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全てを知って
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「それってさ、僕が酷い奴みたいじゃないか!」
海の話を聞いて、僕が頬を膨らませると
「でも……事実ですから……」
苦笑いを浮かべる海を、僕はギュッと抱き締めた。
元から人に興味が無かったが、先生を失ってから余りにも人に対して無関心にし過ぎた事が招いた事だと反省した。
「ごめん」
ぽつりと呟くと、海は小さく笑って
「俺もいけなかったんです。もっと早くに、和哉さんに本当の事を伝えるべきでした」
そう言うと、僕を優しく抱き締めた。
こいつは……まだ高校生の癖に、やたらと達観し過ぎているのが気に入らない。
「でも……早くに言われてたら、海の事を好きにならなかったかも」
なんて、ちょっと意地悪したくなって冗談っぽく言うと、海は慌てた顔で
「え! そんな!」
と叫んだ。
その顔が情けなくて、僕は思わず吹き出して笑ってしまう。
こんなにもスーパー揃っている奴が、僕の言葉で一喜一憂する姿が……なんか僕の悪戯心を刺激するんだよなぁ~。
そんな事を考えていると、海は頬を膨らませて
「冗談でも止めて下さい。心臓に悪い」
そう呟いた顔が、本当に悲しそうだった。
その時、僕はどれだけ海を傷付けていたんだろうって反省した。
頭脳明晰、容姿端麗、スポーツ万能で家事もこなすスーパーマンなのに、誰よりも僕を一途に愛してくれる存在。
きっと海が望めば、どんな女の子だって簡単になびくだろうに……。
それでも海は、僕を……僕だけを必要としてくれる唯一無二の存在。
僕は海の頬を両手で包み
「海。すぐに離れちゃうけど、でも僕は、もう海以外の人にこの身体も心も許す気は無いからね」
そう気持ちを伝えた。
海の目が、大きく見開かれて微動だにしないので
「……と言っても、信憑性が無いか」
僕が自嘲気味に笑うと、海は僕の身体をぎゅっと抱き締めて
「信じます! 俺、和哉さん以外の人は目に入りませんから」
そう言って微笑んだ。
その言葉に
「ブーゲンビリア……」
ふと、入院している時にもらった栞を思い出してぽつりと呟くと
「え? 何です?」
と聞き返された。
僕は抱き締めている海の手からすり抜けて、自分の鞄へと走る。
そして文庫本を出すと、海に栞を手渡した。
「花の名前 ブーゲンビリア
花言葉 あなたしか見えない」
そう書かれた栞を見ると、海は真っ赤な顔をして
「これ、俺じゃないです」
と叫んだのだ。
僕がちょっとガッカリすると、海が僕を抱き寄せて
「でも、俺の気持ちそのものですね。さすが、俺の友達です」
そう呟いた。
「え?」
僕が疑問の視線を投げると
「この栞、俺の親友の彼女が入れてくれたんです。俺達が上手く行きますようにって、祈りを込めて」
そう答えた言葉を聞いてわこの栞にそんな思いが込められていたんだと知った。
そしてあの時、捨てなくて良かったと心からホッとした。
僕は大切に栞を本に挟むと、小さく微笑み
「そっか……。じゃあ、感謝しなくちゃだな」
と言って海の膝に跨いで座り、首に手を回す。
どちらからともなく唇が重なり、触れるだけのキスを何度か繰り返す。
そして見つめ合い、今度はお互いに貪り合うように激しい口付けを交わした。
「海……抱いて……」
そう囁くと
「お腹はもう大丈夫ですか?」
と言われて、小さく微笑んだ海が労わるように僕のお腹をさする。
僕が恨みの視線を向けて
「分かってる癖に」
と唇を尖らせると、海は額にキスを落として僕を抱き上げると、ベッドへと連れて行く。
ゆっくりとベッドに下ろされて、もつれるようにベッドへと2人で沈んで行く。
最後の夜は、温かい人達の気持ちに支えられて今の僕達があるんだと知る事が出来た。
重なる手を見つめて、もう、この手を決して自分から手放さないと心に誓った。
「和哉さん、愛しています」
囁く声は、もう泣いていない。
胸が熱くなる程甘い声となって、僕の心へと溶けて行った。
果てる時、息をつめて少し眉を寄せる顔。
僕の中で熱い迸りが弾けた時、詰めていた息を吐き出す口元。
荒い呼吸を整える時、思わずゾクリとする程に色気のある表情。
全てを焼き付けようと思って、見つめていた。
ゆっくりと抱き締める海の背中に手を回す。
このまま、繋がったまま2人で一つになれたらどんなに良いのだろうと思う。
「海、愛してる」
僕の言葉に、汗で濡れた海の顔が優しく微笑む。
好きな人の穏やかな笑顔に、僕は満たされた気持ちで目を閉じた。
海の話を聞いて、僕が頬を膨らませると
「でも……事実ですから……」
苦笑いを浮かべる海を、僕はギュッと抱き締めた。
元から人に興味が無かったが、先生を失ってから余りにも人に対して無関心にし過ぎた事が招いた事だと反省した。
「ごめん」
ぽつりと呟くと、海は小さく笑って
「俺もいけなかったんです。もっと早くに、和哉さんに本当の事を伝えるべきでした」
そう言うと、僕を優しく抱き締めた。
こいつは……まだ高校生の癖に、やたらと達観し過ぎているのが気に入らない。
「でも……早くに言われてたら、海の事を好きにならなかったかも」
なんて、ちょっと意地悪したくなって冗談っぽく言うと、海は慌てた顔で
「え! そんな!」
と叫んだ。
その顔が情けなくて、僕は思わず吹き出して笑ってしまう。
こんなにもスーパー揃っている奴が、僕の言葉で一喜一憂する姿が……なんか僕の悪戯心を刺激するんだよなぁ~。
そんな事を考えていると、海は頬を膨らませて
「冗談でも止めて下さい。心臓に悪い」
そう呟いた顔が、本当に悲しそうだった。
その時、僕はどれだけ海を傷付けていたんだろうって反省した。
頭脳明晰、容姿端麗、スポーツ万能で家事もこなすスーパーマンなのに、誰よりも僕を一途に愛してくれる存在。
きっと海が望めば、どんな女の子だって簡単になびくだろうに……。
それでも海は、僕を……僕だけを必要としてくれる唯一無二の存在。
僕は海の頬を両手で包み
「海。すぐに離れちゃうけど、でも僕は、もう海以外の人にこの身体も心も許す気は無いからね」
そう気持ちを伝えた。
海の目が、大きく見開かれて微動だにしないので
「……と言っても、信憑性が無いか」
僕が自嘲気味に笑うと、海は僕の身体をぎゅっと抱き締めて
「信じます! 俺、和哉さん以外の人は目に入りませんから」
そう言って微笑んだ。
その言葉に
「ブーゲンビリア……」
ふと、入院している時にもらった栞を思い出してぽつりと呟くと
「え? 何です?」
と聞き返された。
僕は抱き締めている海の手からすり抜けて、自分の鞄へと走る。
そして文庫本を出すと、海に栞を手渡した。
「花の名前 ブーゲンビリア
花言葉 あなたしか見えない」
そう書かれた栞を見ると、海は真っ赤な顔をして
「これ、俺じゃないです」
と叫んだのだ。
僕がちょっとガッカリすると、海が僕を抱き寄せて
「でも、俺の気持ちそのものですね。さすが、俺の友達です」
そう呟いた。
「え?」
僕が疑問の視線を投げると
「この栞、俺の親友の彼女が入れてくれたんです。俺達が上手く行きますようにって、祈りを込めて」
そう答えた言葉を聞いてわこの栞にそんな思いが込められていたんだと知った。
そしてあの時、捨てなくて良かったと心からホッとした。
僕は大切に栞を本に挟むと、小さく微笑み
「そっか……。じゃあ、感謝しなくちゃだな」
と言って海の膝に跨いで座り、首に手を回す。
どちらからともなく唇が重なり、触れるだけのキスを何度か繰り返す。
そして見つめ合い、今度はお互いに貪り合うように激しい口付けを交わした。
「海……抱いて……」
そう囁くと
「お腹はもう大丈夫ですか?」
と言われて、小さく微笑んだ海が労わるように僕のお腹をさする。
僕が恨みの視線を向けて
「分かってる癖に」
と唇を尖らせると、海は額にキスを落として僕を抱き上げると、ベッドへと連れて行く。
ゆっくりとベッドに下ろされて、もつれるようにベッドへと2人で沈んで行く。
最後の夜は、温かい人達の気持ちに支えられて今の僕達があるんだと知る事が出来た。
重なる手を見つめて、もう、この手を決して自分から手放さないと心に誓った。
「和哉さん、愛しています」
囁く声は、もう泣いていない。
胸が熱くなる程甘い声となって、僕の心へと溶けて行った。
果てる時、息をつめて少し眉を寄せる顔。
僕の中で熱い迸りが弾けた時、詰めていた息を吐き出す口元。
荒い呼吸を整える時、思わずゾクリとする程に色気のある表情。
全てを焼き付けようと思って、見つめていた。
ゆっくりと抱き締める海の背中に手を回す。
このまま、繋がったまま2人で一つになれたらどんなに良いのだろうと思う。
「海、愛してる」
僕の言葉に、汗で濡れた海の顔が優しく微笑む。
好きな人の穏やかな笑顔に、僕は満たされた気持ちで目を閉じた。
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