71 / 158
長塚side~通り雨~
しおりを挟む
久しぶりに実家帰省すると
「重、結婚は?」
「そろそろあんたも落ち着いたら?」
両親から口うるさく言われて、溜め息を吐く。
「一時期遊んでたから、バチが当たったのよ」
姉貴の言葉にカチンと来て、玄関に向かう。
「重信!まだ話は終わってないのよ!」
母さんの声を背中で聞きながら、玄関で靴を履いて家を飛び出した。
「はぁ……」
深い溜め息を吐く。
今や30代で未婚は珍しくは無いのに、両親は俺の顔を見る度に「結婚」を口にする。
今まで、たくさんの女性と付き合っては来た。
大学時代には、不誠実な付き合いもたくさんして来た。
どんなに綺麗な人と付き合っても、若くて可愛い子と付き合っても、思い出す人が居る。
「長塚くん」
「くん」の部分の音が、少しだけ上がる彼女の声。
俺を見つけると、全身で「大好き!」と訴える眼差しも笑顔も、その頃は当たり前だと思っていた。
中学まで私立の男子校に通っていたので、高校から公立の共学に通いだして、女の子との付き合い方なんて知らなかった。
硬派がカッコイイんだと信じて疑わなかったあの頃。
もっと上手く付き合えていたら、俺達は変わっていたのだろうか?
そんな事を時々思ったりしてしまうのは、未練があるからなのだろうか?
彼女の事を思い出して歩いていると、神社から降りて来た親子に目が止まる。
最後の1段を
「せ~の!」
と3人で言うと、低い階段をジャンプして降りた。
楽しそうな笑い声を上げる、いかにも絵に書いたような幸せそうな家族をぼんやりと眺めていると、子供を真ん中に手を繋いで歩く母親の顔を見て息を呑んだ。
年齢を重ねているけど、幸せそうに笑う彼女の笑顔だった。
そして、そんな彼女を気遣うように、彼女とは反対側の娘の手を握りながら、彼女に手を差し出して大きな荷物を受け取ると、肩に掛けて幸せそうに笑う父親の顔に見覚えがあった。
二人の幸せそうに笑う顔を見て、過去に引き戻されて行く。
「重、結婚は?」
「そろそろあんたも落ち着いたら?」
両親から口うるさく言われて、溜め息を吐く。
「一時期遊んでたから、バチが当たったのよ」
姉貴の言葉にカチンと来て、玄関に向かう。
「重信!まだ話は終わってないのよ!」
母さんの声を背中で聞きながら、玄関で靴を履いて家を飛び出した。
「はぁ……」
深い溜め息を吐く。
今や30代で未婚は珍しくは無いのに、両親は俺の顔を見る度に「結婚」を口にする。
今まで、たくさんの女性と付き合っては来た。
大学時代には、不誠実な付き合いもたくさんして来た。
どんなに綺麗な人と付き合っても、若くて可愛い子と付き合っても、思い出す人が居る。
「長塚くん」
「くん」の部分の音が、少しだけ上がる彼女の声。
俺を見つけると、全身で「大好き!」と訴える眼差しも笑顔も、その頃は当たり前だと思っていた。
中学まで私立の男子校に通っていたので、高校から公立の共学に通いだして、女の子との付き合い方なんて知らなかった。
硬派がカッコイイんだと信じて疑わなかったあの頃。
もっと上手く付き合えていたら、俺達は変わっていたのだろうか?
そんな事を時々思ったりしてしまうのは、未練があるからなのだろうか?
彼女の事を思い出して歩いていると、神社から降りて来た親子に目が止まる。
最後の1段を
「せ~の!」
と3人で言うと、低い階段をジャンプして降りた。
楽しそうな笑い声を上げる、いかにも絵に書いたような幸せそうな家族をぼんやりと眺めていると、子供を真ん中に手を繋いで歩く母親の顔を見て息を呑んだ。
年齢を重ねているけど、幸せそうに笑う彼女の笑顔だった。
そして、そんな彼女を気遣うように、彼女とは反対側の娘の手を握りながら、彼女に手を差し出して大きな荷物を受け取ると、肩に掛けて幸せそうに笑う父親の顔に見覚えがあった。
二人の幸せそうに笑う顔を見て、過去に引き戻されて行く。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
推活♡指南〜秘密持ちVtuberはスパダリ社長の溺愛にほだされる〜
湊未来
恋愛
「同じファンとして、推し活に協力してくれ!」
「はっ?」
突然呼び出された社長室。総務課の地味メガネこと『清瀬穂花(きよせほのか)』は、困惑していた。今朝落とした自分のマスコットを握りしめ、頭を下げる美丈夫『一色颯真(いっしきそうま)』からの突然の申し出に。
しかも、彼は穂花の分身『Vチューバー花音』のコアなファンだった。
モデル顔負けのイケメン社長がヲタクで、自分のファン!?
素性がバレる訳にはいかない。絶対に……
自分の分身であるVチューバーを推すファンに、推し活指南しなければならなくなった地味メガネOLと、並々ならぬ愛を『推し』に注ぐイケメンヲタク社長とのハートフルラブコメディ。
果たして、イケメンヲタク社長は無事に『推し』を手に入れる事が出来るのか。
イケメン御曹司、地味子へのストーカー始めました 〜マイナス余命1日〜
和泉杏咲
恋愛
表紙イラストは「帳カオル」様に描いていただきました……!眼福です(´ω`)
https://twitter.com/tobari_kaoru
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私は間も無く死ぬ。だから、彼に別れを告げたいのだ。それなのに……
なぜ、私だけがこんな目に遭うのか。
なぜ、私だけにこんなに執着するのか。
私は間も無く死んでしまう。
どうか、私のことは忘れて……。
だから私は、あえて言うの。
バイバイって。
死を覚悟した少女と、彼女を一途(?)に追いかけた少年の追いかけっこの終わりの始まりのお話。
<登場人物>
矢部雪穂:ガリ勉してエリート中学校に入学した努力少女。小説家志望
悠木 清:雪穂のクラスメイト。金持ち&ギフテッドと呼ばれるほどの天才奇人イケメン御曹司
山田:清に仕えるスーパー執事
隠れドS上司の過剰な溺愛には逆らえません
如月 そら
恋愛
旧題:隠れドS上司はTL作家を所望する!
【書籍化】
2023/5/17 『隠れドS上司の過剰な溺愛には逆らえません』としてエタニティブックス様より書籍化❤️
たくさんの応援のお陰です❣️✨感謝です(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎)
🍀WEB小説作家の小島陽菜乃はいわゆるTL作家だ。
けれど、最近はある理由から評価が低迷していた。それは未経験ゆえのリアリティのなさ。
さまざまな資料を駆使し執筆してきたものの、評価が辛いのは否定できない。
そんな時、陽菜乃は会社の倉庫で上司が同僚といたしているのを見てしまう。
「隠れて覗き見なんてしてたら、興奮しないか?」
真面目そうな上司だと思っていたのに︎!!
……でもちょっと待って。 こんなに慣れているのなら教えてもらえばいいんじゃないの!?
けれど上司の森野英は慣れているなんてもんじゃなくて……!?
※普段より、ややえちえち多めです。苦手な方は避けてくださいね。(えちえち多めなんですけど、可愛くてきゅんなえちを目指しました✨)
※くれぐれも!くれぐれもフィクションです‼️( •̀ω•́ )✧
※感想欄がネタバレありとなっておりますので注意⚠️です。感想は大歓迎です❣️ありがとうございます(*ᴗˬᴗ)💕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる