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思い出~海の回顧録⑨
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ホッとして、取り敢えずアパートから出る事を考えようと、一度、木っ端微塵になった理性をかき集めて、部屋を出ようとしたその時だった。
「そうだよな……。気持ち悪かったよな、ごめん。僕みたいな奴となんて、嫌だよな」
悲しそうに俯かれ、ゆっくりと先生が背中を向ける。
「帰って良いから……。家庭教師も、言われた通りに辞める。ごめんな」
自分を抱き締めるように、両手を身体の前で組んで俯いている後ろ姿に
「あ……あの……」
と、戸惑って声を掛けると、ちらりとこちらを見た先生の視線が目に入った。
完全に遊んでいる目だった。
(この人は……。誰の為に、なけなしの理性をかき集めて我慢していると思っているんだ!)
そう考えたら腹が立って来た。
よく考えてみれば、好きな人が抱いてくれって身体を投げ出して来てるんだから、俺は何を躊躇してるんだ?
先人の言葉でもあるだろう?
『上げ膳食わぬは男の恥』って。
そう考えて、先生の腕を掴んで抱き締めた。
ずっと抱き締めたかった細い身体と、先生の甘い香りに「欲望」と言う名の津波が、理性という壁の結界を軽々と崩壊させた。
ひょいと抱き上げると、あまりの軽さに驚く。
「え? ちょっと?」
驚いて見上げる先生に
「条件、飲めば良いんですよね?」
とニヤリと笑うと
「ちょ……」
この時に事態を理解したらしい先生は、慌てて降りようと暴れ始めた。
「ジッとしていて下さい。貴方から誘ったんですから、責任取ってくれるんですよね?」
そう言ってベッドに下ろすと
「え?だって……嫌なんだよね?」
パニックになった顔で俺を見上げる。
「渚に手を出されるのは嫌ですが、俺が貴方を抱くのには、なんの問題も無いですよ」
にっこり微笑んで言うと、先生はカチンとした顔で俺を見上げた。
俺が着ていた上着を脱ぎ始めると、先生は覚悟を決めたらしく
「へぇ……、僕を満足させられるのか楽しみだよ」
そう言って自分のシャツのボタンを外そうと、ボタンに手を掛けた。
俺はその手を掴んで
「服を脱がせる楽しみ、奪わないで欲しいんだけどな……」
そう言うと、唇を重ねた。
触れた唇は柔らかく、先生の方から舌を絡めて来た。
大好きな人と夢にまで見た状況に、俺は無我夢中になっていた。
キスをしながらシャツのボタンを外すと、先生は甘えるように首に抱き付き
「下も……脱がせて」
と、キスの合間に耳元で囁く。
前の留め金を外しファスナーを下ろすと、先生は慣れた様子で下着ごと脱ぎ捨てた。
はだけた上半身のシャツを、恥じらうように俯いて合わせると、縋るような瞳で俺を見上げる。
俺の妄想を遥かに上回る先生の色気に、正直、正気を保つ余裕は無かった。
強引に腕を掴んで引き寄せると
「あ……っ」
っと小さく声を上げて、俺の腕の中にすっぽりと収まってしまう。
そのか細い身体を
(壊してしまいそうだ……)
そう思い、一瞬躊躇してそっと頬に触れると、先生は甘えた視線で俺の手に頬を摺り寄せた。
「あんた……本当に……」
俺の気持ちを無視して、煽って来やがる。
強く抱き締めて、ベッドへと押し倒した。
後は、無我夢中だった。
どうしたら感じてくれるのか?
どうしたら気持ち良くなってもらえるのか?
先生の反応を見ながら、でも……本音は全然余裕が無くて、初めて触れた時の事はほとんど記憶に残っていない。
でも、先生の慣れた感じのセックスに、正直、今までの男の陰を感じて苦しかった。
今までの男の陰を消したくて、先生が意識を失っても身体を繋ぎ続けた。
もう、意識が朦朧としている先生に、身体を穿ちながら
「名前を……呼んで下さい」
そう囁いた。
涙でぐちゃぐちゃになった先生は、朦朧とした意識で俺の顔を見上げて
「か……い……」
そう呟いた。
あの日以来、初めて口にしてもらえた名前に涙が溢れて来た。
「和哉さん……」
そう言って抱き締めた時、脱ぎ捨てたズボンから落ちていたらしいスマホが足に当たる。
その時、もうこの人を誰にも渡したく無いと思った。
たとえ卑劣な手段を使ってでも、この人の身体を誰にも触れさせたく無かった。
スマホを見つめていると、動かなくなった俺を先生が不思議そうに見ている。
そして俺の背中に手を回すと
「もっと……」
と囁いた。
「良いですけど……、お願い聞いてもらえますか?」
そう言うと、先生は焦れたように俺の腰に足を絡め、自分の腰を揺らしながら首を縦に振る。
「俺を、先生の恋人にしてくれませんか?」
耳元で囁くと、身体を小刻みに震わせて
「恋人?…………分かったから……早くぅ……」
そう言って、涙を浮かべて俺を見つめる。
ゆっくりと腰を動かすと
「あっ……。もっと、激しくして……」
と言って、俺の身体にしがみつき
「なるからぁ……。海の恋人に、なるからぁ……」
そう叫んだのだ。
俺は例えピロートークだとしても、ピロートークで終わらせたくなかった。
「約束ですよ」
そう言ってキスを交わし、激しく腰を打ち付けると、先生は歓喜の声を上げる。
どれだけ身体を紡いでも、目覚めたら全て忘れられそうで、何度も何度も覚えさせるように確認する。
あまりにもしつこかったみたいで
「そんなに信じられないなら、動画でもなんでも撮れば良いだろう!」
と叫ぶと、先生が俺のスマホを投げ付けた。
「じゃあ、一回止めましょう」
と言うと、先生は怒った顔で
「ふざけんな! そのまま、ハメたままで良い」
そう言うと、俺のスマホを押し付け
「だから、さっさと達かせろ!」
そう叫んだのだ。
まぁ……完全にぶっ飛んでいるから、どうせ忘れるんだろうな……。
そう思いながら、俺は先生の恋人宣言をスマホに録画した。
「そうだよな……。気持ち悪かったよな、ごめん。僕みたいな奴となんて、嫌だよな」
悲しそうに俯かれ、ゆっくりと先生が背中を向ける。
「帰って良いから……。家庭教師も、言われた通りに辞める。ごめんな」
自分を抱き締めるように、両手を身体の前で組んで俯いている後ろ姿に
「あ……あの……」
と、戸惑って声を掛けると、ちらりとこちらを見た先生の視線が目に入った。
完全に遊んでいる目だった。
(この人は……。誰の為に、なけなしの理性をかき集めて我慢していると思っているんだ!)
そう考えたら腹が立って来た。
よく考えてみれば、好きな人が抱いてくれって身体を投げ出して来てるんだから、俺は何を躊躇してるんだ?
先人の言葉でもあるだろう?
『上げ膳食わぬは男の恥』って。
そう考えて、先生の腕を掴んで抱き締めた。
ずっと抱き締めたかった細い身体と、先生の甘い香りに「欲望」と言う名の津波が、理性という壁の結界を軽々と崩壊させた。
ひょいと抱き上げると、あまりの軽さに驚く。
「え? ちょっと?」
驚いて見上げる先生に
「条件、飲めば良いんですよね?」
とニヤリと笑うと
「ちょ……」
この時に事態を理解したらしい先生は、慌てて降りようと暴れ始めた。
「ジッとしていて下さい。貴方から誘ったんですから、責任取ってくれるんですよね?」
そう言ってベッドに下ろすと
「え?だって……嫌なんだよね?」
パニックになった顔で俺を見上げる。
「渚に手を出されるのは嫌ですが、俺が貴方を抱くのには、なんの問題も無いですよ」
にっこり微笑んで言うと、先生はカチンとした顔で俺を見上げた。
俺が着ていた上着を脱ぎ始めると、先生は覚悟を決めたらしく
「へぇ……、僕を満足させられるのか楽しみだよ」
そう言って自分のシャツのボタンを外そうと、ボタンに手を掛けた。
俺はその手を掴んで
「服を脱がせる楽しみ、奪わないで欲しいんだけどな……」
そう言うと、唇を重ねた。
触れた唇は柔らかく、先生の方から舌を絡めて来た。
大好きな人と夢にまで見た状況に、俺は無我夢中になっていた。
キスをしながらシャツのボタンを外すと、先生は甘えるように首に抱き付き
「下も……脱がせて」
と、キスの合間に耳元で囁く。
前の留め金を外しファスナーを下ろすと、先生は慣れた様子で下着ごと脱ぎ捨てた。
はだけた上半身のシャツを、恥じらうように俯いて合わせると、縋るような瞳で俺を見上げる。
俺の妄想を遥かに上回る先生の色気に、正直、正気を保つ余裕は無かった。
強引に腕を掴んで引き寄せると
「あ……っ」
っと小さく声を上げて、俺の腕の中にすっぽりと収まってしまう。
そのか細い身体を
(壊してしまいそうだ……)
そう思い、一瞬躊躇してそっと頬に触れると、先生は甘えた視線で俺の手に頬を摺り寄せた。
「あんた……本当に……」
俺の気持ちを無視して、煽って来やがる。
強く抱き締めて、ベッドへと押し倒した。
後は、無我夢中だった。
どうしたら感じてくれるのか?
どうしたら気持ち良くなってもらえるのか?
先生の反応を見ながら、でも……本音は全然余裕が無くて、初めて触れた時の事はほとんど記憶に残っていない。
でも、先生の慣れた感じのセックスに、正直、今までの男の陰を感じて苦しかった。
今までの男の陰を消したくて、先生が意識を失っても身体を繋ぎ続けた。
もう、意識が朦朧としている先生に、身体を穿ちながら
「名前を……呼んで下さい」
そう囁いた。
涙でぐちゃぐちゃになった先生は、朦朧とした意識で俺の顔を見上げて
「か……い……」
そう呟いた。
あの日以来、初めて口にしてもらえた名前に涙が溢れて来た。
「和哉さん……」
そう言って抱き締めた時、脱ぎ捨てたズボンから落ちていたらしいスマホが足に当たる。
その時、もうこの人を誰にも渡したく無いと思った。
たとえ卑劣な手段を使ってでも、この人の身体を誰にも触れさせたく無かった。
スマホを見つめていると、動かなくなった俺を先生が不思議そうに見ている。
そして俺の背中に手を回すと
「もっと……」
と囁いた。
「良いですけど……、お願い聞いてもらえますか?」
そう言うと、先生は焦れたように俺の腰に足を絡め、自分の腰を揺らしながら首を縦に振る。
「俺を、先生の恋人にしてくれませんか?」
耳元で囁くと、身体を小刻みに震わせて
「恋人?…………分かったから……早くぅ……」
そう言って、涙を浮かべて俺を見つめる。
ゆっくりと腰を動かすと
「あっ……。もっと、激しくして……」
と言って、俺の身体にしがみつき
「なるからぁ……。海の恋人に、なるからぁ……」
そう叫んだのだ。
俺は例えピロートークだとしても、ピロートークで終わらせたくなかった。
「約束ですよ」
そう言ってキスを交わし、激しく腰を打ち付けると、先生は歓喜の声を上げる。
どれだけ身体を紡いでも、目覚めたら全て忘れられそうで、何度も何度も覚えさせるように確認する。
あまりにもしつこかったみたいで
「そんなに信じられないなら、動画でもなんでも撮れば良いだろう!」
と叫ぶと、先生が俺のスマホを投げ付けた。
「じゃあ、一回止めましょう」
と言うと、先生は怒った顔で
「ふざけんな! そのまま、ハメたままで良い」
そう言うと、俺のスマホを押し付け
「だから、さっさと達かせろ!」
そう叫んだのだ。
まぁ……完全にぶっ飛んでいるから、どうせ忘れるんだろうな……。
そう思いながら、俺は先生の恋人宣言をスマホに録画した。
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