揺れる想い

古紫汐桜

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僥倖~俺の悪い癖?~

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「何?添田はアンチ長塚なの?」
何気無く聞いた小野に、めちゃくちゃ怖い顔で
「はぁ?アンチなんてもんじゃないね!私の可愛いたまちゃんを、毎回毎回泣かせやがって!」
プリプリ怒る添田に
「でも、なんでそんなに添田は田上に入れ込むの?」
と、健太が素朴な疑問で聞くと
「たまちゃんはさ、どんな噂を聞いても『自分がちゃんと話をして納得しない限りは、噂を信じない』って言ってさ。自分だって辛い思いしてるのに、絶対に人を色眼鏡で見ないの。それって、出来るようで出来ないと思う」
添田はそう呟いて俯いた。
すると石塚も頷いて
「分かる!私の事も、普通に接してくれてね。『噂、聞いた事あるでしょう?』って聞いたら『え?私、人の噂が嫌いだから聞かない主義なの』って笑って私を受け入れてくれたの。私、何にも聞かないたまちゃんに凄く救われたよ」
そう続けた。
「たまちゃんは、もっともっと愛されて良いと思うんだよね」
添田の言葉に、小野がニヤニヤしている。
「だって、さ~とし!」
肘で俺の腕をグリグリと押すので
「うるせえ!」
と、額を叩いた。
実際、田上はどんな人にも分け隔て無く接して、それが八方美人と言う奴も居れば、好感を持っている奴もいる。受け止め方は人それぞれだけど、俺は友達にそんな風に大切に思われている田上がやっぱり好きだと思った。
「まぁ、かなり鈍感な所があるけど……待って上げて欲しいんだ」
添田の言葉に
「何故に俺と田上が付き合う前提?」
と質問すると
「そりゃ~、私らが味方に着いたんだから!」
そう言って、石塚と腕を組んで笑っている。
(いや、頼むから放っておいて欲しい)
心からの願いは、二人には言えないけど……。
正直、田上には笑っていて欲しいとは思うし、それが俺の隣だったらぶっちゃけ嬉しいとは思う。
でも、俺だって人間だから、田上を泣かせる日があるかもしれない。
何だか二人に理想を押し付けられているようで、少し苦しかった。
(俺を、聖人君子だとでも思っているのだろうか?)
添田と石塚を見て、深い溜め息を吐いた。
「まぁまぁ……良いじゃん、良いじゃん!反対って、言われてる訳じゃないんだし!」
「そうそう!堅苦しく考えるのは、聡の悪い癖だよ!」
小野と健太に背中を叩かれ、笑われてしまう。
(俺の悪い癖ねぇ~)
苦笑いを浮かべていると、田上がこちらに走って来ているのが目に入る。
私も慌ててロビーに向かうと
「遅い!」
健太が怒った顔をわざとして叫ぶと
「ごめんなさい」
田上が小さくなって謝る。
健太は吹き出してから
「な~んてな!」
と言うと
「今日の抹茶パフェ、たまちゃんの奢りで解決したから」
そう言われて、田上が顔面蒼白になっている。
俺達は顔を見合わせて
「無理無理!お小遣い無くなっちゃうよ!」
と叫ぶ田上に背を向けて歩き出した。
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