかく転移するのですから、それが一番大事です」
「向こうではモンスターに襲われたとしても、すぐに病院に行けないかもしれないと思って。今まで大きな怪我や病気は一度もしたことはないですけど、念には念を入れて……」
「回復魔法がありますが、万能ではありませんからね。その点《神級再生体》を使えば、体の部位欠損や病気も大抵のものは治すことが可能です」
神白は満足げに何度も頷いた。
「さて……ゴッドギフトはこちらですか。中に入ったものが増殖する箱、最新情報に常に更新される地図、こちらの世界から物を持っていくことができるコンテナ。……ふむ」
神白はリストを確認すると、目を閉じて何かを考えはじめる。
「……後の二つに関しては問題ないでしょう。ただ、中の物を増殖することが可能な箱は作成可能ですが、要調整です。そうですね……増殖させる物に相当する価値の代償を払う必要があることにしましょう。この条件がないと、他のゴッドギフトが増殖できてしまいますからね」
良一はそこまでのことを考えていたわけではないので、神白が提示した条件に納得して応じる。
「分かりました。では、その条件でお願いします」
その返答に頷いてから、神白は要望の紙をもう一度読んで良一に顔を向けた。
「念のため確認しますが、異世界に転移するということでよろしいですね?」
「はい、異世界に転移したいです」
「そうですか、ありがとうございます。差し出がましいですけれども、会社はよろしいのですか?」
「生前、父には好きに生きろと言われていたので。会社を畳んだこのタイミングは、何かの縁なのかなと思いまして」
「なるほど。かしこまりました。では異世界転移について詳細を詰めていきましょう」
ちゃぶ台を挟んで良一の向かいに腰を下ろした神白が、机上に書類を置く。
「こちらから支給するアビリティと石川さんが望むアビリティ、それからゴッドギフトですが……転移する際に主神に会っていただくので、その時に主神より付与されます」
「でも、コンテナについては先に貰わないと、持っていくものの準備ができませんよね?」
良一が口を挟むと神白はあごに手をやって少し考える。
「それもそうですね。コンテナはお持ちですか?」
「隣の倉庫に一個中古のものがあります。それじゃダメですか?」
「見せてもらえますか」
「もちろん。倉庫はこの家の裏です」
早速、良一は立ち上がって、神白を裏の倉庫に案内した。
シャッターを上げると埃が舞い上がり、湿気た空気がむっと立ちこめてきた。倉庫の中は会社を畳んだ際の状態で、電線などの材料もほとんどなく、ガランとしている。
その隅に、十フィート(およそ三メートル)サイズのコンテナが鎮座していた。
「なるほど、あのコンテナですね」
「そうです」
神白はコンテナを見てから倉庫内を見回すと、ニコリと微笑んだ。
「コンテナと言わず、この倉庫全体で良いのではないでしょうか。倉庫内にある物は全て、付与されるアイテムボックスに入るようにしておきます」
「いいんですか! じゃあ、色々と準備しないと」
思わぬサービスを得られ、良一の顔が輝く。
倉庫一杯なら、かなり色々な物を異世界に持ち込めそうである。
「では、あともう少しだけ向こうの世界の知識をお伝えしておきましょう」
神白はそう言うと、手持ちの鞄から取り出したパンフレットを開きながら説明を続けた。
「石川さんが転移する世界はスターリアと言います。先日体験していただきましたが、魔法が存在し、人間を襲うモンスターもいます。文明はこの世界の……そうですね、中世頃と考えてください。ただし、地域によっては十八世紀程度まで発展しております。現在、魔王の存在は確認されておりませんが、周期的に考えると石川さんが転移して五年後に現れる可能性があります」
「ま、魔王!?」
突然出てきた単語に、良一が素っ頓狂な声を上げる。
どうやら、ネット小説でもお馴染みの悪の親玉が転移先にも存在するらしい。
「もしかして俺、転移したら勇者になるんですか?」
「石川さんが勇者になるとは限りません。場合によっては、石川さん自身が魔王になる可能性もありますよ」
「俺が魔王ですか……」
勇者以上に実感が湧かず、良一は口を閉ざして唸り声を漏らす。
「スターリアでは、魔王は、魔力を操り世界に混沌と恐怖をもたらす者達の王と定義されています。魔人と呼ばれる種族はいますが、彼らの王ではありません。現に、二代前の魔王は人間でした」
神白は淡々とした口調のまま、重要な情報をポンポン出してくる。
「異世界転移を行うにあたって、我が主神側から石川さんの生き方を束縛することはありません。石川さんが読んでいる小説のように、スターリアにない道具を発明して巨額の利益を生み出したり、成長の早いステータスを生かしてモンスターを倒して名を馳せたり……あるいは田舎村で静かに暮らすのも良し。どうぞ自由にお過ごしください」
物騒な単語に警戒したが、逆に考えればいきなり魔王と戦わされるような目には遭わないということである。
良一は気を取り直して頷いた。
「分かりました」
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