猫被りなきみと嘘吐きな僕

古紫汐桜

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誕生日、おめでとう

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すると海は僕の肩に額を乗せると
「いや……あの……、想像以上にやばいです」
そう言って、僕を抱き締める腕を緩めて顔を見つめた。
「え? やっぱり似合わない?」
羞恥心が込み上げて、慌てて取ろうとすると海の手が僕の手を掴み
「折角、綺麗に結んだんですから、俺に解かせて下さい」
そう言ってから
「でも……、直ぐに解くのは勿体ない気もする」
と呟くと、海が鞄をゴソゴソと探り出した。
僕は慌てて腰を掴んで引き止めると
「何をするつもりだ?」
と海に目を据わらせて訊いてみた。
「え? 写メ撮りたいです。動画も良いですか? しばらく、これで抜けます!」
真剣に言う海に
「ばっ……馬鹿なんじゃないの!」
と叫んで
「写メも動画もダメ!」
そう叫ぶと、海はしょんぼりと悲しそうな顔をしてスマホを鞄に戻した。
その姿は、餌をお預けされた子犬のようで……、僕は何にも悪くないのに、何故か罪悪感に苛まれてしまう。
すると海は、頭に赤いリボンを着けた僕を抱き上げると
「じゃあ、目に……脳裏に焼き付けます!」
そう言うと、僕をベッドへと優しく下ろし、頬を両手で覆って上を向かせた。
愛おしそうに見つめる海の視線に、僕の心臓がドキドキと高鳴る。
そっと唇が重なり抱き寄せられた時
「あ! ごめん。大事な事、忘れた」
と、ムードをぶち壊す声で叫んで海から離れると、海と向き合う形でベッドの上に正座した。
そんな僕に合わせて、海もベッドに正座して向き合うと
「まだ誕生日にはなっていないけど……。お誕生日おめでとう、海。生まれて来てくれて、そして僕と出会って、僕を愛してくれてありがとう」
心からそう伝えた。
「和哉さん……」
今にも泣きそうな顔で僕を見つめる海の頬に触れると
「僕には何もないけど……、今、この瞬間から僕の未来を全て海に上げる」
そう伝えた。
すると海は驚いたように目を見開き、僕を凝視している。
「海、愛しているよ。未来永劫、僕の心も身体も……全て海に捧げるよ」
そう言うと、海がポロポロと涙を流し始めたのだ。
「ええ! ここで泣く?」
驚く僕に
「ずっと……あなたが好きでした。初めて会ったあの日からずっと……。だから、夢みたいで……。きっと和哉さんは、俺と離れても平気なんだと……。いつもと変わらない生活をしているんだと思っていました。だから……、こんな風に祝って頂けて……しかも、こんな凄いプレゼントまで……」
そう言って僕を抱き締めた。
「全然、平気じゃないよ! 毎日、毎日、海の事を想っていたよ!」
僕は海の首に手を回して言うと
「海……恋しいって、こんな気持ちなんだな」
と呟いた。
すると海の唇が、僕の唇を荒々しく奪う。
押し倒されて、何度もキスを重ねた。
やっと唇が離れて、海の唇が僕の肌を伝う。
僕がそっと海の頭を抱き寄せ
「海……返品は認めないからな……。覚悟しろよ」
そう呟くと、海は僕の胸の所で結ばれたリボンを解きながら
「俺が一番欲しかったプレゼントを、返品する訳ないでしょう」
と言って僕の手を掴み、握り締めた手を海の唇に持って行き僕の指先にキスを落とした。
「海、海!」
空いている左手で海に必死に抱き着くと、海の逞しい左腕が僕の腰を抱き寄せた。
お互いの中心の昂りが重なり、ブルリと身体が震える。
すると海は僕にキスをしながら
「すみません。こんな可愛いことをされてしまったので、手加減出来ません」
そう囁いた。
僕は海を両手で抱き締めて
「手加減なんてしなくて良い……。思い切り……思い切り抱いて……」
そう答えた。
「和哉さん……」
見つめ合い、何度も唇を重ねながら
「遠慮しなくて良い。僕の身体に、海を刻み込んで……」
と呟くと、海が余裕の無い顔で僕の身体にむしゃぶりついた。
……僕のこの発言が、後々後悔することになるとは、この時は夢にも思わなった。

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