宵の月

古紫汐桜

文字の大きさ
上 下
15 / 33

運命の番と、家が決めた婚約者

しおりを挟む
僕の反応に恭弥は驚いて動きを止めた。
「月夜…お前、入れただけでイッたのか?」
そう言われて、羞恥に顔が赤くなる。
日浦太陽に抱かれて分かったのは、運命の番だからなのか…。
確かに今までと違う、身体の奥から湧き上がる快楽はあった。
でも、8年間抱かれ続けた恭弥の身体は、それとは違う感情に襲われた。
僕の中を侵す恭弥の形、熱さ、硬さ…。
全てが僕を狂わせる。

他の人に抱かれて気付いたのは…、僕は恭弥を愛していたんだ。
だから、身体だけの関係が辛かったし、悲しかった。
身体と心のバランスが崩れて、僕は恭弥でヒートを起こす事が出来なくなっていたんだ。
僕の腰を掴み、灼熱の楔を打ち付ける恭弥の背中をそっと撫でる。
ビロードのような滑らかな肌と、引き締まった筋肉で覆われた身体は本当に綺麗だ。
僕の中に自分の雄を突き入れて穿ち、汗に濡れた恭弥の綺麗な顎から滴る汗さえも愛おしく思えた。
でも…、僕と恭弥は兄弟なのかもしれない。
そうなったら、僕は恭弥の子供を身篭る訳にはいかない。
でも…この感情に気付いてしまった途端、恭弥の子供が欲しいと願う自分が居た。
「月夜?…今日は、どうした?」
今まで感じた事の無い快楽に、恭弥が触れる場所全てが性感帯になったように感じてしまう。
何度も何度も空イキして、頭がおかしくなりそうな程だった。
そんな僕に、恭弥が驚いた顔で見下ろす。
「恭弥……離さないで……」
縋り付く僕に、恭弥はそっと頬に触れて
「運命の番と結ばれると……、こんなに変わるんだな……」
恭弥はそう悲しそうに呟いた。
「違……う……っ!恭弥だから……」
首を振って否定する僕に、恭弥は切なそうな顔で僕に口付けを落とすと
「何度抱いても……俺には……。俺に抱かれる月夜は人形みたいだった……」
そう言われた。
僕が目を見開くと
「ごめんな……、月夜」
ポツ……ポツ……と、恭弥の涙が頬に落ちては流れて行く。
「俺には、お前をこんな風にしてあげる事が出来なかった」
そう呟く恭弥の熱が、僕の中でゆっくりと萎えて行く。
「違う……恭弥、聞いて。僕は……」
「これ以上!もう……これ以上、俺を惨めにさせないでくれ……」
恭弥の言葉に声を失う。
「お前が高校だけは出たいのは知ってる。だから、それまでは我慢してくれ……。高校を卒業したら、自由にさせてやる」
恭弥はそう言うと、すっかり萎えた恭弥自身を僕から引き抜き、衣類を身に纏うと離れを後にした。
あんなに熱かった筈の身体は冷えて行き、僕は自分の犯した罪に気付いた。
傷付けられていたと思っていたのに、傷付けていたのは僕の方だったんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

これがおれの運命なら

やなぎ怜
BL
才能と美貌を兼ね備えたあからさまなαであるクラスメイトの高宮祐一(たかみや・ゆういち)は、実は立花透(たちばな・とおる)の遠い親戚に当たる。ただし、透の父親は本家とは絶縁されている。巻き返しを図る透の父親はわざわざ息子を祐一と同じ高校へと進学させた。その真意はΩの息子に本家の後継ぎたる祐一の子を孕ませるため。透は父親の希望通りに進学しながらも、「急いては怪しまれる」と誤魔化しながら、その実、祐一には最低限の接触しかせず高校生活を送っていた。けれども祐一に興味を持たれてしまい……。 ※オメガバース。Ωに厳しめの世界。 ※性的表現あり。

運命の息吹

梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。 美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。 兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。 ルシアの運命のアルファとは……。 西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。

ベータの兄と運命を信じたくないアルファの弟

須宮りんこ
BL
 男女の他にアルファ、ベータ、オメガの性別が存在する日本で生きる平沢優鶴(ひらさわゆづる)は、二十五歳のベータで平凡な会社員。両親と妹を事故で亡くしてから、血の繋がらない四つ下の弟でアルファの平沢煌(ひらさわこう)と二人きりで暮らしている。  家族が亡くなってから引きこもり状態だった煌が、通信大学のスクーリングで久しぶりに外へと出たある雨の日。理性を失くした煌が発情したオメガ男性を襲いかけているところに、優鶴は遭遇する。必死に煌を止めるものの、オメガのフェロモンにあてられた煌によって優鶴は無理やり抱かれそうになる――。 ※この作品はエブリスタとムーンライトノベルズにも掲載しています。 ※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。普段から作中に登場する事柄に関しまして、現実に起きた事件や事故を連想されやすい方はご注意ください。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

あの日の僕らの声がする

琴葉
BL
;※オメガバース設定。「本能と理性の狭間で」の番外編。流血、弱暴力シーン有。また妊娠出産に関してメンタル弱い方注意※いつも飄々としているオメガの菅野。番のアルファ葉山もいて、幸せそうに見えていたが、実は…。衝撃の事実。

合鍵

茉莉花 香乃
BL
高校から好きだった太一に告白されて恋人になった。鍵も渡されたけれど、僕は見てしまった。太一の部屋から出て行く女の人を…… 他サイトにも公開しています

偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜

白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。 しかし、1つだけ欠点がある。 彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。 俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。 彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。 どうしたら誤解は解けるんだ…? シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。 書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

処理中です...