猫被りなきみと嘘吐きな僕

古紫汐桜

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久しぶりの温もり

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 僕と海は、しばし再会を噛み締め合った後、僕が宿泊するホテルへと向かった。
向かう電車内で、海は
「どうしたんですか?」
「何かあったんですか?」
「一時帰国ですか?」
「アメリカにはいつ戻るんですか?」
と、矢継ぎ早に質問攻めしてきた。
僕は苦笑いしながら、海の質問へ回答にして行く。
急にお休みがもらえたから一時帰国したけど、明日の夕方には帰国すると伝えると、海は少し寂しそうに笑った。
その顔が捨てられた子犬みたいで、「もう、本当に可愛いな!」って思っていたのは此処だけの話。
……小関さんは海が格好良くなったと言っていたけど、僕から見たら少し大人びたけど……そんなに変わらなく見えるんだけどなぁ~。
そんな事を考えていると、ホテルの部屋へと到着した。
すると
「あ、この部屋……」
と海が呟いたので
「前に泊まって以来だよね」
そう僕が苦笑いしながら答えると
「あ……いえ。俺、今、小関さんの法律事務所でお手伝いさせてもらっているんですけど、クリスマスイブに泊まれるようにホテルを至急抑えろって言われたんですよ。だから『デートですか』って、めっちゃいじってしまったので……」
そう言って苦笑いした後
「まさか、和哉さんだったとは思いもしませんでした」
と苦笑いする海に、僕はそっと抱き着いた。
ふわりと香る海の香りにホッとすると、ゆっくり僕の身体を抱き締めながら
「和哉さん、おかえりなさい」
噛み締めるように言われて、僕は海を見上げて
「ただいま、海」
そう答えて、海の胸に顔をうず埋めた。
僕がギュッと海を抱き締めて
「海……」
と名前を呼ぶと
「はい」
と返事が返って来る。
それが嬉しくて、何度も何度も名前を呼んでしまう。すると海が強く僕を抱き締めて
「和哉さん……可愛いすぎます」
そう叫ぶと、そっと僕の両頬を両手で包んで顔を上に向かせた。
目を細めて、僕の顔を優しい笑顔を浮かべて見つめている。
なんだか恥ずかしくて、俯こうとすると
「ダメです。もっと良く顔を見せて下さい」
そう言って、ゆっくりと顔を近付けて来た。
僕もゆっくりと瞳を閉じると、海の唇が僕の唇に触れる。
軽く触れた唇が離れると、僕の額、目蓋、鼻先に触れ、頬に唇が触れると
「夢じゃないんですね」
噛み締めるように呟いた。
「会いたかったです」
「うん、僕も会いたかった」
見つめ合って言葉を交わす。
再び唇が重なり、離れては重なる。
僕が強く海の首に抱き着いたのを合図に、お互いに貪るような口付けを交わす。
腰が砕けて立てなくなると、海は僕を抱き上げて寝室へと歩き出した。
僕が移動している間も、ずっと海の頬や首にキスを落としていると、ベッドにゆっくり下ろされ、キスを交わしながら自分の衣服を脱ぎ捨てた。
1分1秒も惜しくて、裸で抱き合う。
触れた肌の温もりが愛しくて、ただ抱き合っただけなのに身体が震える。
久し振りの海の体温と肌の感触を確かめるように、背中に回した手で海の背中を撫でると、海は僕の腰を抱き寄せ、熱を持って勃ち上がったお互いを重ね合わせた。
「あっ……」
小さく喘ぐと、海が僕の右頬にそっと触れて、反対側の頬にキスを落とす。
僕も海の頬を両手で包み、そっと頬を撫でると、海は僕の頬に触れていた右手で、海の頬に触れている僕の右手を掴んで指先にキスをした。
「少し……痩せました?」
僕の腰からお尻のラインに触れて聞かれ
「食べ物が合わなくて……」
苦笑いを浮かべると
「自炊、覚えた方が良いですよ」
そう言われてしまう。
僕が唇を尖らせて
「早く海がこっちに来いよ。お前の手料理が食べたい」
そう答えると、海は困ったように笑って
「そんな可愛い事言われると、明日、一緒に行きたくなるじゃないですか!」
と言われて
「じゃあ、連れて行こうかな? 僕が餓死する前に……」
そう答えて微笑み返す。
……本当は、そんな事は無理な事だって分かっている。
だから今、時間を惜しんでこうして抱き合っているのだから……。
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