74 / 96
思い出~海の回顧録㉙
しおりを挟む
翌日、なにやら1階が大騒ぎになっていた。
俺は部屋で謹慎中だったから、部屋から出る事は許されなかったので
(騒がしいな~)
くらいに思っていた。
すると渚が部屋を飛び出して
「俺も行く! それで、相馬先生は大丈夫なの?」
と叫んで、玄関から飛び出して行くのが聞こえた。
その一言で、和哉さんに何かあったのは分かった。
でも、ここで俺が飛び出したら……。
そう考えて、何も出来ない自分を呪う事しかできなかった。
不安を抱えて部屋に居ると、部屋のドアがノックされてドアが開いた。
ベッドに座って頭を抱えていた俺に
「海。小関弁護士から、粗方話は聞いた。何故、関係を強要したと嘘を吐いた?」
と、父さんが呟いた。
意味が分からなくて顔を上げると
「お前と相馬さんが、きちんと付き合っていたと聞いた。恋愛だったら、とやかく言うつもりは無い」
そう言うと、ゆっくり俺の前に座った。
「相馬さんは今、肺炎で入院している。発見された時には意識が無くて、今も昏睡状態らしい」
と言われて、俺は慌てて立ち上がる。
でも、あぁ……別れたんだって、崩れるようにベッドに座ると、俺の様子を見て
「なぁ、海。父さんはお前が例え男性と付き合ったからと言って、闇雲に反対はしない。きちんと、お前の話を聞かせてくれないか?」
と言うと、俺を真っ直ぐに見つめた。
「父さん……ごめん……」
俺はそう呟くと、和哉さんとの出会いをぽつりぽつりと話し始めた。
父さんは馬鹿にしたり言葉を遮る事無く、黙って俺の話を聞いてくれた。
そして最後に
「そうか……、お前も辛かったな」
と言うと、優しく俺の頭を撫でて
「守ると決めたらなら、最後まで守り抜きなさい」
そう言って背中を押してくれたのだ。
俺の話を聞き終わると、親父は俺の手に紙を握らせて
「相馬さんの入院先と、入院している部屋だ。学校終わりなら小関さんも居ないだろうから、様子を見るくらいならして来なさい」
と言うと
「殴って悪かったな」
そう言い残して部屋を出て行った。
俺は父さんの書いた紙を握り締め、溢れる涙を流したまま
「ありがとう」
と呟いた。
俺は部屋で謹慎中だったから、部屋から出る事は許されなかったので
(騒がしいな~)
くらいに思っていた。
すると渚が部屋を飛び出して
「俺も行く! それで、相馬先生は大丈夫なの?」
と叫んで、玄関から飛び出して行くのが聞こえた。
その一言で、和哉さんに何かあったのは分かった。
でも、ここで俺が飛び出したら……。
そう考えて、何も出来ない自分を呪う事しかできなかった。
不安を抱えて部屋に居ると、部屋のドアがノックされてドアが開いた。
ベッドに座って頭を抱えていた俺に
「海。小関弁護士から、粗方話は聞いた。何故、関係を強要したと嘘を吐いた?」
と、父さんが呟いた。
意味が分からなくて顔を上げると
「お前と相馬さんが、きちんと付き合っていたと聞いた。恋愛だったら、とやかく言うつもりは無い」
そう言うと、ゆっくり俺の前に座った。
「相馬さんは今、肺炎で入院している。発見された時には意識が無くて、今も昏睡状態らしい」
と言われて、俺は慌てて立ち上がる。
でも、あぁ……別れたんだって、崩れるようにベッドに座ると、俺の様子を見て
「なぁ、海。父さんはお前が例え男性と付き合ったからと言って、闇雲に反対はしない。きちんと、お前の話を聞かせてくれないか?」
と言うと、俺を真っ直ぐに見つめた。
「父さん……ごめん……」
俺はそう呟くと、和哉さんとの出会いをぽつりぽつりと話し始めた。
父さんは馬鹿にしたり言葉を遮る事無く、黙って俺の話を聞いてくれた。
そして最後に
「そうか……、お前も辛かったな」
と言うと、優しく俺の頭を撫でて
「守ると決めたらなら、最後まで守り抜きなさい」
そう言って背中を押してくれたのだ。
俺の話を聞き終わると、親父は俺の手に紙を握らせて
「相馬さんの入院先と、入院している部屋だ。学校終わりなら小関さんも居ないだろうから、様子を見るくらいならして来なさい」
と言うと
「殴って悪かったな」
そう言い残して部屋を出て行った。
俺は父さんの書いた紙を握り締め、溢れる涙を流したまま
「ありがとう」
と呟いた。
5
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…
まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。
5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。
相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。
一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。
唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。
それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。
そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。
そこへ社会人となっていた澄と再会する。
果たして5年越しの恋は、動き出すのか?
表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。


日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。


消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる