猫被りなきみと嘘吐きな僕

古紫汐桜

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思い出~海の回顧録㉙ 

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 翌日、なにやら1階が大騒ぎになっていた。
俺は部屋で謹慎中だったから、部屋から出る事は許されなかったので
(騒がしいな~)
くらいに思っていた。
すると渚が部屋を飛び出して
「俺も行く! それで、相馬先生は大丈夫なの?」
と叫んで、玄関から飛び出して行くのが聞こえた。
その一言で、和哉さんに何かあったのは分かった。
でも、ここで俺が飛び出したら……。
そう考えて、何も出来ない自分を呪う事しかできなかった。
不安を抱えて部屋に居ると、部屋のドアがノックされてドアが開いた。
ベッドに座って頭を抱えていた俺に
「海。小関弁護士から、粗方話は聞いた。何故、関係を強要したと嘘を吐いた?」
と、父さんが呟いた。
意味が分からなくて顔を上げると
「お前と相馬さんが、きちんと付き合っていたと聞いた。恋愛だったら、とやかく言うつもりは無い」
そう言うと、ゆっくり俺の前に座った。
「相馬さんは今、肺炎で入院している。発見された時には意識が無くて、今も昏睡状態らしい」
と言われて、俺は慌てて立ち上がる。
でも、あぁ……別れたんだって、崩れるようにベッドに座ると、俺の様子を見て
「なぁ、海。父さんはお前が例え男性と付き合ったからと言って、闇雲に反対はしない。きちんと、お前の話を聞かせてくれないか?」
と言うと、俺を真っ直ぐに見つめた。
「父さん……ごめん……」
俺はそう呟くと、和哉さんとの出会いをぽつりぽつりと話し始めた。
父さんは馬鹿にしたり言葉を遮る事無く、黙って俺の話を聞いてくれた。
そして最後に
「そうか……、お前も辛かったな」
と言うと、優しく俺の頭を撫でて
「守ると決めたらなら、最後まで守り抜きなさい」
そう言って背中を押してくれたのだ。
俺の話を聞き終わると、親父は俺の手に紙を握らせて
「相馬さんの入院先と、入院している部屋だ。学校終わりなら小関さんも居ないだろうから、様子を見るくらいならして来なさい」
と言うと
「殴って悪かったな」
そう言い残して部屋を出て行った。
俺は父さんの書いた紙を握り締め、溢れる涙を流したまま
「ありがとう」
と呟いた。
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