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思い出~海の回顧録⑯
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結局、あの日は終電ギリギリに帰宅。
門限を破ってしまい、父さんがリビングで待っていた。
「海、公立に入ったからと言って、ハメを外すな」
と言われしまう。
「あの……。明日、友達の誕生日なんです。どうしてもお祝いしたいので、友達の家に泊まっても良いですか?」
火に油を注ぐのは分かっているが、父さんにお願いすると
「海。お前は今日、門限破ったのを分かっているよな?」
怒った顔で言われて
「分かって……います。でも……、どうしてもお祝いしたいんです。明日、友達は帰りが遅いらしくて……」
必死に食い下がると、親父は溜め息を吐いて
「もっとうまい嘘を吐け」
と言われてしまう。
「嘘じゃないです! 本当に明日、誕生日で!」
そう叫ぶと、親父は苦笑いを浮かべて
「私が言ってる嘘はそっちじゃない。お前、恋人が出来たんじゃないのか?」
と呟いた。
「毎日、帰りが門限ギリギリ。勉強はその後しているようだが、毎週土曜日になると、部活終わりに直接向かって外泊。それで友達なのか?」
父さんの言葉に俯く。
『恋人』
俺はそう思っているけど、和哉さんの気持ちが分からない。
「お前が無理矢理、脅して恋人にしたんじゃないか! 僕の意思は関係無い」
そう言われたら、何も言えなくなってしまう。
黙っている俺に、父さんはどう受け取ったのかは分からないけど
「まぁ……良い。きちんと、節度を持った交際をしなさい。……分かっているとは思うが、きちんと避妊はしなさい。何かあっても、お前では責任が持てないのだから」
そう言われて、握り拳を握り締めるだけで、父さんに何も言い返せない自分が情けなかった。
翌日、俺は自宅で食事をした後、和哉さんの家に押し掛けてサプライズを決行した。
和哉さんの帰宅は思ったより遅く、11時過ぎに帰宅して来た。
暗闇の中で帰宅を待っている間に、うつらうつらと眠っていたら鍵を開ける音に目を覚まして、慌ててクラッカーを鳴らした。
「お誕生日おめでとうございます!」
そう叫んで迎え入れた和哉さんは、目を真ん丸にして僕を見ていたっけ。
「お前……なんで?」
和哉さんが驚いて呟いたその時、遠くからサイレンの音が響き渡り、何故か警察車両が何台もやって来た。
どうやら、クラッカーの音に驚いた住民が、警察を呼んだらしい。
俺達は、警察官にこっぴどく怒られてしまい、和哉さんと2人でひたすら頭を下げて謝罪しまくった。
和哉さんには呆れた顔をされたけど
「お前……、夜中にクラッカー鳴らして警察呼ばれるとか……」
そう言うと、突然、大爆笑し始めた。
2人でお腹抱えて笑った後、コージー○ーナーのケーキをプレゼントすると、きっと美味しい料理を食べてお腹がいっぱいだろうに、プレゼントしたケーキを一個全部食べてくれた。
「お前……いつ帰るか分からないから、今日は来なくて良いって言ったのに……」
呆れた顔をされたけど、和哉さんは嬉しそうに笑ってくれて、本当に嬉しかった。
「今日、泊まれるんです!」
和哉さんを抱きしめてそう言うと、和哉さんは顔を引きつらせて
「今日は……無理だからな」
と言って来た。
「分かってますよ。だから、今日は和哉さんを抱き締めて眠っても良いですか?」
そう訊くと、顔を赤らめて
「か……勝手にしろよ」
と答えた。
時間はまだ23:30
俺は和哉さんを後ろから抱き締めて、少し柔らかい髪の毛にキスを落とすと
「お誕生日おめでとうございます、和哉さん」
そう呟いた。
「さっき言われた」
本を読んでいる和哉さんに冷たく言われ
「そうですけど……」
俺は唇を尖らせてそう言いながら、和哉さんの肩に顎を乗せる。
「でも……この世に生まれて来てくれて、俺と出会ってくれてありがとうって思うんです」
そう呟くと、和哉さんは
「なんだよ、それ。恥ずかしい奴」
と言いながら、耳まで真っ赤にしていたっけ……。
この日、俺は先にシャワーを浴びて、パソコンで資料をまとめている和哉さんを横目にベッドに入った。
和哉さんのパソコンの画面を見つめる真剣な横顔と、キーボードを叩く規則的な音を聞きながら、俺はいつの間にかうとうとと微睡んでいた。
しばらくしてシャワーの音が鳴り、もうすぐ寝るのかな? って思っていると部屋が暗くなった。
ベッドが軋む音が鳴って、もそもそと和哉さんがベッドに潜り込んで来た。
「海、寝たのか?」
そう聞かれて、夢現で和哉さんの身体を抱き寄せた。
すると和哉さんは小さく微笑んで
「今日は、ありがとうな」
と囁くと、唇にキスを落とした。
うっすらと瞼を開けると、和哉さんが幸せそうに微笑みながら俺の顔を見つめている。
(これは夢?)
ぼんやりとした意識で見ていると、和哉さんはくすくすと楽しそうに笑って俺の額にキスを落とす。
額、瞼、鼻先にキスをすると、頬にキスをした後に再び唇へとキスをする。
その眼差しは、愛しい人を見つめる瞳だった。
俺は、随分と自分に都合の良い夢だなぁ……って思いながら、幸せに浸って和哉さんにやりたい放題やらせておいた。
そしてしばらくすると満足したらしく、俺の胸に顔を埋めて深い溜め息を吐いた。
俺が強く抱き締めると、首元に顔を埋めて
「海の匂いがする……」
そう呟いて、俺の身体にしがみついた。
しばらくすると「すうすう」と規則正しい寝息を立て始め、俺はその寝息を聞きながら深い眠りに落ちて行った。
門限を破ってしまい、父さんがリビングで待っていた。
「海、公立に入ったからと言って、ハメを外すな」
と言われしまう。
「あの……。明日、友達の誕生日なんです。どうしてもお祝いしたいので、友達の家に泊まっても良いですか?」
火に油を注ぐのは分かっているが、父さんにお願いすると
「海。お前は今日、門限破ったのを分かっているよな?」
怒った顔で言われて
「分かって……います。でも……、どうしてもお祝いしたいんです。明日、友達は帰りが遅いらしくて……」
必死に食い下がると、親父は溜め息を吐いて
「もっとうまい嘘を吐け」
と言われてしまう。
「嘘じゃないです! 本当に明日、誕生日で!」
そう叫ぶと、親父は苦笑いを浮かべて
「私が言ってる嘘はそっちじゃない。お前、恋人が出来たんじゃないのか?」
と呟いた。
「毎日、帰りが門限ギリギリ。勉強はその後しているようだが、毎週土曜日になると、部活終わりに直接向かって外泊。それで友達なのか?」
父さんの言葉に俯く。
『恋人』
俺はそう思っているけど、和哉さんの気持ちが分からない。
「お前が無理矢理、脅して恋人にしたんじゃないか! 僕の意思は関係無い」
そう言われたら、何も言えなくなってしまう。
黙っている俺に、父さんはどう受け取ったのかは分からないけど
「まぁ……良い。きちんと、節度を持った交際をしなさい。……分かっているとは思うが、きちんと避妊はしなさい。何かあっても、お前では責任が持てないのだから」
そう言われて、握り拳を握り締めるだけで、父さんに何も言い返せない自分が情けなかった。
翌日、俺は自宅で食事をした後、和哉さんの家に押し掛けてサプライズを決行した。
和哉さんの帰宅は思ったより遅く、11時過ぎに帰宅して来た。
暗闇の中で帰宅を待っている間に、うつらうつらと眠っていたら鍵を開ける音に目を覚まして、慌ててクラッカーを鳴らした。
「お誕生日おめでとうございます!」
そう叫んで迎え入れた和哉さんは、目を真ん丸にして僕を見ていたっけ。
「お前……なんで?」
和哉さんが驚いて呟いたその時、遠くからサイレンの音が響き渡り、何故か警察車両が何台もやって来た。
どうやら、クラッカーの音に驚いた住民が、警察を呼んだらしい。
俺達は、警察官にこっぴどく怒られてしまい、和哉さんと2人でひたすら頭を下げて謝罪しまくった。
和哉さんには呆れた顔をされたけど
「お前……、夜中にクラッカー鳴らして警察呼ばれるとか……」
そう言うと、突然、大爆笑し始めた。
2人でお腹抱えて笑った後、コージー○ーナーのケーキをプレゼントすると、きっと美味しい料理を食べてお腹がいっぱいだろうに、プレゼントしたケーキを一個全部食べてくれた。
「お前……いつ帰るか分からないから、今日は来なくて良いって言ったのに……」
呆れた顔をされたけど、和哉さんは嬉しそうに笑ってくれて、本当に嬉しかった。
「今日、泊まれるんです!」
和哉さんを抱きしめてそう言うと、和哉さんは顔を引きつらせて
「今日は……無理だからな」
と言って来た。
「分かってますよ。だから、今日は和哉さんを抱き締めて眠っても良いですか?」
そう訊くと、顔を赤らめて
「か……勝手にしろよ」
と答えた。
時間はまだ23:30
俺は和哉さんを後ろから抱き締めて、少し柔らかい髪の毛にキスを落とすと
「お誕生日おめでとうございます、和哉さん」
そう呟いた。
「さっき言われた」
本を読んでいる和哉さんに冷たく言われ
「そうですけど……」
俺は唇を尖らせてそう言いながら、和哉さんの肩に顎を乗せる。
「でも……この世に生まれて来てくれて、俺と出会ってくれてありがとうって思うんです」
そう呟くと、和哉さんは
「なんだよ、それ。恥ずかしい奴」
と言いながら、耳まで真っ赤にしていたっけ……。
この日、俺は先にシャワーを浴びて、パソコンで資料をまとめている和哉さんを横目にベッドに入った。
和哉さんのパソコンの画面を見つめる真剣な横顔と、キーボードを叩く規則的な音を聞きながら、俺はいつの間にかうとうとと微睡んでいた。
しばらくしてシャワーの音が鳴り、もうすぐ寝るのかな? って思っていると部屋が暗くなった。
ベッドが軋む音が鳴って、もそもそと和哉さんがベッドに潜り込んで来た。
「海、寝たのか?」
そう聞かれて、夢現で和哉さんの身体を抱き寄せた。
すると和哉さんは小さく微笑んで
「今日は、ありがとうな」
と囁くと、唇にキスを落とした。
うっすらと瞼を開けると、和哉さんが幸せそうに微笑みながら俺の顔を見つめている。
(これは夢?)
ぼんやりとした意識で見ていると、和哉さんはくすくすと楽しそうに笑って俺の額にキスを落とす。
額、瞼、鼻先にキスをすると、頬にキスをした後に再び唇へとキスをする。
その眼差しは、愛しい人を見つめる瞳だった。
俺は、随分と自分に都合の良い夢だなぁ……って思いながら、幸せに浸って和哉さんにやりたい放題やらせておいた。
そしてしばらくすると満足したらしく、俺の胸に顔を埋めて深い溜め息を吐いた。
俺が強く抱き締めると、首元に顔を埋めて
「海の匂いがする……」
そう呟いて、俺の身体にしがみついた。
しばらくすると「すうすう」と規則正しい寝息を立て始め、俺はその寝息を聞きながら深い眠りに落ちて行った。
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