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蚕の恋
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分かってる。
私みたいに、縦も横も大きなのが相手にされないって……。
俯いた私に
「何してるの?」
と、背後から声が聞こえた。
驚いて振り向くと、石橋君が立っていた。
「あ!健太、聞いて聞いて。この子、健太が好きらしいよ」
笑って言われてしまい、ギュッとスカートを握り締めた時
「それが何?なんでお前がそんな風に言うの?」
目を据わらせて呟いた。
「え?」
「前から思ってたけどさ、聡の彼女だからって馴れ馴れしく健太って呼ばないでくれる?」
そう言って石橋君がゆっくりと私に近付いて来た。
そして俯いている私の両肩を掴むと
「ほら、猫背にならない。俯かない。石塚さんは、もっと自分に自信を持ちなよ」
と、グイッ姿勢を直す。
驚いて見上げた石橋君が、優しく微笑んで私の頭を撫でた。
すると石橋君は私の腕を掴み
「及川ってさ、見た目が可愛くても性格がブスだよな」
って、及川さんに吐き捨てて歩き出した。
「なっ!」
怒った及川さんが口を開こうとすると
「と……言う事で、後はお任せします。聡君」
そう続いて、及川さんが驚愕の色を浮かべた。
ゆっくりと物陰から田川君が現れて、及川さんと向かい合っている。
私はどうなるのか心配だったけど、ズンズンと歩く石橋君に引き摺られるように体育館で待つ夕美ちゃんの元へと連れて行かれた。
「繭花!大丈夫だった?」
心配そうにしていた夕美ちゃんが、私に抱き着いた。
「健太もありがとう!」
と石橋君に言うと
「前から思ってたけど……石塚さんの名前、可愛い名前だよね」
って言われた。
「えッ!」
ビックリする私に
「繭の花で繭花でしょう?俺も繭花ちゃんって呼んでも良い?」
にっこり笑って言われて、コミュ力の高い人って凄いなぁ~と、思わず石橋君を見つめてしまった。
すると背後から田川君が現れて、石橋君の頭を掴むと
「健太、石塚が困ってるだろう?」
そう言って歩き出した。
「あれ?聡、もう良いの?」
「話は終わったからな」
と答えると、私の顔を見て
「怖い思いをさせてごめん」
そう言って頭を下げた。
「え!田川君は悪くないよ」
驚いて叫んだ私に
「もう、大丈夫だから」
と言うと、ふわりと優しい笑顔を浮かべた。
田川君は誰にでも優しいから、それが原因で彼女と口論になる事が多いとは聞いていた。
モテるから彼女は出来るみたいだけど、誰にでも優しいから「本当に私が好きなの?」って喧嘩になって、結局、別れてしまうらしい。
「ほら!健太、部活戻るぞ」
私達に背を向けて、田川君が体育館の中に入って行く。
「あ!待てよ、聡!じゃあね、夕美、繭花ちゃん」
ヒラヒラ手を振り、石橋君も田川君を追って体育館の中へと消えて行った。
この日から、何故か石橋君は私を「繭花ちゃん」と呼ぶようになった。
私みたいに、縦も横も大きなのが相手にされないって……。
俯いた私に
「何してるの?」
と、背後から声が聞こえた。
驚いて振り向くと、石橋君が立っていた。
「あ!健太、聞いて聞いて。この子、健太が好きらしいよ」
笑って言われてしまい、ギュッとスカートを握り締めた時
「それが何?なんでお前がそんな風に言うの?」
目を据わらせて呟いた。
「え?」
「前から思ってたけどさ、聡の彼女だからって馴れ馴れしく健太って呼ばないでくれる?」
そう言って石橋君がゆっくりと私に近付いて来た。
そして俯いている私の両肩を掴むと
「ほら、猫背にならない。俯かない。石塚さんは、もっと自分に自信を持ちなよ」
と、グイッ姿勢を直す。
驚いて見上げた石橋君が、優しく微笑んで私の頭を撫でた。
すると石橋君は私の腕を掴み
「及川ってさ、見た目が可愛くても性格がブスだよな」
って、及川さんに吐き捨てて歩き出した。
「なっ!」
怒った及川さんが口を開こうとすると
「と……言う事で、後はお任せします。聡君」
そう続いて、及川さんが驚愕の色を浮かべた。
ゆっくりと物陰から田川君が現れて、及川さんと向かい合っている。
私はどうなるのか心配だったけど、ズンズンと歩く石橋君に引き摺られるように体育館で待つ夕美ちゃんの元へと連れて行かれた。
「繭花!大丈夫だった?」
心配そうにしていた夕美ちゃんが、私に抱き着いた。
「健太もありがとう!」
と石橋君に言うと
「前から思ってたけど……石塚さんの名前、可愛い名前だよね」
って言われた。
「えッ!」
ビックリする私に
「繭の花で繭花でしょう?俺も繭花ちゃんって呼んでも良い?」
にっこり笑って言われて、コミュ力の高い人って凄いなぁ~と、思わず石橋君を見つめてしまった。
すると背後から田川君が現れて、石橋君の頭を掴むと
「健太、石塚が困ってるだろう?」
そう言って歩き出した。
「あれ?聡、もう良いの?」
「話は終わったからな」
と答えると、私の顔を見て
「怖い思いをさせてごめん」
そう言って頭を下げた。
「え!田川君は悪くないよ」
驚いて叫んだ私に
「もう、大丈夫だから」
と言うと、ふわりと優しい笑顔を浮かべた。
田川君は誰にでも優しいから、それが原因で彼女と口論になる事が多いとは聞いていた。
モテるから彼女は出来るみたいだけど、誰にでも優しいから「本当に私が好きなの?」って喧嘩になって、結局、別れてしまうらしい。
「ほら!健太、部活戻るぞ」
私達に背を向けて、田川君が体育館の中に入って行く。
「あ!待てよ、聡!じゃあね、夕美、繭花ちゃん」
ヒラヒラ手を振り、石橋君も田川君を追って体育館の中へと消えて行った。
この日から、何故か石橋君は私を「繭花ちゃん」と呼ぶようになった。
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