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思い出~海の回顧録⑥
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「海……」
赤く濡れた唇が、吐息混じりに俺の名前を呼ぶ。
縋るように首に手を回す細い身体を抱き締めると、切なそうに吐息を漏らす。
身体を割り開き、最奥を穿つと喉をのけ反らせて喘ぎ声を上げる。
「海……海……」
背中にしがみつき、俺の名前を必死に呼ぶ声。
長い睫毛に涙が滲む。
そっと涙に口付けを落とすと、幸せそうに笑顔を浮かべて先生が俺を見る。
「先生!」
細い身体を抱き締めて、激しく突き上げる。
「あっ……、あぁっ!」
赤い唇から漏れる喘ぎ声。
叩きつけるように腰を打ち付けて精を放つ。
「か……い……」
綺麗な涙が頬を伝う。
『P iP iP iP i』
目覚ましが鳴り響き、目が覚める。
最悪だ…。
罪悪感しか無い感情に頭を抱える。
汚したい訳では無いのに、触れたいと思う気持ちと、大切にしたいと思う感情で苦しくなる。
ベッドから起き上がり、シャワーを浴びて頭を冷やす。
その日から、毎日、先生を抱く夢を見るようになる。俺はそれを振り払う為に、朝と夜にランニングをするようになった。
泥のように眠れば、こんな感情も無くなるだろうと身体を酷使した。
部活も陸上部に入り、ひたすら走って煩悩を振り払うように過ごしていた。
その日は、学校の都合で部活が急遽、休みになって早く帰宅した。
自宅に帰ると、玄関に見慣れない男物の靴がある。
「ただいま~」
リビングに顔を出すと、母さんがお茶の用意をしながら
「お兄ちゃん、お帰りなさい」
と、母さんは笑顔で言うと
「ご飯、ちょっと待っててね。今、渚君と家庭教師の先生にお茶を出してくるから」
そう言ってお菓子を置いている。
「今回の先生、続いているね」
お菓子を見ながら呟くと
「そうなの。渚君、今の先生が大好きって言っているわよ」
と、母さんが嬉しそうに話す。
「へぇ~」
興味無く答えると
「今度の先生ね、凄く色気のある人でね。初めて会った時、ドキドキしちゃったわよ。渚君、そういう意味で好きにならないと良いけど」
楽しそうに話す母さんに、俺の動きが止まる。
「何? 家庭教師って女なの? 玄関の靴、男物みたいだったけど?」
そう言うと
「男の人よ。でも、なんて言うのかしら……。男女問わず、魅せられちゃうような魅力があるっていうの? 凄い綺麗な人よ」
と言うと、楽しそうに階段を登っていく。
(男女問わず、魅せられるねぇ……)
ぼんやりと考えて先生を思い出す。
母さんの後ろに続いて階段を登っていると
「お兄ちゃん、悪いけどノックしてドアを開けて頂戴」
両手が塞がっている母さんに言われて
(絶対、狙っていたな)
そう思いながらドアをノックして、渚の部屋のドアを開けた。
その時、一瞬後ろ姿が目に入る。
(え……?)
思わず視線が止まる。
「お兄ちゃん、ありがとう」
母さんはそう言うと、きちんと確認が出来ない状態でドアを閉めてしまった。
ドアの向こうでは、楽しそうな声が聞こえて来る。
「じゃあ、お勉強頑張ってね」
母さんの声がして、ドアが再び開いた。
「渚君、少し休憩しようか」
聞き覚えのある声が聞こえて、懐かしい横顔が笑顔を浮かべて渚と話をしていた。
(相馬先生だ……)
見間違える筈の無い人物が、我が家の……しかも渚の家庭教師をしている現状にパニックになる。
呆然と立ち尽くしていると
「お兄ちゃん? こんな所で何しているの?」
と、驚いた顔して聞いて来た母さんに
「あ……ごめん。ぼんやりしてた」
そう答えて、慌てて笑顔を作り部屋に戻る。
荷物を置いて、ベッドに座って口元を押さえて考える。
他人の空似かもしれない。
会いたすぎて、幻覚を見たのかもしれない。
落ち着かなくて、部屋の中をウロウロしてはベッドに座りを繰り返していると
「じゃあ、次は金曜日」
「相馬先生!そうしたら、あの約束絶対に守ってね」
「分かったよ。本当に、渚君はおねだりうまいよね~」
「ちゃんと勉強頑張ってるよ!」
「はいはい。分かっているよ」
笑い声と階段を降りる音が聞こえて、慌てて部屋を出て階段から下を見下ろした。
靴を履く姿が見えて、その姿は見間違える筈の無い人の姿だった。
「相馬先生、また金曜日ね」
手を振る渚に、先生が笑顔で手を振っている。
その瞬間、足下が真っ暗になった。
俺は何度も何度も名前を伝えても、覚えてはもらえなかったのに……。
茫然と立ち尽くしていると
「兄貴? 何しているの?」
渚が階段に上りながら声を掛けてきた。
ハッと我に返り
「家庭教師の先生、今日だったんだな」
慌てて笑顔を作る。
「うん」
訝しんで答える渚に
「今の先生、どうだ?」
そう聞くと、渚は笑顔を浮かべて
「大好きだよ!」
と答えた。
(ヤメロ……)
「勉強もわかりやすいし、なにより俺の為に色々と考えてくれてるんだ」
(オレノ先生ヲ トルナ……)
「兄貴?」
心配そうに顔を覗き込まれて、自分の黒い感情に怖くなる。
「大丈夫? 顔色、悪いよ」
そう言われて
「ごめん。具合悪いから、部屋に戻るわ」
とだけ答えると、部屋に戻った。
張り裂けそうな感情に頭を抱える。
俺にはあの日しか向けてくれなかった笑顔を、渚には無条件で向けている。
嫉妬で気が狂いそうだった。
灼熱の鉛を飲み込んだような感情に、俺はどうすることもできずに、もがき苦しむことしか出来なかった。
赤く濡れた唇が、吐息混じりに俺の名前を呼ぶ。
縋るように首に手を回す細い身体を抱き締めると、切なそうに吐息を漏らす。
身体を割り開き、最奥を穿つと喉をのけ反らせて喘ぎ声を上げる。
「海……海……」
背中にしがみつき、俺の名前を必死に呼ぶ声。
長い睫毛に涙が滲む。
そっと涙に口付けを落とすと、幸せそうに笑顔を浮かべて先生が俺を見る。
「先生!」
細い身体を抱き締めて、激しく突き上げる。
「あっ……、あぁっ!」
赤い唇から漏れる喘ぎ声。
叩きつけるように腰を打ち付けて精を放つ。
「か……い……」
綺麗な涙が頬を伝う。
『P iP iP iP i』
目覚ましが鳴り響き、目が覚める。
最悪だ…。
罪悪感しか無い感情に頭を抱える。
汚したい訳では無いのに、触れたいと思う気持ちと、大切にしたいと思う感情で苦しくなる。
ベッドから起き上がり、シャワーを浴びて頭を冷やす。
その日から、毎日、先生を抱く夢を見るようになる。俺はそれを振り払う為に、朝と夜にランニングをするようになった。
泥のように眠れば、こんな感情も無くなるだろうと身体を酷使した。
部活も陸上部に入り、ひたすら走って煩悩を振り払うように過ごしていた。
その日は、学校の都合で部活が急遽、休みになって早く帰宅した。
自宅に帰ると、玄関に見慣れない男物の靴がある。
「ただいま~」
リビングに顔を出すと、母さんがお茶の用意をしながら
「お兄ちゃん、お帰りなさい」
と、母さんは笑顔で言うと
「ご飯、ちょっと待っててね。今、渚君と家庭教師の先生にお茶を出してくるから」
そう言ってお菓子を置いている。
「今回の先生、続いているね」
お菓子を見ながら呟くと
「そうなの。渚君、今の先生が大好きって言っているわよ」
と、母さんが嬉しそうに話す。
「へぇ~」
興味無く答えると
「今度の先生ね、凄く色気のある人でね。初めて会った時、ドキドキしちゃったわよ。渚君、そういう意味で好きにならないと良いけど」
楽しそうに話す母さんに、俺の動きが止まる。
「何? 家庭教師って女なの? 玄関の靴、男物みたいだったけど?」
そう言うと
「男の人よ。でも、なんて言うのかしら……。男女問わず、魅せられちゃうような魅力があるっていうの? 凄い綺麗な人よ」
と言うと、楽しそうに階段を登っていく。
(男女問わず、魅せられるねぇ……)
ぼんやりと考えて先生を思い出す。
母さんの後ろに続いて階段を登っていると
「お兄ちゃん、悪いけどノックしてドアを開けて頂戴」
両手が塞がっている母さんに言われて
(絶対、狙っていたな)
そう思いながらドアをノックして、渚の部屋のドアを開けた。
その時、一瞬後ろ姿が目に入る。
(え……?)
思わず視線が止まる。
「お兄ちゃん、ありがとう」
母さんはそう言うと、きちんと確認が出来ない状態でドアを閉めてしまった。
ドアの向こうでは、楽しそうな声が聞こえて来る。
「じゃあ、お勉強頑張ってね」
母さんの声がして、ドアが再び開いた。
「渚君、少し休憩しようか」
聞き覚えのある声が聞こえて、懐かしい横顔が笑顔を浮かべて渚と話をしていた。
(相馬先生だ……)
見間違える筈の無い人物が、我が家の……しかも渚の家庭教師をしている現状にパニックになる。
呆然と立ち尽くしていると
「お兄ちゃん? こんな所で何しているの?」
と、驚いた顔して聞いて来た母さんに
「あ……ごめん。ぼんやりしてた」
そう答えて、慌てて笑顔を作り部屋に戻る。
荷物を置いて、ベッドに座って口元を押さえて考える。
他人の空似かもしれない。
会いたすぎて、幻覚を見たのかもしれない。
落ち着かなくて、部屋の中をウロウロしてはベッドに座りを繰り返していると
「じゃあ、次は金曜日」
「相馬先生!そうしたら、あの約束絶対に守ってね」
「分かったよ。本当に、渚君はおねだりうまいよね~」
「ちゃんと勉強頑張ってるよ!」
「はいはい。分かっているよ」
笑い声と階段を降りる音が聞こえて、慌てて部屋を出て階段から下を見下ろした。
靴を履く姿が見えて、その姿は見間違える筈の無い人の姿だった。
「相馬先生、また金曜日ね」
手を振る渚に、先生が笑顔で手を振っている。
その瞬間、足下が真っ暗になった。
俺は何度も何度も名前を伝えても、覚えてはもらえなかったのに……。
茫然と立ち尽くしていると
「兄貴? 何しているの?」
渚が階段に上りながら声を掛けてきた。
ハッと我に返り
「家庭教師の先生、今日だったんだな」
慌てて笑顔を作る。
「うん」
訝しんで答える渚に
「今の先生、どうだ?」
そう聞くと、渚は笑顔を浮かべて
「大好きだよ!」
と答えた。
(ヤメロ……)
「勉強もわかりやすいし、なにより俺の為に色々と考えてくれてるんだ」
(オレノ先生ヲ トルナ……)
「兄貴?」
心配そうに顔を覗き込まれて、自分の黒い感情に怖くなる。
「大丈夫? 顔色、悪いよ」
そう言われて
「ごめん。具合悪いから、部屋に戻るわ」
とだけ答えると、部屋に戻った。
張り裂けそうな感情に頭を抱える。
俺にはあの日しか向けてくれなかった笑顔を、渚には無条件で向けている。
嫉妬で気が狂いそうだった。
灼熱の鉛を飲み込んだような感情に、俺はどうすることもできずに、もがき苦しむことしか出来なかった。
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