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小さな奇跡

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 あれからアメリカに渡り、僕の生活は大槻教授のハードスケジュールで慌ただしく過ぎて行った。
海とは時差があるから、LIMEでの定期連絡が多いものの、離れている感じがしないのが不思議だ。
 そして僕のスマホの待ち受けは、あの日撮ってもらった写真の海の部分だけ。
自分の姿は恥ずかしいから、そこはカットして、海の優しく僕を見る笑顔に癒されている。

「あ~! 疲れたぁ~!!」
自宅にしているアパートへ戻り、ベッドに突っ伏す。
LIMEの海は、運動会やら文化祭やらで何やら忙しそうだけど、楽しそうなのが伝わって来る。
体育着を着た4人の写真を見ると、当たり前なんだけど
「海って、高校生なんだよな~」
って呟きながら実感する。
今まで送られて来た画像を見て、文化祭の海のウエイター姿に口元が綻ぶ。
(あ、もちろん。写真にはお仲間が写っているけどね。やっぱり海がダントツカッコイイ)
スマホの画面の海の姿に、会いたさがつのる。
今までは、こんなに死ぬ程忙しい時は、誰かに会いたいなんて思った事なんか無かったけど……。
不思議と、今は忙しければ忙しい程、海が恋しい。
「海に会いたいなぁ~。海の作ったご飯、食べたいなぁ~」
ふと見上げたカレンダーが、いつの間にか12月になっていた。
日本から持参したカレンダーには、あの日、海が落書きした文字だけがそこにある。
「海の誕生日か……。帰れそうにないな~」
ぽつりと呟き
『和哉さん』
僕を呼ぶ海の声を思い出す。
海はすぐ、僕の頬に触れる癖がある。
その時に僕を見つめる目は、いつだって愛おしそうに細められていた。
「海……大好き……。会いたいよ……」
ぽつりと呟いた時、突然、僕のスマホが鳴り響いた。
ドキッとして慌てて画面を見ると、大槻教授からだった。
まぁ、テレビドラマみたいに、こんなタイミングで海から連絡が来る訳が無いと苦笑いしながら
「Hello」
電話に出た僕は、奇跡って起こるんだってそう思った。
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