揺れる想い

古紫汐桜

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僥倖~添田の言葉と自分の気持ち~

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朝食を食べ終わり、部屋に荷物を取りに行ったら直ぐに集合!と話していたのに、実際に現れたのは石塚と添田の二人だった。
「あれ?たまちゃんは?」
と聞いた健太に、二人は俺の顔を見て言いづらそうに
「長塚君と……」
そう呟いた。
モヤっとした瞬間
「出た!地味イケメン!」
叫んだ小野に、添田が吹き出す。
「言い得て妙よね」
「ぶっちゃけ、たまちゃんは意外に面食いなんだな。俺、たまちゃんは性格重視だと思ってた」
添田が笑っていると、健太がポツリと呟く。
「健ちゃん、それって長塚君が性格悪く聞こえるよ」
ポツリと呟く石塚に、健太が
「そうじゃねぇけどさ……」
と濁すと
「ねぇ、たまちゃんもいないんだし、ぶっちゃけ田川君はたまちゃんをどう思ってるの?」
添田がズバッと聞いて来た。
俺が呆気に取られていると
「たまちゃんには長塚がいるじゃない?それでもたまちゃんにちょっかいを出しているのは、何で?」
真っ直ぐ俺を見て聞く添田に
「ちょっかいを出す……って言われたら、そうかもしれないけど……。確かに俺は田上が好きだけど、でも長塚から無理矢理奪おうとか思って無い。ただ……」
そう呟くと、添田はジッと俺を見つめ
「ただ?」
と聞き返して来た。
「俺は田上には笑っていて欲しいし、泣いていたら慰めたいって思う。俺の気持ちがあいつに迷惑になっていたとしても、今は傍に居て支えてやりたいんだ……」
そう呟いた。
すると添田はニヤリと笑い
「まぁ、合格かな?」
と呟いた。
「まぁさ、あんたがいい加減な気持ちでたまちゃんにちょっかい出してないのは……なんとなく分かってたよ。でも、私の言葉から逃げたら、邪魔してやろうと思ってたんだ」
そう言って笑った。
「邪魔って……」
驚いて呟くと
「それに最近、悩んでるみたいだったし」
そう添田に言われてみて、確かに口に出してみたら、なんかスッキリした気分になっているのが不思議だ。
(あぁ……そうか。俺は、付き合うとかそういう事より、田上の笑顔を傍で見ていたいし、あいつの笑顔を守りたかったんだ……)
「ふふふ、スッキリしたって顔してる。あのさ、自分の中で考えるのも必要だけど、時には口に出す事も大事だよ」
添田の言葉に俺は頷いて
「ありがとう、なんか気持ちの整理出来たわ」
と呟くと、添田は笑って
「私もさ、たまちゃんには泣き顔より笑っていて欲しいからさ」
そう言って、俺の背中を叩いた。
「私は!私は田川君とたまちゃん派だから!」
突然、石塚が叫んだ。
「たまちゃんを一途に想い続ける田川君。そんな田川君が、たまちゃんには相応しいから」
遠くを見つめる石塚に
「あ……嫌、俺、そこまでは……」
と呟くと、健太に肩を叩かれ
「ごめん。繭花、お前らに幻想を抱いてるから」
そう言って苦笑いを浮かべた。
「え?幻想?」
戸惑う俺に
「そう。繭花には、お前が少女漫画のヒーローに見えるみたいだよ」
と続いた。
「え?何で?少女漫画のヒーローなら、長塚じゃねぇのの?」
俺の言葉にピクリと石塚が反応して
「見た目じゃないのよ!見た目じゃ!たまちゃんのピンチの時に、颯爽と現れてヒロインたまちゃんを助けるヒーロー。素敵な恋愛よねぇ~」
明後日の方角を見て呟く。
「石塚?俺、マジでそんなんじゃ……」
呟く俺の肩を健太がポンポンっと叩くと
「聡、ドンマイ」
と呟かれ
「聡……大変だな。下手にたまちゃんに手を出したら、二人に殴られるな……」
小野が続いて呟いた。
「いや、俺的には……そっと見守って……」
「「「「無理!」」」」
4人の声が響いた。
「はぁ……」
俺が深い溜め息を吐いて、添田に真面目に答えた事を後悔していると
「長塚くぅ~ん!何処?」
物凄い形相で、ホテル内を探し回る青山が見えた。
「あれはあれで……大変そうだな……」
ポツリと呟いた健太に
「はぁ?たまちゃんという者がありながら、はっきりしない長塚が悪いでしょう!」
青山に負けず劣らない形相で、添田が呟いた。
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