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思い出~海の回顧録⑭
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あの日から、俺は隣の席の関川美穂と彼女の彼氏、大崎悠斗。そして関川の友達の永澤夏美の4人で行動する事が多くなった。
修学旅行の班決めで
「海、一緒に組もうぜ」
と声を掛けられる。
悠斗は見た目チャラチャラしているが、実はきちんとした奴で、友情に厚い男だった。
だからなのか男友達が多く、いつも人の輪の中心に居る。
「お前、和田とか南雲とかと組まなくて良いのかよ?」
そう聞くと
「あっち2人で既に偶数じゃん?お前と俺で偶数。何か問題有る?」
そう言って笑顔を浮かべた。
「で、班は俺、海、美穂と夏の4人で…、班長はお前な」
そう言いながら、勝手に俺の名前を書いて担任に提出した。
「買い物とかどうする? 俺ら、一緒に行くんだけど」
と言われて
「じゃあ、一緒に行くよ」
そう答えると
「え! 何? 一条も行くの? じゃあ、俺らも行くよ」
和田と南雲が声を掛けてきた。
すると、何故か人数が膨れ上がり、結局、学校終わりにみんなで買い物に行くことになってしまった。
そう言えば、和哉さんに修学旅行の話をしていなかったな……と思い出して、泊まった日の日曜日の朝、カレンダーに予定を書き込もうとカレンダーを見た。
すると、8日に赤いペンで無造作に丸印が付いているのに気付いた。
その瞬間、ふと、あのエリート顔した男の顔が脳裏を過ぎる。
あの日から毎日、和哉さんの部屋に押しかけているから、他の男に抱かれていないのは知っている。
人の事に無頓着なこの人が、わざわざ印を着けるとは考え辛い。
それとも……、それ程大事な相手って事なのだろうか? と、モヤモヤ考えていても仕方無いので
「あれ? 和哉さん、6月8日って何かあるんですか?」
と声を掛けて見た。
すると和哉さんは洗面所で歯を磨きながら
「ひゃんひゅうひ」
と答えたが、歯磨中なので何を言っているのか分からない。
「え? 何?」
洗面所に顔を出して聞くと
「誕生日」
と答えたのだ。
(あぁ……やっぱり……)
忘れようとしても、和哉さんの後ろにあの男の影を見てしまう。
じゃあ、あの丸は和哉さんが書いたのか……。
心の中が黒い感情で渦巻く。
悟られたくなくて
「誰の?」
と、気付かないフリで来てみると
「僕の」
そう答える、予想外の答えが返って来た。
俺が目を点にして
「え! だってこの間、元旦って……」
と叫ぶと
「僕、その日が誕生日とは言ってないよ」
と、シレっとした顔で返した来た。
そう。
俺は数日前、素直に答える訳無いと思いながら、和哉さんの誕生日を聞いてみた。
すると素直に「1月1日」って答えたから、変だとは思っていたんだよな。
「ええ! 酷い! スマホに誕生日って入力しちゃったじゃないですか! しかも、6月8日って明後日じゃないですか!」
俺が抗議すると
「そうだね」
と、悪戯が成功した子供みたいな顔で返事をして来る。
(本当にこの人は………)
呆れた顔して
「そうだねって……」
肩をガックリ落としてそう言うと、歯を磨き顔を洗った和哉さんが部屋に戻るのを後ろから追い掛けながら、カレンダーの前で立ち止まり
「ちなみに、この印は誰が付けたんですか?自分で付けた訳じゃないですよね」
と聞くと、和哉さんは視線を逸らして言い辛そうに
「えっと……」
と言葉を濁した。
(あぁ……、やっぱりあの男が絡んでいるのは確かなんだ……)
ぼんやりと考えて、毎日通ってる俺の居ない間に来て、この部屋に足を踏み入れたのに腹が立って来た。
その時ふと、関川と悠斗の会話を思い出す。
「あ! お前! 勝手に俺の生徒手帳に誕生日書き込みやがったな!」
「えへへ。可愛いでしょう?」
「ふざけんなよ! 男でハートマークは無いだろうが!」
怒ってる悠斗が、俺に生徒手帳のスケジュール帳のページを開き
「9月21日美穂♡」
と書かれたページを見せて来た。
「何! じゃあ、悠斗は私が嫌いなの!」
「なんでそうなるんだよ! 海、どう思う?」
2人が一斉に俺を見て訊いて来た。
俺はぼんやりと、和哉さんが自分の手帳に「海♡」って書いている光景を思い浮かべる。
……まぁ、絶対にやらないってわかっているけど、思わず頬が緩んでしまい、慌てて口元を手で隠した。
すると
「不憫だ……」
と、悠斗が呟いた。
「お前、想像だけでそんな嬉しそうに笑うとか……。どんだけぞんざいに扱われてるんだよ」
そう言って泣き真似を始めた。
クラスの奴等は、そんな悠斗を「また始まった」って言いながらクスクスと笑って見ている。
俺はこいつのせいで、クラスで「可哀想な一条」と呼ばれてしまっている。
まぁ、お陰でみんなと仲良く出来ているんだど……。
ふと思い出し、鞄から赤い油性マジックを取り出して
『和哉さん♡』
と書いてみた。
「ちょっ……! ちょっと、何してんだよ!」
和哉さんは真っ赤な顔をして、俺からペンを取り上げた。その様子が可愛くて
「だって、大好きな人が生まれた日でしょう?」
って答えて顔を見ると、和哉さんの顔が益々真っ赤に染まって行く。
……きっとこれ以上、真面目に気持ちを伝えたら、パニックを起こして怒りだすな……。
俺はそう考えて
「でも……1人暮らしの野郎の部屋に、ハートマークとか……」
そう言いながら、その言葉に目を白黒させる和哉さんが可愛くて爆笑した。
「お前! わざとだろう? 絶対、わざとだよな!」
和哉さんが胸ぐらを掴んで、俺の身体を揺すりながら怒っている。
でも、本気で怒っていないのは見ていてわかる。
照れて、怒っているフリをしているだけ。
俺は和哉さんの手からペンを奪い返し
「じゃあ、此処に……」
そう言いながらカレンダーをめくり、12月25日に丸を付けた。
「何? クリスマス?」
さっきまで真っ赤な顔して怒っていたのに、今はもう、俺の行動に不思議そうな顔をして隣からカレンダーを覗き込む。
「海君♡」
と書くと
「お前……自分で自分を『君』付けしてるだけでも寒いのに、自分でハート付けるか?」
そう言って、心底呆れた顔をしていた。
「これ、和哉さんが書いてくれたって脳内変換したんで良いんです。この日、誕生日プレゼントは髪の毛に赤いリボンを結んだ和哉さんが良いです」
そう言って微笑んで和哉さんを見ると
「はぁ? お前、発想が乙女なんだか、オヤジなんだか……」
そう言って、苦笑いしていた。
正直、先のことは分からない。
又、野良猫のようなこの人は、俺の手からスルリと抜け出して姿を消してしまうかもしれない。
拭い去れない恐怖が俺を襲う。
「でも……、本当は一緒に居てくれればそれだけで良いんです」
俺はそう言いながらカレンダーを見つめた。
今の幸せは、俺が無理矢理作り上げた関係。
それはまるで、砂の城のように脆くて弱い。
俺は、いつ崩壊するかわからない不安定な場所でもがいていた。
黙ってカレンダー見上げている俺に
「そう言いながら、休み前だからやりまくりましょう! とか言って、また、寝かせないんだろう」
わざとらしく溜息混じりに呟く和哉さんに
「それ、良いですね。じゃあ、そういう事で」
と笑顔を浮かべて答えたけど、本当は別に……和哉さんを抱けなくても良いんだ。
こうして隣に居て、和哉さんが俺の言葉に色んな表情を見せてくれる。
俺はそれだけで幸せだった。
「お前……その発想と笑顔のギャップ、なんとかしろ!」
和哉さんはそう言って、俺の尻に蹴りを入れて怒っていたけど、俺はそんな表情も愛しくてたまらなかった。
「でも……本当に一緒に居られたら嬉しいです」
そう言って、俺はただ黙ってカレンダーをじっと見つめる事しかできなかった。
修学旅行の班決めで
「海、一緒に組もうぜ」
と声を掛けられる。
悠斗は見た目チャラチャラしているが、実はきちんとした奴で、友情に厚い男だった。
だからなのか男友達が多く、いつも人の輪の中心に居る。
「お前、和田とか南雲とかと組まなくて良いのかよ?」
そう聞くと
「あっち2人で既に偶数じゃん?お前と俺で偶数。何か問題有る?」
そう言って笑顔を浮かべた。
「で、班は俺、海、美穂と夏の4人で…、班長はお前な」
そう言いながら、勝手に俺の名前を書いて担任に提出した。
「買い物とかどうする? 俺ら、一緒に行くんだけど」
と言われて
「じゃあ、一緒に行くよ」
そう答えると
「え! 何? 一条も行くの? じゃあ、俺らも行くよ」
和田と南雲が声を掛けてきた。
すると、何故か人数が膨れ上がり、結局、学校終わりにみんなで買い物に行くことになってしまった。
そう言えば、和哉さんに修学旅行の話をしていなかったな……と思い出して、泊まった日の日曜日の朝、カレンダーに予定を書き込もうとカレンダーを見た。
すると、8日に赤いペンで無造作に丸印が付いているのに気付いた。
その瞬間、ふと、あのエリート顔した男の顔が脳裏を過ぎる。
あの日から毎日、和哉さんの部屋に押しかけているから、他の男に抱かれていないのは知っている。
人の事に無頓着なこの人が、わざわざ印を着けるとは考え辛い。
それとも……、それ程大事な相手って事なのだろうか? と、モヤモヤ考えていても仕方無いので
「あれ? 和哉さん、6月8日って何かあるんですか?」
と声を掛けて見た。
すると和哉さんは洗面所で歯を磨きながら
「ひゃんひゅうひ」
と答えたが、歯磨中なので何を言っているのか分からない。
「え? 何?」
洗面所に顔を出して聞くと
「誕生日」
と答えたのだ。
(あぁ……やっぱり……)
忘れようとしても、和哉さんの後ろにあの男の影を見てしまう。
じゃあ、あの丸は和哉さんが書いたのか……。
心の中が黒い感情で渦巻く。
悟られたくなくて
「誰の?」
と、気付かないフリで来てみると
「僕の」
そう答える、予想外の答えが返って来た。
俺が目を点にして
「え! だってこの間、元旦って……」
と叫ぶと
「僕、その日が誕生日とは言ってないよ」
と、シレっとした顔で返した来た。
そう。
俺は数日前、素直に答える訳無いと思いながら、和哉さんの誕生日を聞いてみた。
すると素直に「1月1日」って答えたから、変だとは思っていたんだよな。
「ええ! 酷い! スマホに誕生日って入力しちゃったじゃないですか! しかも、6月8日って明後日じゃないですか!」
俺が抗議すると
「そうだね」
と、悪戯が成功した子供みたいな顔で返事をして来る。
(本当にこの人は………)
呆れた顔して
「そうだねって……」
肩をガックリ落としてそう言うと、歯を磨き顔を洗った和哉さんが部屋に戻るのを後ろから追い掛けながら、カレンダーの前で立ち止まり
「ちなみに、この印は誰が付けたんですか?自分で付けた訳じゃないですよね」
と聞くと、和哉さんは視線を逸らして言い辛そうに
「えっと……」
と言葉を濁した。
(あぁ……、やっぱりあの男が絡んでいるのは確かなんだ……)
ぼんやりと考えて、毎日通ってる俺の居ない間に来て、この部屋に足を踏み入れたのに腹が立って来た。
その時ふと、関川と悠斗の会話を思い出す。
「あ! お前! 勝手に俺の生徒手帳に誕生日書き込みやがったな!」
「えへへ。可愛いでしょう?」
「ふざけんなよ! 男でハートマークは無いだろうが!」
怒ってる悠斗が、俺に生徒手帳のスケジュール帳のページを開き
「9月21日美穂♡」
と書かれたページを見せて来た。
「何! じゃあ、悠斗は私が嫌いなの!」
「なんでそうなるんだよ! 海、どう思う?」
2人が一斉に俺を見て訊いて来た。
俺はぼんやりと、和哉さんが自分の手帳に「海♡」って書いている光景を思い浮かべる。
……まぁ、絶対にやらないってわかっているけど、思わず頬が緩んでしまい、慌てて口元を手で隠した。
すると
「不憫だ……」
と、悠斗が呟いた。
「お前、想像だけでそんな嬉しそうに笑うとか……。どんだけぞんざいに扱われてるんだよ」
そう言って泣き真似を始めた。
クラスの奴等は、そんな悠斗を「また始まった」って言いながらクスクスと笑って見ている。
俺はこいつのせいで、クラスで「可哀想な一条」と呼ばれてしまっている。
まぁ、お陰でみんなと仲良く出来ているんだど……。
ふと思い出し、鞄から赤い油性マジックを取り出して
『和哉さん♡』
と書いてみた。
「ちょっ……! ちょっと、何してんだよ!」
和哉さんは真っ赤な顔をして、俺からペンを取り上げた。その様子が可愛くて
「だって、大好きな人が生まれた日でしょう?」
って答えて顔を見ると、和哉さんの顔が益々真っ赤に染まって行く。
……きっとこれ以上、真面目に気持ちを伝えたら、パニックを起こして怒りだすな……。
俺はそう考えて
「でも……1人暮らしの野郎の部屋に、ハートマークとか……」
そう言いながら、その言葉に目を白黒させる和哉さんが可愛くて爆笑した。
「お前! わざとだろう? 絶対、わざとだよな!」
和哉さんが胸ぐらを掴んで、俺の身体を揺すりながら怒っている。
でも、本気で怒っていないのは見ていてわかる。
照れて、怒っているフリをしているだけ。
俺は和哉さんの手からペンを奪い返し
「じゃあ、此処に……」
そう言いながらカレンダーをめくり、12月25日に丸を付けた。
「何? クリスマス?」
さっきまで真っ赤な顔して怒っていたのに、今はもう、俺の行動に不思議そうな顔をして隣からカレンダーを覗き込む。
「海君♡」
と書くと
「お前……自分で自分を『君』付けしてるだけでも寒いのに、自分でハート付けるか?」
そう言って、心底呆れた顔をしていた。
「これ、和哉さんが書いてくれたって脳内変換したんで良いんです。この日、誕生日プレゼントは髪の毛に赤いリボンを結んだ和哉さんが良いです」
そう言って微笑んで和哉さんを見ると
「はぁ? お前、発想が乙女なんだか、オヤジなんだか……」
そう言って、苦笑いしていた。
正直、先のことは分からない。
又、野良猫のようなこの人は、俺の手からスルリと抜け出して姿を消してしまうかもしれない。
拭い去れない恐怖が俺を襲う。
「でも……、本当は一緒に居てくれればそれだけで良いんです」
俺はそう言いながらカレンダーを見つめた。
今の幸せは、俺が無理矢理作り上げた関係。
それはまるで、砂の城のように脆くて弱い。
俺は、いつ崩壊するかわからない不安定な場所でもがいていた。
黙ってカレンダー見上げている俺に
「そう言いながら、休み前だからやりまくりましょう! とか言って、また、寝かせないんだろう」
わざとらしく溜息混じりに呟く和哉さんに
「それ、良いですね。じゃあ、そういう事で」
と笑顔を浮かべて答えたけど、本当は別に……和哉さんを抱けなくても良いんだ。
こうして隣に居て、和哉さんが俺の言葉に色んな表情を見せてくれる。
俺はそれだけで幸せだった。
「お前……その発想と笑顔のギャップ、なんとかしろ!」
和哉さんはそう言って、俺の尻に蹴りを入れて怒っていたけど、俺はそんな表情も愛しくてたまらなかった。
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